さて、クラスアップである。
この世界はレベルキャップが存在しており、40でレベルキャップとなる。
龍刻の砂時計で儀式を行うことによって、レベルキャップを100まで外すことができるわけだ。
「それじゃあ、最初にクラスアップするのは俺の仲間だな」
元康は軽そうな声でそう言うと、女3人のクラスアップを促す。
「マイン、レスティ、エレナは自分の思う通りにクラスアップしてくれ!」
「わかりましたわ、モトヤス様」
この頃にはもう、このメンバーなんだなと思う。
レスティからは案の定、ヴィッチと同じ感じがする。
実際は言及されては居ないが、この感じは間違いなくメガヴィッチに似た気配である。
エレナはまあ、知っての通りか。
しかし、「モトヤス様に選んでほしい」なんて誰も言わないんだな。
あっ……(察し)
クラスアップの儀式はまあ、特に言及する必要もない。
ピカーっとヴィッチ達の体が龍刻の砂時計から発せられた光に包まれて、おしまいである。
「モトヤス様、無事クラスアップが終わりましたわ」
「へぇー、みんな何を選んだの?」
「ふふ、それはあ・と・で、教えますわ」
などと不毛な会話をしている。
他の勇者がいるから教えたくないんだろうな。
「次は俺らだな」
と錬が前に出る。
「良いですよ。どうぞ、お先に」
樹は微笑みながら錬に順番を譲った。
「クラスアップで選ぶのは敏捷を重視しろ」
錬の指示に従うウェルト達。
奴隷でもない限りは相手のステータスを見る事はできないので、嘘をつく事も可能ではある。
それぞれが龍刻の砂時計に近づき手を置くと、ステータスが強制的に開く。
そして、龍刻の砂時計から光が溢れ、身体を包み込むと、ステータスにツリーが出現する。
「ああー、そう言う。なるほどねぇ」
俺は思わず呟いた。
クラスアップと言うのは、言うなればジョブチェンジだ。
自分の可能性を選択できる、と言うのは間違いではない。
おおよそ、条件としてはレベル40であるか、基礎ステータスが一定値以上であるかと言う感じだ。
ゲームではおそらく、武器毎に決まったジョブにクラスアップしたのだろう。
「えーっと、確かオーダーは敏捷だっけな」
俺はレベル40★のため、多くの可能性が選択できる。その上、日々の鍛錬……コソ練を続けてきたおかげか、基礎ステータスは高い。
選べるジョブで素早さが高いのは、忍者、侍、シーフの3つだろう。
うーん、でも、俺は基本槍ばっか使って何でも屋っぽい感じになっているしなぁ。
ここは単純に敏捷の高さだけでなくて、戦闘スタイルとの兼ね合いも考えたほうがいいだろう。
比較的素早さが上がりやすい中衛向けのジョブは……竜騎士?
竜騎士に変化すると、いくつかの専用の技と、龍騎乗A+と言うスキルがつくらしい。
スキル……勇者専用じゃなかったのか。
なので、俺はこれを選択する。
光が俺の体に吸い込まれて、ステータスが若干伸びたように感じた。
ふむ、ステータス魔法で確認をすると、攻撃力が1.5倍、素早さが1.2倍、それ以外のステータスが1.1倍伸びた。
まあ、上々だろう。
「錬サマ、クラスアップが終わったぞ」
「敏捷が高いのを選択したか?」
「んー、流石にシーフや忍者を選ぶ勇気はなかったわ。今の戦闘スタイルから考えて、俺は竜騎士を選択した」
「……悪くはないな」
「レン様とソースケ殿は何を仰られているのだ?」
ウェルトが話に入ってくる。
「クラスアップの話だが?」
「は、はぁ……シーフはわかりますが、ニンジャだのリュウキシだのよくわからない言葉で話されていたので、なんだと思いました」
あー、忍者とか竜騎士ってメルロマルク語に無かったっけ。
自然と、日本語を使ってしまっていたらしい。
錬の言葉は俺には日本語にしか聞こえないからな……。
「……何を言っているんだ? ウェルトは」
そして、自動で翻訳される錬にはわからない内容だったらしい。
「我輩はパワーこそ全てなのだ! 敏捷など我輩の戦い方に合わぬからな!」
そして、声高らかに阿保を晒す燻製。それに、錬は若干呆れた表情をする。
「……ソースケ、マルドのフォローを任せた」
「……あいよ」
その後、樹がそれぞれのメンバーに指示を出してクラスアップをさせた。
後は、龍刻の砂時計の砂を入手するイベントだっけかな。
そう思っていると、情報通の錬が一番はじめに声を出した。
「おい、シスター。龍刻の砂時計の砂を分けてもらえないか?」
「ええ、はい。勇者様のお望みでしたら」
シスターが肯定すると、龍刻の砂時計の砂が採取されてそれぞれの勇者に分け与えられた。
「おお、ポータルスピアーか! 転移ができるスキルだな」
「ああ、これなら色々と移動が便利になる」
「こちらも出ましたよ。転送弓ですね」
と、そんな感じで転送スキルをゲットした勇者たちなのであった。
残り、波の刻限まで19時間。
やり直しで元康は勇者たちがゼルトブルに行ったと言っていたが、ゼルトブルはなかなか遠い国だ。
ポータルスキルで帰りに移動するにしても、行きで半日はかかるだろう。
そんな事を考えていたら、錬が俺に耳打ちをした。
「ソースケ、俺はこれからゼルトブルに行く。……頼んだぞ」
「え、あ、マジ?」
思わず素で反応してしまった。
それから、三勇者は別々の馬車でゼルトブルに向かったらしい。
全員仲間を置いて単独な点は、笑うところだろうか?
燻製は早く燻製にしたいなぁー
一応、書籍ルート(HardMode)なので、相当後になります。
残念!