波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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BGMは吉本新喜劇のアレでも聴きながら、どうぞ


新喜劇

 しばらく訓練しつつ、魔物を討伐し料理を行う。

 サバイバルゲームみたいだが、まあ仕方ないだろう。

 これでも一人暮らしだったし、家事はそれなりにこなして来たほうだ。料理ぐらいなら問題ない。

 塩は常備している。これは汗をかいた時に舐める塩分が欲しかったから常備するようにしていたのだけれど、まさかこんな事で役に立つなんて思っても見なかった。

 捌いた骨つきの肉を、ファスト・サンダーで起こした炎で焼く。

 懐かしいな。

 臨海学校を思い出す。

 キャンプでカレーを作った時に火の番をやった経験が生きるとは思っても見なかった。

 肉を焼き、塩をかけて食べれば、普通に美味しくいただける。

 食事を取った後、しばらく待機していると、ようやく村人がやってきた。

 

「冒険者さん、勇者様がお戻りになられました」

「ん」

 

 俺は砂をかけて火を消し、村人と共に村まで向かう。

 流石に、兜は被っていなかった。被っていられる段階はすでに終わったからである。

 村に入る時に警戒されはするが、流石に亜人でないと見ればわかるからか、止められはしなかった。

 錬が滞在している家に通される。

 

「ソースケ! どこに行っていたんだ!」

 

 見れば、錬以外……特に燻製とウェルトはボロボロであった。

 怪我をしたのか包帯を巻いている。

 回復魔法はどうしたんだよ。

 テルシアを見ると顔が青い。魔力切れを起こしているな。

 

「ああ、この村の連中に妨害されてな。すまなかった」

「そうか……。しかし、ソースケ、その黒髪は……」

 

 うっ、頭がピリッとする。

 やはり日本人だと勇者に知られるのはNGか。

 宮地はオッケーにもかかわらず、なんでだろうな? 

 俺に対しての制約が厳しいとしか言いようがない。

 

「ああ、俺は勇者の末裔なんだ。隔世遺伝で勇者の特徴が色濃く出たらしくてな」

「……いや、どう見ても日本人だろ」

「さあな。俺もそこまでは分からん。だが、問題点はそこではないだろう?」

 

 どうやらセーフだったらしい。

 否定すればオッケーなのか? 

 そこらへんが曖昧である。

 波の尖兵だと明かそうとするのは一発アウトだけどな。

 

「そんな事より、錬サマ以外ボロボロじゃないか。……本当に大丈夫か?」

 

 燻製なんて特に可愛そうなほどにボロボロである。

 痛い痛いとずっと呻いている。

 四肢の欠損は無いみたいだがな。

 

「……ソースケさんの実力を侮っていた私達が悪いのです」

 

 どう言う事だ? 

 

「俺がソースケが来るまで待つべきだと言ったんだが、マルドが『あの冒険者などいなくても問題ない』と言い出してな。ソースケ無しでも何度か依頼をこなしていたし、大丈夫だと言っていたんだが……」

 

 KONO☆ZAMAであると言うことか。

 

「俺は、今回の依頼はソースケ含めた全体で戦ってようやく程度の依頼を受けた。だが、コイツらは大丈夫だと言ったからな。不安に思ったが、どうしてもという事だったので、行った結果こうなった」

 

 いや、錬も止めろよと思うんだが……。

 

「で、討伐は出来たのか? 錬サマが健在という事は倒せたと判断していいのか?」

「いや、残念ながらレッサーオロチは健在だ。マルドが大怪我をして逃げざるを得なかったからな」

 

 うーん、詳しく聞いた方が良さそうだな。

 

「ウェルト、戦況を詳しく教えてくれ」

「え、ええ、わかりました」

 

 ウェルトは詳しく話し始めた。

 

 今朝、俺がいくら待っても来なかったため、錬は俺が来るまで出発を延期にしようと提案した。

 

「……遅いな。近場にいると思ったんだがな」

「レン様、そろそろ行きましょう。ソースケを待っていると日が暮れてしまいますよ」

「いや、今回の敵であるレッサーオロチは強力な敵だ。全員でいかなければならない」

「大丈夫だ剣の勇者。我輩達も冒険者が居なくても大丈夫なように、連携の練習をしておる。冒険者無しでも剣の勇者から出された依頼はこなしておるからな!」

「そうよ! 問題ないわ」

「そうです! それに、参加できないのは遅刻するソースケさんが悪いのですから、問題ありませんよ」

「……だが」

「大丈夫です!」

 

 強く大丈夫だという仲間達に、錬は渋々俺抜きで行くことを決めたそうだ。

 

「……良いだろう。お前達の実力を見せてもらおう」

「「「はい」」」

「ふふふ、大船に乗ったつもりでいるが良い!」

 

 実際、レッサーオロチまでのダンジョン……森の中の探索は順調だったらしい。

 だが、レッサーオロチと戦う際は問題が発生したようである。

 

「アレがレッサーオロチ!」

 

 レッサーオロチは3頭の巨大な蛇である。

 色は赤色、三種の頭から毒、麻痺、眠りのブレスを吐く、強力な魔物だ。

 いやいや、状態異常ブレス3種ってかなりヤバイよね! 

 なんで援護魔法が使える俺を連れて行かないの? 

 テルシアのアンチポイズン、アンチパラライズ、アンチスリープだけじゃ絶対魔力的に間に合わないよね! 

 馬鹿なんですか?! 絶対馬鹿だよね?! 

 

「GISYAAAAAAAAAAAA!!」

「行くぞ、お前たち!」

 

 錬が飛び上がり攻撃を仕掛けると、早速レッサーオロチは毒のブレスを吐き出す。

 錬はステータスが高いため、避けるのは困難ではなかった。

 

「さすがはレン様!」

「我輩たちも剣の勇者に続くぞ!」

 

 だが、ここからが悪夢の始まりだった。

 直猛突進する阿呆は、毒のブレスが残っている場所に突っ込む。

 

「ぎゃああああああああ! 痛い痛い!」

「ファスト・アンチポイズン!」

 

 レッサーオロチは錬を尻尾でなぎ払おうとする。

 それに燻製が当たりそうになり、すかさずカバーに入るウェルト。

 

「ぐわああああああああ!!」

「ぎゃあああああああああああああ!!」

「ツヴァイト・ヒール!!」

 

 別に三つ首全てが錬を狙っているわけではない。

 麻痺のブレスがウェルトと燻製を狙う! 

 ウェルトはなんとか回避するが、直撃を受ける燻製。

 

「あがっ!」

「ファスト・アンチパラライズ!」

 

 あまりの醜態に、当然ながら錬は戦闘に集中できない。

 むしろ、攻撃に当たるたびにギャースカうるさい燻製の声にいちいち集中をかき乱される。

 

「おい、お前たち! 戦闘に集中しろ!」

 

 錬も注意するが、戦線は完全に決壊しており、ファーリーもレッサーオロチの爪の一撃をもらって吹き飛ばされて壁に叩きつけられる始末。

 

「はぁ……はぁ……ツヴァイト・ヒール……!」

 

 あまりの事態に、錬は撤退を決めた。

 

「お前たち、撤退するぞ!」

 

 だが、逃げる際もレッサーオロチは執拗に追ってきており、麻痺、毒、眠りのブレスを錬達が襲った。

 すでにボロボロでグロッキーな燻製、燻製や後衛を守るためにボロボロなウェルトは、吹き飛ばされて意識のないファーリーを背に抱える。そして、回復魔法の使い過ぎで魔力切れを起こしているとテルシア。

 錬以外ボロボロの状態で、錬以外命からがらレッサーオロチから逃げおおせたのだった。

 

「ばああああああぁぁぁああかじゃないのおおおおおおぉぉぉおぉお?!?!??!」

 

 俺は思わず大声で叫ぶことになったのだった。

燻製は陰謀以外でもそれなりに考えて戦うキャラに成長する?

  • 燻製は所詮燻製(成長しない)
  • 流石に燻製でも学習する(小)
  • 今回のことを教訓にする(中)
  • 陰謀に割くリソースを回す(大)

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