錬は、不意にソースケの名前がメンバー一覧から消えたことに気づいた。
「なっ!」
錬は立ち上がり、周囲を見渡す。
ソースケがいた位置には、別の村人が座っていた。
「おい、ソースケは何処に行った!」
「ソースケ? はて、そんな人物はいましたかねぇ……?」
「チッ!」
錬は舌打ちすると、その場から出てソースケを探しに行こうとする。
ソースケは役に立つNPCだ。
せっかくの強キャラだし、錬が戦いやすい環境を整えてくれる重要なメンバーだった。
何やら、メンバー同士でいざこざがあったようだが、錬の知る所ではない。だが、どのメンバーを優先するかと言われれば、ソースケを優先するに決まっていた。
「剣の勇者様! どちらに行かれるおつもりですか?」
「決まっている。大事な仲間を探しに行く」
「いえいえ、勇者様。あなたの大事な仲間は全員こちらにおられますよ? 何をおっしゃられているのですか?」
なんだこれは。
錬は非常に不快だった。
なぜ、俺の強い仲間がこんな所で別れなければならないのか、錬には訳がわからなかった。
「邪魔だ! 退け!」
錬の足に、美女の村娘がしがみつく。
流石にそれを力づくで振り払うわけには行かなかった。
「おい、退けと言っている!」
「まあまあ、勇者様! ここは祝賀会の席です。お怒りをお鎮めになられてください」
「うるさい! 退けと言っているんだ!」
錬は力をセーブして、なんとか振り払おうとするが、そうは問屋が卸してくれない。
なんなんだ! 一体なんなんだ?!
錬は困惑していた。
この、気持ち悪い何かの正体は、まだ高校生の錬にはわからずじまいであった。
俺は、直感だけでなんとか生き残っていた。
おそらく教会側の影だろうか。そいつらが攻撃してくるのだ。
耐毒の丸薬を飲んでいたおかげで、倒れずに済んでいるが、影の執拗な毒吹き矢が容赦なく俺に突き刺さる。
「がぁっ!」
すでに俺は血だらけであった。
そして俺は無我夢中で逃げていた。
斬り殺そうとしてきた影の首を俺は人間無骨で撥ねとばす。
また、一人殺害した。
「はぁ、はぁ、ちくしょう……!」
集中できないため魔法も唱えられない。
俺はもう一個、耐毒の丸薬を飲み込んだ。
と、目の前に影が出現する。
目的は……俺のポーチらしい。
素早く俺は合気道で対抗する。
足捌きや腰の回転を使い、相手の力を利用して投げ飛ばす。
「死ね」
俺はそのまま胸から短剣を取り出し、心臓をひと突きにする。
「がはっ!」
影はビクンと反応して、動かなくなった。
俺はすかさず、その場を後にする。
このポーチを奪われたら、俺はただ殺されるだけであろう。
逃げなければ、逃げなければ、逃げなければ!!
死にたくない! 死にたくない! 死にたくない!!
あの、悪辣な燻製とミナを侮っていた!
「ちくしょう!」
俺は悪態をつきつつ、森の中を走り続けた。
一晩中走り続けただろうか。
だが、影の連中の攻撃がいつくるかわからないのだ。
ヒールポーションを飲んで、体力を回復しつつ、走る。走る。走る。
ひたすらに逃げ惑っていたので、もはや何処にいるのかはわからなかった。
「グア!」
フィロリアルの声が突然耳に入った。
「グア!」
「グアグア!」
「グア!」
俺は木に手をつき、立ち止まった。
目の前には、空色の羽をしたフィロリアルがいた。
「な……!」
「グアー!」
頭には3本の、王冠のような羽が生えている。
そのフィロリアルが、俺に近づいて来た。
「グア! グア!」
まるで、背中に乗れとでも言っているようであった。
が、俺は、あまりに出来事に、腰が抜けてしまった。
なぜ……なぜフィトリアがここに?
フィトリアは俺を羽で摘むと、背に乗せて走り始めた。
「グアー!」
ドッドッドと何処かに俺を連れて行くフィトリア。
俺は疲れていたのだろう。気がつけばフィトリアの背中の上で意識を失ってしまったのだった。
これで、剣の勇者のソロプレイは終了です!
宗介は何処に連れ去られた?
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フィロリアルの聖域
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ゼルトブルの何処か
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メルロマルクの何処か
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フィロリアル牧場の何処か
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フォーブレイの何処か