波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず

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vs次元ノキメラ

 さて、今回の波のボスは次元ノキメラである。

 おそらく、波の魔物と言うのは接続した世界の魔物が出てくる現象だ。

 まあ、推測だけどね。

 つまり、あの波の先はキメラやリザード系統、ゴブリン系統の魔物が存在する世界である。

 出てくる魔物はこの世界とは違い、よくあるファンタジー魔物と言ったらいいか、そう言う世界っぽい。

 

 魔物に妨害されて、2時間ほど時間がかかってしまったが、俺たちは次元ノキメラのところまでたどり着いた。既に魔物が多数取り巻いており、リユート村までかなり近いところまで接近していた。

 これは勇者が来なかったら、ルロロナ村の様に人里で大暴れしたに違いないな……。

 今地に伏して倒れている冒険者の亡骸が、この次元ノキメラの強さを雄弁に物語っていた。

 出現位置はリユート村にかなり近い位置である。

 

「一番槍は俺が貰った! エアストジャベリン!」

 

 次元ノキメラは獅子の頭、龍の頭、山羊の頭の蛇の尻尾を持っている。

 魔獣というのがふさわしいだろう。

 勇者たちが近づこうとすると龍の頭が炎のブレスを吐いてくる。

 エアストジャベリンはキメラの蛇の尻尾に弾かれる。

 

「行くぞ! 勇者殿をお助けするのだ!」

 

 燻製が走り出す。

 

「チッ!」

 

 俺は燻製の前に出ると、槍でキメラの爪攻撃を防ぐ。

 力の方向を見て、槍でその方向を変えるイメージだ。

 

「燻製! 前に出るな!」

「く……は?」

 

 俺のあだ名に困惑する燻製。

 そう言えば、俺は燻製のことを呼んだことが一度もなかったな。

 

「君、良い槍持ってるね! 後で見せてよ!」

 

 元康がそう言うと、尻尾と戦う俺を抜いて攻撃する。

 

「はああああ! 乱れ突き!」

 

 乱れ突きが命中し、キメラは怯む。

 

「行くぞ! エアストバッシュ!」

「エアストアロー!」

 

 錬の使う、いわゆる空波斬みたいなものである。

 樹も、冒険者としては強力な弓を放つ。

 

「我輩も行くぞ!」

 

 キメラが怯んだ隙をついて、燻製が斧で攻撃する。

 ダメージは、そこそこな感じかな? 

 ちなみに、ウェルト達は他の魔物と乱戦状態であった。

 

「三段撃ち!」

 

 樹が技を放つ。

 吸い込まれる様に矢の軌道が変わり、弱点っぽい所に命中する。

 それに、怒ったのかドラゴンの頭が樹に噛みつきに行く。

 それにしても多彩な攻撃だ。

 隙という隙が無いのだ。

 こんな感じのこう着状態がしばらく続いてしまう。

 お互いダメージを与えあって、しばらく戦っていると、元康が槍を隕鉄の槍に変化させた。

 

「強化がまだだけど仕方ない! 流星槍!」

 

 元康が飛び上がり、槍を放つと星のエネルギーが出現して次元ノキメラに命中する。

 

「では、次は僕が、流星弓!」

 

 弓から放たれる矢に合わせて、星のエフェクトが出現し次元ノキメラに命中する。

 

「流星剣!」

 

 錬は接近して切りつけると星のエフェクトが召喚されて追加でダメージを与える。

 それぞれ、アニメで見た流星シリーズそのままである。

 俺が再現するには、魔法剣の様な感じですると良いだろうか? 

 俺の使う雷大旋風も、勇者なら合成スキルで出来そうではある。

 

「ソースケ! 魔法!」

 

 と、錬から指示が入る。

 ああ、合成スキルを使うんだな。

 

『力の根源たる俺が命ずる、理を今一度読み解き、彼の者を打ち滅ぼす雷を放て』

「ツヴァイト・サンダーショット!」

「合成スキル・エアストサンダーソード!」

 

 俺の放ったサンダーショットが錬の剣に集中する。そして、錬が天に剣を掲げると、雷の剣が空中に召喚されて、次元ノキメラに直撃する。

 これは俺が錬の前で雷大旋風を使ったことから思いついたらしい。

 ヘルプで確認すると、『合成スキル』の項目を見つけたらしい。

 

「グギャアアアアアアアア!!」

 

 ダメージを受けてキメラが悶絶をする。

 やはり、波の戦いは勇者がいてこそと言うことか。

 そこまで苦戦している様子を見せないのは流石だろう。

 

「ヒュー、カッコいい! だが俺たちも負けないぜ! マイン! エレナ! レスティ!」

 

 さっきから積極的に戦わず、近くに居た魔物のみ倒すエレナと、他の仲間に魔物を押し付けるヴィッチとヴィッチ2号が、元康の指示に足を止めて魔法を詠唱する。

 

『力の根源たる私が命ずる、理を今一度読み解き、彼の者を打ち滅ぼす炎を放て』

「ツヴァイト・ファイアショット!」

「「ツヴァイト・エアーショット!」」

「みんなの力を借りた俺の合成スキル! くらえ! エアストバーストフレアランス!」

 

 炎と風の塊が槍から放たれて、キメラを燃やす。

 この頃はまだ『私』なんだな。

 既に『次期女王』とでも言うのかと思った。

 あの時はメルティを殺せると確信があったから言っていたんだろうなと思う。

 

「錬さん、元康さんに良いところを見せてもらいましたし、僕も続きましょう。皆さん!」

「はい、イツキ様!」

 

 樹の仲間の一人が魔法を唱える。

 

「ツヴァイト・エアーショット!」

「ツヴァイト・サンダーショット!」

「行きます。合成スキル、エアストプラズマストームアロー!」

 

 樹の放った矢にエアーショットとサンダーショットが絡みつき、緑色のプラズマを放ちながら、キメラに直撃する。

 

「ギャオオオオオオオオオン! グルルルル……」

 

 次元のキメラは苦悶の声を上げて倒れた。

 1時間もかかってしまったが、なんとか倒せたのだ。

 次元ノケルベロスは思えばあれは弱い魔物だったのだろう。

 つまり、今回の波の脅威度は前回よりも高かったという証左である。

 

 仲間の方は同時並行で周囲の魔物を片付けていたわけだが、もちろん波のボスを倒したからと言ってすぐに波が鎮まるわけでもなく、魔物も減ったりはしない。

 かと言って勇者ほどの派手な技も見せ場もなく地味に処理出来てしまった。

 それでも到着までに2時間、キメラ討伐までに1時間は普通にかかっている。そして、波の亀裂まではさらに2時間かかってしまった。

 到着が遅れたことによって、被害はそれなりに拡大しており、幸いにして死者が出なかったことが唯一の良かった点だろう。

 

「それじゃ、波の亀裂まで無事到着できたことだし、波本体を攻撃しますかね」

 

 元康がそう言うと、錬と樹はうなづいた。

 そして、勇者たちがそれぞれの勇者スキルで波の亀裂を攻撃をすると、波の亀裂が治っていく。

 

 もちろん、既に出現してしまった魔物は消えないので、それを討伐しながら俺たちはキメラの元へと戻ったのだった。

 キメラの元に戻ると、錬はドラゴンの部位を収め、元康はライオンの顔を収め、樹は山羊の頭を武器に収めた。

 

「ま、こんな所だろ」

「そうだな、今回のボスは楽勝だった」

「ええ、これなら次の波も余裕ですね」

 

 そんな事を勇者たちがが話していると、騎士団を連れた尚文が登場する。

 しかし、尚文は何も語らずに睨んだ後に、舌打ちをする。

 

「よくやった勇者諸君、今回の波を乗り越えた勇者一行に王様は宴の準備ができているとの事だ。報酬も与えるので来て欲しい」

 

 やっぱり、どこかで似た様な兵士がそう告げる。

 んー、このタイミングでこのセリフを言うって言うことは……。

 ああ! 思い出した! 

 この後亜人に消される兵士じゃん! 

 

 その兵士長の指示に従い、勇者達は移動することになった。

 俺がふと立ち止まり、尚文を見ると、ちょうどアニメの構造と被って見えた。

 

「あ、あの……」

 

 リユート村の人達だろうか? 

 尚文に駆け寄り話しかけた。

 

「なんだ?」

「ありがとうございました。あなたが居なかったら、みんな助かっていなかったと思います」

「なるようになっただろ」

「いいえ」

 

 尚文の返答に、首を振って応える。

 

「あなたが居たから、私たちはこうして生き残る事が出来たんです」

「そう思うなら勝手に思っていろ」

「「「はい!」」」

 

 村の連中は尚文に頭を下げて帰っていった。

 

「ソースケ」

 

 錬に声をかけられて振り向く。

 ちょうどラフタリアが尚文に話しかけるのと同じタイミングだった。

 

「行くぞ」

「……あいよ」

 

 こうして、勇者達によって波が鎮められた。

 正直、あの強さならばレベル100の冒険者の方が強いのではないのだろうかと思う。

 だが、今回は尚文が村の防衛役、錬たち他の勇者がキメラと戦ってちょうどいいバランスだった様に、俺には感じられたのだった。




やっぱり、勇者は弱いんじゃないかと言う。
キメラ戦の最後で合成スキルでとどめを刺したのは、隕鉄シリーズの解放が住んでいない+それぞれの強化が完了していないためです。

エアストサンダーソードは、宗介も雷轟剣として使えたりします。

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