波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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邪教徒達

「す、すごい! 前回はまともに戦うことすら出来なかったのに!」

「ま、ちゃんと準備すれば、強敵でもこんなものだな」

 

 俺はそう言いつつ、魔力水を飲む。

 これで残りあと1本になってしまった。

 偉そうに死体の首を切断した阿呆はこの際無視である。

 

「なるほど……。ソースケさんの戦い方は参考にさせていただきます」

「敵を知り、己を知れば百戦危うからず……だっけな。早めに援護役を見つけたほうがいいな」

「フッ、ソースケがいれば十分だろう」

「勇者サマも、自分以外の戦略ぐらいちゃんと考えておけよ」

 

 信頼されるのは嬉しいが、燻製とミナの策略によって、いずれはこのパーティを近いうちに離れることだろう。

 早めにバクターを見つけてあげないとな。

 

 その後、錬はレッサーオロチの首を剣に収める。掻っ捌いて内臓も吸った。これは俺の指示ではなくて錬が自分からやったのだが……。

 凱旋とは行かないまでも、俺たちはウェソン村に戻ったのだった。

 その後、ささやかではあるが、宴が開かれる。

 錬の周りには村の美しい娘たちが侍り、錬にお酌をしている。

 

「フン、好きにしろ」

 

 と言いつつ、満更ではなさそうな顔をしている。

 次に燻製が自分の武勇伝を語っている。ウェルトやテルシア、ファーリーもチヤホヤされていた。

 俺は勇者様とは距離を取らされていたのだった。

 うーん、この。

 誰もお酒を注いでくれないから、エールも手酌だし、誰も話しかけてくれないので、若干寂しい。

 村長からの目線は「お前いつまでこの場にいるんだ。さっさとどっかいけ」と言わんばかりの視線を送ってくるし、三勇教の神官っぽい奴は、動きはしないが俺を睨んでくる。

 ああ、やはりメルロマルク。クソ野郎しか居ないのだな。

 

 俺は仕方なく、席を立つことにした。

 こんな所で酒を飲んでも不味いだけだ。

 

 遠目に宴が見える位置に行き、飲み直す。

 お酒を飲むと確かにMPが回復するので、面白いなと思いつつ飲んでいると、近くに気配を感じた。

 ああ、敵だな。

 俺はそう直感し、短剣を抜く。

 ギャリっと音がして、俺は短剣で二人の男に剣で襲われたことを知る。

 

「チッ、大人しく殺されてればいいものを……!」

 

 飲んでいたのでアルコールはそれなりに摂取はしていたが、楽しくなかったのでそこまでアルコールは回っていなかった。

 

「……マジかよ」

 

 俺は短剣と小手しか装備していない。宿に人間無骨とクロスボウは置いてきたのだ。

 つまり、剣かと思ったそれは、人間無骨であった。

 

「それ俺のだぞ! 返しやがれ!」

「いいや、これは我々が愚かな冒険者に盗まれた神聖な槍だ!」

「んな禍々しい神聖な槍があってたまるかってんだ!」

 

 魔力が通っていないのか、防御無視は働かなかったらしい。お陰で、剣で防御できたわけだ。

 つまり、あと一人は俺のクロスボウを持っているはずである。

 飛んでくる矢を回避する。が、一本腕に刺さる。

 焼けるように痛いが、我慢するしかない。

 

「くらえ! 冒険者!」

「誰が食らうか!」

 

 俺は槍の突きを受け流し、力を流す。

 そのまま相手の後ろに回り込み、顔面に当身を入れる。

 

「ぎゃっ!」

 

 そのままのけぞったので、短剣を首筋に当てて、その男を盾にするようにもう一方の男の方に向ける。

 

「貴様! 卑怯だぞ!」

「黙れスカタン! さっさと俺の武器を返しやがれ!」

 

 イライラする。

 だが、ここで消しても意味はないのだろう。

 

「これは我らのものだ! 貴様に返す道理はない!」

 

 ああ! もう、殺していいかな? 

 少し首を切っても動じないのだ。殉教する覚悟はあるのだろう。

 だが、理性がそれを押しとどめる。

 ここで殺したら、それこそミナの企みに乗るようなものだ。

 俺はそう判断し、武器を取り返す事に決めた。

 既に酔いなど吹き飛んでしまっている。

 俺は抵抗できない男の手首を捻る。そのままクルンと槍を奪い取る。

 そして、槍の穂先とは逆側……石突きの部分でぶん殴る。

 ズビしっと音を立てて頭部を強打すると、男は吹っ飛んだ。

 

「槍は返して貰った。次は弓だ」

 

 俺はそう言うと、弓を持っているやつに近づく。

 英霊召喚ゲームなら、ランサーの方がアーチャーに強いんだっけ。

 俺は短剣を鞘に収め、両手で槍を構える。

 槍の扱いはだいぶ慣れた。矢を弾きながら一気に間合いを詰めて、石突きで手元を殴る。

 

「ぎゃっ!」

 

 そのまま、槍を支柱にして、飛び回し蹴りをその男の顔面に食らわせる。

 男が吹き飛んだので、俺はクロスボウを拾い、矢を回収する。

 

「おい、ここで騒ぎが聞こえたぞ!」

 

 と、声が聞こえた。

 これを見られれば、俺はどの道指名手配である。

 ……本当に、腐ってるな! 

 俺はステータス魔法を操作して、パーティを脱退し、暗闇に紛れながらウェソン村を脱出したのだった。




アンケート見たら、皆さん燻製に成長は不要と思っているんですね笑
闇討ちをされておめおめと逃げ出した宗介の明日はどっちだ!

燻製は陰謀以外でもそれなりに考えて戦うキャラに成長する?

  • 燻製は所詮燻製(成長しない)
  • 流石に燻製でも学習する(小)
  • 今回のことを教訓にする(中)
  • 陰謀に割くリソースを回す(大)

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