翌日未明、村の宿屋で休んでいると、兵士たちがやってきて叩き起こされた。
「剣の勇者様御一行、冒険の最中申し訳ありませんが、一度城までご同行お願いできませんか?」
「ん? 何故だ?」
「その、重要な事がございまして、勇者様にご覧になっていただきたい事態がありましたので……」
「……ふん、お前ら、行くぞ」
ああ、そう言えばそうだったなと思い出す。
おそらく、ここが第一の分岐点だろう。
何のって?
もちろん、この世界が【成り上がり】の世界か、【やり直し】の世界のである。
俺が【盾の勇者の成り上がり】の知識を持っているため、どの時空かと言うのがあやふやなのが現実である。
メガヴィッチが生きている以上は【真・やり直し】の方では無いのが確定するけれどね。
まあ、この時点で元康がきていないと言うことは少なくともフォーブレイ編では無いことは確定だが。
なんて事を馬車に揺られながら考えていた。
「一体何の呼び出しでしょうね?」
「……さあな。くだらない事だったら俺はすぐに去るぞ」
俺はそれを白々しく聞いていた。
むしろ、この場で知らないのは錬だけである。
本当のところであれば、俺が助けるべきなのだろう。
だが、気持ち的には尚文がどうなろうとどうでもいいかなと言う感情が強いのも事実であった。
おそらく、これは俺が波の尖兵となった時に植え付けられた呪いのようなものなのだろう。
それに、ここで邪魔をした途端に俺の頭が破裂しそうな気がしていた。
とりあえず、脳内でヴィッチを殺すことにして気を紛らわせるとしよう。
城の前までやってくると、俺たちは樹のパーティと合流した。
「あれ、錬さんも呼ばれたんですね」
「……ああ、重要な事があると伝えられてな」
「僕も同じです。一体何なんでしょうね?」
「……さあな」
しばらく進んでいると、謁見の間まで兵士に案内された。
クズ始めとした連中は不機嫌そうな感じで立っており、楔帷子を着た元康と怯えるような演技をしているヴィッチが居た。
「……元康? それに尚文の仲間になった冒険者か。どうしたんだ?」
「これは不穏な空気ですね……。皆さん、行きましょう」
俺たちは樹に言われ、錬の後を追って駆けつける。
まあ、結果を知っている俺としては単に胸糞悪いだけだ。
知らないのは父親であるクズと三勇者、冒険者達ぐらいだろう。
「……チッ」
俺は舌打ちをする。見過ごすのはやはり不快でしか無い。
だが、ヴィッチの企みである以上は俺はどうすることもできなかった。
「おい、どうしたんだ?」
「ああ、尚文がこの子……マインちゃんを襲おうとしたんだよ!」
怒りに彩られる元康の声。
ああ、これで確定だな。
この世界は【成り上がり】の世界だ。
次の分岐はリユート村での騒動になるかな。
ここでweb版か書籍版か分岐する。
「何ですって!」
怒りに彩られる樹。コイツ正義大好きだもんな。
尚文の冤罪はまさに正義が正すべき案件だと思うんだが……。
まあ、ここで俺が割り込んでも、意味なく無駄死にするだけだな。いや、この場で頭を破裂させて死ねば、三勇者の認識も変わって面白いかもしれないけれどな。
俺は俺の命を無駄にするつもりはないのでしないけれどな。
と、ここでようやく尚文の登場である。
冤罪をかけられた過程については、割愛しても良いだろう。
非常に気分が悪いとしか言いようがなかった。
この馬鹿3人組にも、それに加担する連中にも、黙って見ているしかない俺にもだ。
「……ふん、気分が悪い」
錬は、再召喚を行うためには四聖が死なねばならないと言う現実に動揺しているようであった。
得てして、こう言う王道召喚ものは目的が達成しなければ帰れないことがほとんどである。
復讐ものなんかは世界を救った後に化け物視されて討伐対象にされるなんてことも起きるが、勇者自体が神であるこの世界ではそう言うことは起きないだろう。
「アマキ様、これからどうします?」
「……ギルドで依頼を受けて、報酬を得つつ、しばらくはあの村近辺を中心にレベル上げをするぞ。最初の波の適正レベルは43だからな」
「そうなんですか! ではクラスアップが必要ですね」
「ああ、波までには全員40までは上げてもらう」
「わかりました」
と、そんな感じで錬の今後の予定が淡々と決まっていく。
と言うことは、最初の波の適正レベルは23とかそこらあたりだったのかなと考える。
でなければ、波の魔物を冒険者や兵士で討伐しきれないだろう。
と、胸糞悪い冤罪の光景を朝っぱらから見せつけられて、俺は気分が非常に悪かったが、錬のパーティとともにレンの指定していた場所で狩りをする事になったのだった。
冤罪部分は原作そのまんまのため割愛です。
どのタイミングで剣の勇者のパーティを抜けようか
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燻製と同じタイミングで
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最初の波の後で
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ドラゴン退治の後で
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第二の波の後で