波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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矛盾の実践

 城の庭は今、決闘会場と化していた。

 辺りには松明が焚かれ、宴を楽しんでいた者達がみんな勇者の戦いを楽しみにしている。

 しかし、決着がどう付くかは既に周知の事実となっているのだ。

 攻撃する手段の無い尚文と、槍の勇者である元康の戦い。

 盾の勇者一行と槍の勇者一行の戦い……ではなく、尚文と元康の一騎打ちになった。

 さすがに元康自身のプライドが許さなかったらしく、一対一になった。

 結果は誰だって想像くらい出来る。

 現にこの手のお約束である賭博行為をする声がまったく聞こえてこない。

 まあ城に居るのが貴族が多いと言うのもあるけれど、俺を含めた波で戦った冒険者だって居るのだ。

 普通であれば賭博が行われないはずが無い。

 つまりみんな分かっていて尚、尚文に敗北を要求している。

 錬は興味なさげに、樹は尚文を哀れむような表情で城のテラスから傍観している。

 ヴィッチ……ああ、赤豚ね、アイツがいる位置は普通に見てもやはり変な位置にいる。ちなみに、ミナの方はアールシュタッド領主の隣である。

 常識的に考えれば、アレでは戦闘に巻き込まれてもおかしくはない位置だ。

 原作にはないが、アニメ版には出現するバルマス教皇もいた。

 いやまあ、尚文が教皇を認識したのがドラゴンゾンビの後だから、認識外だったのかもだけれどね。

 

「では、これより槍の勇者と盾の勇者の決闘を開始する! 勝敗の有無はトドメを刺す寸前まで追い詰めるか、敗北を認めること」

 

 しかし、この場の空気は非常に不快だ。

 燻製の顔もこれから起こる事を期待しているような、嫌な顔をしている。

 

「矛と盾が戦ったらどっちが勝つか、なんて話があるが……今回は余裕だな」

 

 元康舐めた感じでそう勝利宣言をする。

 自分の正義に酔っているのだろうけれども、客観視すると悪だろう。

 少なくとも、弱者をいたぶる事が正義だとは到底思えないな。

 

「では──」

 

 審判っぽい兵士が溜める。

 

「勝負!」

 

 さて、茶番が始まった。

 いやまあ、流れは変わってないから結末も同じだろう。

 なので、ここは基本的に決闘に参加しない連中を見たほうがいいかな。

 錬と樹は、尚文の戦い方に驚いている様子だ。

 

「……盾があんなに善戦するなんて」

「確かに、驚きだな」

 

 ゲームに詳しいとか言っているが、こいつらは戦いに詳しいわけではないからな。

 実際、他のネトゲでもタンク職は重要だったりする。

 ヘイト管理や前線職が戦いやすい状況を作り、魔法職に攻撃がいかないようにするのが役目だ。

 タンクが落ちれば戦線は決壊する。

 TRPGでもパーティを組んで遊ぶ時は俺がタンクをやっていたっけな。

 それほど重要な事を理解していないのは、ゲームオタクを名乗るものとしては不思議に思う。

 中衛をやっていても、ウェルトがタンクをやっていてくれるからやりやすいのもあるしな。

 

「きゃあああ! モトヤス様ー!」

「モトヤス様ー。頑張ってー」

 

 元康の仲間二人は、元康がもっと簡単に勝てると踏んでいたのかきゃあきゃあ言っている。言っているのだが、エレナの方は若干棒読み感を感じてしまった。

 

「おいおい! 槍! 情けないぞ! 冒険者の方が動きがいいではないか!」

 

 俺を引き合いに出してぎゃあぎゃあ言っているのが燻製だ。

 まあ、そう言う反応になるよね。

 お前を守っているのが俺だし。

 他の錬の仲間は、すごく申し訳なさそうな顔をしていた。

 

 樹の仲間は、元康を普通に応援している。

 そう言えば、樹の仲間はクズ揃いだったっけ……。

 

 ミナは、俺が見ていないと思っているのか舐めた顔をしている。

 尚文がヴィッチの風魔法で吹き飛ばされた時はすがすがしい顔をしていたので、やっぱり同類だなと感じた。

 

「はぁ……はぁ……俺の、勝ちだ!」

 

 元康の辛そうな勝利宣言に、会場中が湧き上がる。

 いや、そこは喜ぶところなのかな? 

 弱い弱いと思っていた盾に苦戦しているんだぞ。

 明らかに勇者が弱いことの証左だろうが! 

 

 俺はこのクッソくだらない茶番を見ながら、呆れるしかなかった。




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