波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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言葉の壁

 言葉を話せるようになるまで、そう時間はかからなかった。

 と言っても、カタコトぐらいならわかるし話せる程度ではあるけれどもね。

 いや、【神を僭称する者】だったら翻訳ボーナスぐらいつけてよと思ったのだった。何故こんな事で苦労せねばならないのか。

 

「ソースケ、オハヨ」

「おはよう、レイファ」

 

 俺を泊めてくれた女の子、名前はレイファと言うらしい。

 父親の名前はドラルと言う。実際のフルネームが聞き取れるほど習熟はしてないからね。

 

「今日、言葉、学ぶ?」

「うん、お願い」

 

 というわけで、献身的にレイファは俺に言葉を教えてくれた。それがなんの得にもならないだろうに、教えてくれる彼女に俺は感謝でいっぱいだった。

 ドラルさんも言葉はあまり分からないが、ご飯と宿を分けてくれるのでありがたかった。

 

「言葉、わからない、仕事、できない。言葉、覚える、早く」

 

 とのお達しだったので、俺は力を入れて言葉の学習に励んでいた。

 流石に、家事はわかるので、レイファの手伝いをしながら言葉を覚えたんだけれどな。

 ちなみに、さっきのお達しはレイファのおかげで理解できた。

 それからおよそ8日も経過していた。おかげで、俺はメルロマルク語の会話が、幼稚園生レベルではあるけれどもできるようになっていた。

 

「おはよう、ソースケ」

「ああ、おはよう、レイファ」

 

 会話ができるってこれほど素晴らしい事だったのか! 

 俺は心が躍る。

 

「ふむ、これならようやく仕事を任せてもいいな」

 

 ドラルさんは俺と少し会話すると、そんな事を言った。

 そりゃまあ、働かざる者食うべからずである。

 異世界生活初日から言葉がわからないとかよくわからない状況だったしな。

 ドラルさんは俺に剣を渡してくれた。

 

「これは?」

「レベル必要、あー、魔物、狩る。素材、渡す。オーケー?」

 

 つまり、魔物を狩りながらレベル上げをして素材をドラルさんに渡せという事らしい。

 この世界では魔物の素材を売買する仕組みがあるから、それで稼ぐこともできるからな。

 一宿一飯の恩義は返すべきだろう。

 

「わかった」

「レイファ、%◯が心配だから、▽□しろ」

「わかった、お父さん」

 

 レイファは俺の方を向くとこう言った。

 

「私、一緒に、行く」

 

 と、レイファからパーティ申請が飛んできた。

 これがパーティ申請ねぇ。

 もちろん俺はパーティ申請を承認する。

 

「オーケー、行きましょ、ソースケ」

「わかった」

 

 俺は重たい剣を持って立ち上がる。

 片手剣とは言っても重いが、持てないこともない。

 構えは合気道寄りになるけれどね。

 さて、そんなこんなでレイファに連れられて、森の中へとやって来た。

 

「バルーン、いっぱい倒して」

「了解!」

 

 バルーンの残骸は10枚で銅貨2枚だったはずだ。それなりに倒せば、結構稼げるのだろう。

 剣を使っているおかげか、バルーンは容易く倒すことができる。

 重たい片手剣であるが、両手で持てば使えるし、合気道のように剣を力の流れに沿わせることで攻撃するのは容易かった。

 結局、今日一日頑張ってレベルが2になった。

 だが、使い慣れてない剣を使っていたせいか、手にマメができてしまった。

 

『力の根源たる私が命じる。理を今一度読み解き彼の者の傷を癒せ』

「ファスト・ヒール」

 

 レイファはそんな俺の手に回復魔法をかけてくれる。おかげで手の痛みはそこまで気にせずに戦うことができたのは幸いだった。

 ちなみに、魔法名は固有名詞なので聞いたままである。

 そして、詠唱も日本語で聞き取れた。

 設定だと、魔法文字というのはそれぞれに聞き取りやすい言葉で聞こえると言う設定がある。だからこそステータス魔法は俺が使うと日本語で書いてあるのだろう。

 俺はそんな日常を繰り返していた。

 日数にしておよそ10日、異世界に来てから18日が過ぎてしまったが、こう言った生活のおかげか、レベルは5、言葉は日常会話をできるまでになっていた。

 結構な量の魔物を、ウサピルなんかも含めて倒したけれども経験値が渋く、レベルは上がらない。

 そして、レベルアップ時のステータス上昇もそこまで無い。

 これが盾の勇者の世界の一般人かと直面する。

 

 ただ、俺はようやく言葉の壁を乗り越える事ができたのだった。




勇者でないのでハードモードです。

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