「フーッ……」
俺は立ち上がる。
ヒールポーションを飲んだおかげで立ち上がるまで回復はできた。
そして、
剣と槍をその辺に投げ捨てる。
クロスボウも邪魔だ。
その辺に投げ捨てる。
それだけで、俺の能力は若干下がるが問題ではなかった。
「ふふふ、やはり強敵とは言え、君は美しく無いね」
俺には、全て、関係ない事だ。
ただ力を抜いて、俺は構える。
そう思い込むことによりセルフイメージを上げる。
アスリートなんかが試合前にやるアレだ。
植芝盛平先生や、塩田剛三先生に比べたら、年季は浅いが、それでも実戦で積み上げてきていた。
そして、この世界に来てから積み上げてきた戦闘の数々を思い起こす。
どんな土壇場でも、役に立ってきたのは、合気道だった。
あとは、それを自分の中で昇華させるだけだった。
何度死にかけただろうか?
そのせいか、辺りに漂う何かを俺はつかみかけていた。
「スゥー……」
息を吸って吐くたびに、俺の中にあるもう一つの何かを感じていた。
「立ち上がってくるなら仕方ない。美しくない君は用済みだ。死んでいいよ」
白い奴は一瞬で消える。
俺は、その気配に合わせて、手を置いた。
バキャッと音がして、白い奴が吹っ飛ぶ。
「?!?!」
「「「キャー!!」」」
合気道とはカウンター技だ。
だが、誰も攻めないとは言っていない。
それに、剣や槍は手の延長ではあるが、
「ぐっ、き、貴様! 僕の美しい顔を殴ったな!」
「ハァー……」
戯言など聞き飽きた。
俺はただ、殺すのみだ。
「殺してやる! 僕の美しい顔を殴った貴様を殺してやる!!」
再び白い奴は消える。
俺は気配に合わせて、そこに拳を放つだけだ。
当身とは、ただ相手に合わせて、そこに拳を置くだけだ。
バキッ!
「グハッ!」
振りかぶった斧を、俺は優しく撫でるように力を誘導する。
そのまま、俺は入り身投げに入る。
こういうのをゾーンに入ったとでもいうのだろうか?
その時の入り身投げは、俺の中で一番冴えているように感じた。
奴を後頭部から落ちるように誘導して、地面に叩きつける。
「がああああ!!」
奴は後頭部を抑えて悶絶する。
「僕があああ、僕をおおお、貴様ああああ!」
斧を振りかぶって攻撃してくる。
俺はその斧に優しく触れる。
それで、俺は繋がりを感じる。
奴とつながったのならば、技をかけるだけだ。
俺は俺の体内で何か言葉に言い表せないものを練り込みながら、手刀で斧を受け流す。
そして入り身をして転換で相手の背後に回り込み、顔面に当身を入れる。
スパアアアアアアン!
「ぎゃあ!」
仰け反るのでもう一度入り身投げをして、壁に投げつける。
斧の勢いがそのまま、奴が吹き飛ぶ速度に加算されて壁に叩きつけられた。
「グハッ!」
ビターンと音を立てて壁に叩きつけられた奴は、顔面に強烈な当身を3発入れたせいか腫れてボロボロになていた。
「くそッ! 貴様! 僕の! 僕の美しい顔を! よくも!」
白い奴は斧を構える。
「エアストアックス!」
「エアストシールド!」
斧のスキルを受け止めたのは、尚文の盾だった。
「大丈夫ですか?!」
駆けつけてきたのはラフタリアとフィーロだ。
「あの技の系統! 一体何者なんだ、アイツは!」
俺は、それすらも無視する。
白い奴の方に歩みを進める。
「いい加減死晒せ! 大激震!」
白い奴が地面に向かってスキルを放とうとする。
俺は素早く近づき、斧に手を沿わせる。
そして、スキルの方向を空中へと変化させる。
「なっ!」
奴は驚愕に顔を歪める。
「スゥー……」
俺は、練りこんだ何かを、奴の腹に押し付けた。
こう、何かはわからないが、俺は知っているような何かを押しつけるように殴り抜く。
「ぐ、な、ぎゃああああああああああああ!!」
叫ぶのがうるさいので、口を押さえて、地面に叩きつける。
グシャッと音がしたが、まだ息はあるようだ。
「グフっ、後頭部ばかり狙いやがって……!」
「なんだ、あの技は?!」
「私も見たことがありません!」
白い奴は立ち上がると、斧で連撃を仕掛けてくる。
「烈風神速斬!」
「ハァー……」
俺は斧の連撃を全て手で受け流す。
受け流しつつ、練りこんだ何かを使って殴る。
周囲は斧の斬撃が刻み込まれる。
だが、パンドカパンバキパンパンゴキパンと俺の拳が奴の身体中にめり込む音が鳴り響く。
さながら、流水岩砕拳の様に俺は受け流しては殴り、受け流しては殴った。
最後の一撃が振りかぶり攻撃だったので、俺は転換し懐に潜り込み、思いっきり斧の力の方向にぶん投げた。
どかっと音をってて壁の激突する。
斧の振るう威力そのままの投げだ。
俺の攻撃で奴の鎧はボコボコに、顔はさらに酷い有様になっていた。
「ぼ、ぼくろおぉぉ……ぼくろうつぐじぃがほがはぁあぁあぁぁ……」
瓦礫の中で奴はそう呟いた。
血まみれの顔で何を言っているのだろうか?
興味がわかない。
興味があるのは、奴がまだ死んでいないことだけだった。
「そこまでですわ!」
ミナの声が響く。
「ソースケ!!」
俺はその声に、ゾーンから復帰せざるを得なかった。
まさか、まさかまさかそんな!!
「レイファ?!」
「ソースケ! 助けて!」
そこには、ミナに首にナイフを突きつけられたレイファの姿があった。
ようやくの出番のレイファちゃんです。