波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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強襲

 深夜、俺は気配を感じて素早く槍を装備する。

 あの時武器を盗られた経験から、俺は武器を手元に置くようにしていた。

 

「敵か」

 

 直ぐに起き上がったのは尚文であった。

 尚文も裏切られた経験から、深く寝ずにいることが多いようだ。

 

「いいや、()()()()

 

 俺は槍を払うと、ガキンガキンと矢による攻撃を弾き飛ばした。

 

「ナオフミ様!」

「ごしゅじんさま!」

 

 流石に攻撃してくる気配で、ラフタリア達も起き上がったようであった。

 

「へぇー、なかなかやるじゃん。俺様のエリナの弓を切り払うなんてな」

 

 そいつは、冒険者の姿をしていた。

 転生者か! 

 俺の中で殺意が滾っているので間違いがないだろう。

 こう言う呪いはまだ健在のようであった。

 

「そっちから殺されにくるとは、殊勝な事だな」

 

 この呪いは恐らく、波の尖兵が個別に徒党を組むことを防ぐためにかけられたものだろう。

 それを逆に使えば、ソナーに出来る。

 相手もそうなのだろうがな。

 

「お前がソースケだな?」

「その周辺にいるのは……はっ、盾か」

「……チッ」

 

 尚文はイラッとした表情をする。

 

「ま、盾なんて防具はいらねぇしな。今回はそこの犯罪者を殺しに来たんだ。邪魔するなよ」

 

 阿呆のセリフに、尚文は指をさして俺に聞く。

 

「おい、景虎! なんだこのムカつく野郎は!」

「俺の敵だ。岩谷達は取り巻きの女を頼む」

「……」

 

 尚文は俺の顔を見て、うなづいた。

 

「わかった。クソ野郎は任せたぞ、景虎!」

「おうともさ!」

 

 俺は槍を解放する。

 俺の魔力を受け取り、槍は変形する。

 先端の槍が開き、十卦の槍になる。先端の槍は両方に展開した槍の穂先をカバーしていたもので、魔力により防御無視の槍が形成される。

 魔力剣と言ったらイメージが近いが、そんな生易しいものではない。

 この槍の恐ろしい点は、肉体も精神も切り刻む事だ。

 

「いくぜぇぇぇぇ! 嗤え! 人間無骨!」

 

 森長可の宝具解放からセリフを真似る。

 

「人間無骨って景虎じゃなくて森長可じゃねーか!」

 

 と言う尚文のツッコミは無視する。

 今は気が立っている。

 この目の前のゴミを始末しなければ気が済まない! 

 

「俺様の剣、受けてみるか?」

「シュッ!」

 

 俺は構わず槍を突き刺す。

 が、紙一重で回避される。

 

「決め台詞を邪魔されるとムカつくなああ!!」

 

 奴は回避した足で、そのまま剣を振ってくるが、甘い。

 槍を回転させて剣を石突きで弾く。

 ギインっと鉄のぶつかる音がするが、弾き飛ばすことはできなかった。

 俺は素っ首を狙い槍を回転させる。

 

「チッ! 雑魚が、イキがりやがって!」

 

 奴は剣で槍を受けようとする。

 そんな剣は、この槍には紙くずも同然のごとくスパッと切れる。

 

「はぁ?!」

 

 紙一重で回避して、奴は俺から距離を取る。

 チラッとみると、尚文達は取り巻きの女達を制圧中のようである。

 

「お前、その槍チートじゃねぇか! なんだよそれ!」

「なら、お前のチートを見せてみろってんだ!」

 

 俺はそう言うと、奴の元に駆け出す。

 奴は恐怖してダッシュで逃げ出した。

 もちろん、こんなところで逃がすわけがない。

 

「必殺! 裂風迅槍衝!」

 

 俺は槍に力を溜めて、突きを放つ。

 防御無視、無敵貫通の衝撃波が奴を襲う。

 

「ぎゃああああああああああああああああああ!!」

 

 巻き込まれて吹き飛ぶ奴を殺すため、俺は奴の元まで駆け抜け、地面に落ちる前に奴の首を跳ねる。

 

「ははははははは!! 成敗!!」

 

 非常に気分がスッキリした。

 首と体が泣き別れになり、信じられないものを見るかの様子の奴を、俺は槍でみじん切りにする。

 証拠隠滅である。

 

「必殺! 乱れ突き!」

 

 解放状態の人間無骨は奴の死体を紙くずのように消しとばした。

 ああ! やっぱりいいな! 世の中の敵を粉微塵に消し飛ばすのは! 

 制約がほとんどなくなった以上、ミナを消し飛ばすのもありだろう! 

 ふふふ、ははは、はははははははははははははははは!! 

 

 俺は槍に魔力を流すのを止める。

 すると、槍の穂先は自動で閉じる。

 ふと、槍を見ると、槍の装飾が変わった気がした。

 あれ、親父さんから受け取った時こんなデザインだったっけなぁ……? 

 

「景虎、終わったか?」

 

 尚文が駆け寄ってくる。

 俺はかなりスッキリした表情をしていたのだろう。

 

「ああ、片付けたよ」

 

 俺の言葉に、尚文は引いた顔をする。

 

「さ、消しとばしたとは言え、この血だまりをラフタリアさんに見せるわけにはいかないだろう」

「あ、ああ」

 

 尚文は帰り際に「死体すら消し飛ばすのか……。俺より酷い目にあったんじゃ……」とつぶやいていたが、否定も肯定もしなかった。

 奴とは初対面だしな。

 

 戻ると、女達3人が縄で縛られていた。

 必死に命乞いをしているようだ。

 

「あ、ナオフミ様。言われた通り縛っておきました」

 

 ラフタリアとフィーロが見張っていたらしい。

 女達はキャーキャーと命乞いをして非常に耳障りだ。

 尚文の表情が曇る。

 

「なんだこの女達は。あのビッチ王女を思い起こさせる!」

「ですね。あの方を彷彿とさせます……」

 

 尚文はそう言うと、俺の方を向いた。

 

「景虎、どうするかはお前に任せる」

「……このまま放置でいいんじゃないか」

「そうか、お前なら殺すと言うと思ったんだがな」

「殺すのは、クソ野郎だけだ。女に対してはあの女以外はどうなろうと知ったことじゃない」

 

 ただ、このまま放流すれば面倒なことには変わりないか。

 やっぱり消すか。

 

「そうだな、そこの貴族っぽい女は消す。それ以外の女は、この事を喋らないと誓うなら、殺さないで置いてやる」

「ひいいいいいいいい!!」

 

 俺が殺気を放つだけで、女どもは失禁したようであった。

 

「誓います! 誓いますううううう!!」

「何故あたしだけ!!! 嫌! いやあああああああ!!」

 

 俺は貴族っぽい女を消すために、縛られている紐を掴む。

 

「ふん、虎の尾を踏んだのが悪い」

「ナオフミ様……」

「自分たちが強いって思い込んでたんだねー。バカだよねー」

「フィーロ!」

 

 貴族っぽい女からはミナと同じ感覚を感じる。

 それ以外の女にはそれを感じなかった。

 判断基準はそれだけである。

 俺は二人から見えない位置に移動すると、首をはねて肉体を消しとばしたのだった。

 




何この景虎サイコパス!
まあ、レベル差もありますが、この波の尖兵はレベルが25ぐらいなんですよね。
宗介のレベルは錬のところでレベルを上げた結果、59になっています。
結果、粉微塵に消し飛ばされました。

フィーロの毒舌を追加しておきました。

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