「……で、状態異常なら丸薬とか店売りの回復薬とか、武器が作ってくれるものとかあったはずだけど、どうした?」
「帰還時にかなり消費してしまってな。現在は村の方に依頼している最中だ」
帰還時の戦闘中に、どうやら薬品とかは使い切ってしまったと言うことらしい。
「……はぁ。ほらよ、即効性の魔力水だ。これでも飲んでおけ」
俺は足のポーチから魔力水を取り出す。
薬の作り方はドラルさんに叩き込まれており、俺はある程度薬を自作することができる。
足のポーチに常備しているものは全て即効性の戦闘用のものだ。
テルシアは受け取ると、すぐに飲む。それだけでだいぶ顔色が落ち着いた。
次に俺は雷系統の回復魔法を使う。
さっきから呻いてる燻製を黙らせるためだ。
『力の根源たる俺が命ずる。真理を今一度読み解き、彼の者に雷による癒しを与えよ!』
「ドライファ・サンダーヒール」
手から癒しの雷が発生し、燻製の体に電気ショックが走る。
「ぎゃっ!」
燻製はビクンとすると、完全に気絶する。
サンダーヒールの欠点は、回復するのに気絶してしまう点だ。
ビリッと電気が体に走るため、実質電気ショックを受ける。
利点は、心肺停止状態からでも回復する事である。電気だからね。AEDみたいなイメージだ。
「それじゃ、最大の戦犯は黙らせたし、反省会だな」
俺はため息をついてそう言った。
「今回の敵がレッサーオロチだと知った段階は?」
「俺は事前に説明したはずだ」
思い起こせば確かに言っていた。ただし、魔物名だけである。どう言う特徴のあり魔物で、攻撃方法は何なのかは言ってなかったはずだ。
「錬サマは情報共有をちゃんとしたほうがいい。今回みたいな状態異常てんこ盛りの敵の場合は、事前情報と準備が絶対に必要だ。勇者様的に好きな例えなら、そう言うゲーム? の場合、事前に必ず店で大量に状態異常を回復するための薬を買い込むだろう?」
「む……そうだな。わかった、今後はその情報について共有するようにしよう」
流石の錬も、このどうしようもない惨状を見て、納得したらしい。
「話を聞いている限りじゃ、く……マルドの阿呆が脳筋的行動を取ったせいで大惨事になったみたいだが、お前らもなんで錬サマが頑なに俺を連れて行きたかったか意図を察しろよな」
「うぐっ……そ、そうですね」
「すみません……」
ファーリーは寝ている。
傷はもうないみたいだから放置しているけれどな。
「ま、なんか変な噂が流れているみたいだから、気持ちはわからんでもないが、時と場合、状況を考えろよな」
はぁ、やれやれ。
「次は俺もちゃんと参加する。完治までおよそ3日はかかるかな?」
「そうだな。俺もそう見込んでいる」
「なら、ウェルト、く……マルド、ファーリーは治療に専念かな」
「俺とソースケ、テルシアはレベル上げだろう」
「あいよ」
チラッとパーティメンバーの状況を確認すると、確かに悲惨な状況である。
テルシアのMPは8%ぐらいで、回復するまで休憩かなと思った。
あの魔力水は3回分程度魔法を使えるまでMPを回復させる代物なので、魔力量の多いテルシアならその程度かなと思った。
遅効性のほうがやはり回復量は大きいしな。
「……テルシアはMPの回復を優先しろ。俺とソースケで先行してレベル上げをする」
「わかりましたわ」
と言うわけで、俺と錬は素材収集と狩りを行うことになった。
薬草を採取しつつ、レベル上げだ。
2日目からはテルシア、3日目からはファーリーも加わりレベル上げをする。
4日目でようやく全員が全回復したので、いよいよレッサーオロチ討伐にフルメンバーで向かうことになった。
俺は自分で即効性のある解毒・耐毒・耐麻痺・不眠の丸薬を作成する。
薬草に毒に効くハーブなどを調合したものだ。
それをポーチに入れ、突撃する燻製やウェルトに渡す。
ポーチには即効性のあるヒールポーション、魔力水を5本ずつ入れており、いつでも取り出せる状態だ。
錬は錬で剣でアイテム作成をしているようであった。
そんな感じで準備をした俺たちはレッサーオロチの目前にいた。
「行くぞ、お前たち!」
錬が突撃する。基本アタッカーかつ一番攻撃力のある錬は遊撃させればいいだろう。
「我輩も続くぞ!」
相変わらずこっちの話を聞かない燻製は、俺が盾をしつつ攻撃させてデコイにする。
「ウェルト、燻製のフォローを! ファーリー、テルシアは丸薬を飲め」
『力の根源たる俺が命ずる。理を今一度読み解き、我等に毒を防ぐ力を与えよ』
「アル・ツヴァイト・リジェネ・アンチポイズン!」
指示を出し、俺は継続効果のある耐毒支援魔法を全体にかける。
そのおかげか、突撃して毒のブレスに巻き込まれた燻製が悲鳴もあげずに戦っていた。
『力の根源たる俺が命ずる。理を今一度読み解き、我等に麻痺を防ぐ力を与えよ』
「アル・ツヴァイト・リジェネ・アンチパラライズ!」
耐麻痺用の魔法を唱え終え、俺は不眠の丸薬を噛み、魔力水と一緒に飲み込む。
「わはははは! 効かぬわぁ!」
麻痺のブレスを浴びても突撃をやめない阿呆。
「ウェルト、錬サマを狙ってる首の一つを! ファーリーはウェルトの援護!」
俺は駆け寄り、技を放つ。
「必殺! 大旋風!」
ひとまず、俺と燻製の周囲の麻痺霧が晴れる。すかさず地面に手を置き魔法を唱える。
『力の根源たる俺が命ずる。理を読み解き、我の周囲を雷で噴き飛ばせ』
「ファスト・サンダーウェーブ」
雷が地面から発生し、霧を消しとばす。
「無闇に突っ込むな!」
俺は燻製に注意しつつ、向かってくる首に向けて俺は腰に下げているボウガンを使い矢を放つ。もちろん、目にである。
目に直撃し、怯む顔。そんな隙を燻製が見過ごすはずはなかった。
「うはははは! 喰らいやがれえええ!」
斧の攻撃がクリーンヒットする。
切断面から血が噴出する。
爪攻撃が来たので、俺はすかさず燻製の前に出て、槍で受ける。
『力の根源たる俺が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を打ち滅ぼす雷を放て』
詠唱を完成させつつ、俺は人間無骨を起動する。パカっと開いた穂先から凶悪な槍が出現する。
俺は燻製の作った傷跡を槍で滅多斬りする。
「ソースケ! テルシア!」
「ツヴァイト・サンダーショット!」
「ツヴァイト・アクアショット!」
俺は錬からの指示を聞き、合成スキル用の魔法を放ち、そのまま距離を取る。
「合成スキル・エアストストームソード!」
水と雷を纏った剣で、毒の首を切りつけると、局所的な嵐が巻き起こる。水で撹拌された雷が乱反射するようにレッサーオロチにダメージを与える。
「くっ、これで倒れないとはなかなか強いな……」
少し楽しげにそう言うと、錬は毒の首と戦いを続ける。
ブレスを回避し、切りつける。噛みつきを剣でうまく払い、切りつける。
錬の剣の腕もだいぶ上達した。
眠りの首は、ウェルトとファーリーがタゲを取っている。
ウェルトはファーリーの魔法の援護を受けて善戦している。だが、決め手がない感じか。
やはり、一番要である錬が必殺の一撃を出すことが勝利の鍵だろう。
「クソ! いい加減に死ぬがよい!」
燻製の突撃に合わせて、爪が来る。
俺はその爪を、槍で受け流す。
邪魔だな。
「ツヴァイト・サンダーブリッツ」
槍に雷を纏わせる。
赤黒く変色した雷が、槍から放たれる。
「必殺! 雷裂風迅槍衝!」
俺は槍を構えて力を溜め、一直線に突く。
衝撃波が赤黒い雷を纏って放たれ、防御無視の衝撃波がレッサーオロチの腕を吹き飛ばした。
レッサーオロチは悶絶する。
その隙をついて、錬が毒の首を切り落とした。
「ムーンライトスラッシュ!」
三日月を描くような斬撃を錬が放ち、それが決め手となったのだ。
錬はそのまま、眠りの首に突撃する。
「ハンドレッドソード!」
剣を10本ぐらい召喚し、一直線に飛ばす。
それだけでも眠りの首にかなりダメージが与えられたようだ。
「我輩も勇者に続く!」
燻製は相変わらず直猛突進でがむしゃらに斧を振り回している。
どちらかと言うと、タゲは俺にあるみたいだがな。
噛み付いてくるので、後ろに飛んでかわし、槍を脳天に突き立てる。
防御無視・無敵貫通のこの槍は容易く麻痺の首の頭蓋を切り裂く。
さすがに勇者みたいに切断はできないけれどね。
槍で脳をぐちゃぐちゃにかき混ぜてやると、痙攣して動かなくなる。
そんな麻痺の首を燻製が斧でさらに攻撃する。
「ははははは! 我輩がやったのだ!! 打ち取ったぞおおお!」
残った眠りの首は、俺たちが戦う前に錬によって切り取られて、戦いは終わったのだった。
宗介は防御が上手いため、ダメージを受けること自体が少ない。
燻製はそもそも宗介のお守りでノーダメージ。
ウェルトは不眠の丸薬を飲んでいたので、ブレスのダメージのみ。爪は正面から受け止めているので、それなりにダメージあり。
錬は回避でノーダメージ。
テリシアはウェルトの回復と、援護の水魔法だけなのでそこまで魔力消費はなし。
ファーリーはウェルトの援護のみのため、余裕。
結論、前回の大苦戦は主に燻製のせい。
燻製は陰謀以外でもそれなりに考えて戦うキャラに成長する?
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燻製は所詮燻製(成長しない)
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流石に燻製でも学習する(小)
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今回のことを教訓にする(中)
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陰謀に割くリソースを回す(大)