波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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不吉の足音

 ミルソ村はアールシュタッド領から見ると反対側になる。

 メルロマルク城下町から見ればちょうど西側である。

 レイファたちの情報は未だに集まらなかった。

 そうやすやすとドラルさん達が死ぬことはないと思うんだが……。

 

「お前たち、今日の依頼はこれだ」

 

 と言ってギルドから依頼書を逐一持ってきては、錬は別の場所でレベル上げと言う方針は相変わらずであった。

 最近の変わったことと言えば、ウェルト、テルシア、ファーリーが俺に距離を置き始めたことか。燻製が当たりが強いのは変わらずであるが。

 俺を置いてウェルト達だけで錬の依頼をこなす事も増えてきて、微妙な距離感を感じていた。

 それが決定的になったのは、道中のウェソン村に到着した時のことであった。

 

「おお! 剣の勇者様、よくぞおいでくださいました!」

「ふん、御託はいい。ここで討伐依頼があると聞いたから、訪れただけだ」

「おお、さすがは勇者様であらせられる! では、詳しい話を致しますので、どうぞこちらに」

 

 と、案内された時であった。

 俺がウェルト達に続いて村に入ろうとすると、屈強な村の男が立ちふさがったのだ。

 

「……?」

 

 手で押しのけようとするも、固くどいてくれない。

 

「お前はこの村には入れさせない」

「は?」

 

 今回の依頼は錬から手伝うように言われていたので、俺も説明を聞く必要がある。

 俺が無理やり押し通ると、武器を構えた連中が立ちふさがった。

 

「……なんの真似だ? 俺は、剣の勇者様の仲間なんだけど?」

「ふん、嘘をつくな!」

「……?」

 

 訳がわからん。

 

「おい、ソースケ、何をしている!」

 

 錬が俺が遅いことを心配して戻ってきたらしい。

 

「ゆ、勇者様お待ちくだされ! 勇者様!」

「おい、どう言うことだ! なぜソースケを村に入れない! 俺の仲間だぞ!」

「勇者様……チッ。おい、ソイツを通してやれ。勇者様のご命令だ」

「チッ」

 

 どう言うことだ……? 

 不穏な空気を出すこの村に入ることはやめておいた方がいい気がした。

 

「いや、構わない。錬サマ、ここまで拒否られるなら、俺はお呼びではないのだろう。外でレベル上げでもしておくから、詳しい話はあとで聞かせてくれ」

「……ソースケがそう言うなら、わかった」

 

 俺は村から離れることにした。

 何だろう、この仕打ちは。

 錬の仲間として目立ったことはしないようにしていたんだがなぁ……? 

 

 俺はその日は結局、村の外で一人で野営をすることになった。

 

 翌日、野営を終えて片付けをする。

 村の方に戻ると、丁度良く出発するタイミングだったらしい。

 村の連中に錬が見送られる最中であった。

 はぁ、やれやれ。そう思い、合流しようとすると、武装した村の奴がやってきて俺を取り囲む。

 

「……なんだ?」

「お前を勇者様に同行させるわけにはいかない!」

「悪魔の手先め、ここで成敗してくれる!」

 

 殺気立った連中に取り囲まれてしまった。

 

「意味がわからないんだが、何? 俺は盾教じゃないんだけど?」

 

 俺はカマをかけることにしてみた。

 ただの村の連中がここまで敵対的なのは、そう言う宗教関連であると推測したからだ。

 この時期はまだフィーロもまだフィロリアル形態のままだし、レース騒動も起きてないだろう日にちだからだ。

 

「嘘をつくな悪魔め! 剣の勇者様を穢す盾の悪魔の使いだろう!」

 

 あー、やっぱりか。

 なぜ、そう言った噂が流れたのか知る由はない。

 俺は一度も尚文の味方をした記憶はない。

 なのに、そう言う話が流れていると言うことは、ミナと燻製が関わっている可能性が高かった。

 それならば、目の前にいる連中は敵だ。

 

「仕方ないな」

 

 俺はそう呟くと、槍を構える。

 

「槍の勇者様の真似事など笑止千万! やってしまえ!」

「死にたい奴からかかって来いよ!」

 

 俺は切りかかってきた奴を槍で合わせて力を搦めとる。

 降ってきた方向に力を流して腕をかち上げ、相手の背に回り投げる。

 合気道の技で言ったら四方投げと言う奴だ。

 

「次!」

 

 1対多は俺の得意とするところだ。

 剣を槍で受け流し。力の流れる先を作って誘導する。それだけで、素人に毛が生えた程度の連中を投げ飛ばすのには十分だった。

 

「つ、強い……!」

 

 俺は一度も人間無骨で切ることなく、相手が疲弊するまで槍を使った合気道でポンポンポンポン村人を投げ飛ばす。

 地面は土とは言え、やせた土地だ。石も転がっているので、受け身をとれない連中ならばあっという間に行動不能なレベルでダメージを負うことはわかりきっていた。

 

「うわあああああああ!!」

 

 これでも、手加減はしている。受け身が取りやすいように丁寧に投げてはいた。

 

「ん? どうした、もう終わりか?」

 

 しかし、この分だと村で寝ないで正解だったな。きっと俺は寝てる最中に殺されていただろう。

 

「ううぅ……」

「未知の技を使うのか……!」

「さすがは悪魔の使い……!」

「いや、俺が一体何をしたんだよ」

 

 俺が呆れながら入口の方を見ると、すでに錬達は居なくなっていた。

 戦いには勝ったが、勝負には負けたと言うことか。

 じゃあ、俺がすべきことは情報収集だろう。

 

「おい」

 

 俺は胸元にある短剣を抜き、一番近くにいた村人の頭を掴み首筋に剣先を当てる。

 

「どう言うことか、説明してもらえるんだよな?」

「ひ、ひいいいいいい!!」

 

 俺は笑顔でソイツから事情を聞き出すことにした。




早速トラブル発生!

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