俺の預かり知らぬ事だが、ミナがレイファを人質にしたちょうどその時、ある人物がアールシュタッド領に戻ってきた。
「……何事かね?」
「領主様!」
死体の片付けと死者の身元解明、負傷者の手当てに騒がしかったアールシュタッド領城下町は、領主の帰還にようやく安心することができた。
事情を聞いた領主は、苦虫を噛み潰した顔をして、こう呟いたそうだ。
「ミリティナめ……これで何度目だ!」
俺とミナの宿命に、決着がつこうとしていたのだ。
「テメェ! どうしてレイファを!」
「もちろん、調べたのですわ」
「俺は一度も、お前の前でレイファのことを話したことはないぞ! 同じ部屋で寝ることすらなかったはずだ!」
ネタ自体はわかっている。
おそらくあの時だ。
レイファと共に依頼を受けた帰りに遭遇した波の尖兵の取り巻きの女である。
それ以外でレイファに繋がる伏線は、俺は用意していなかった。
「……」
俺が口から吐かせようとした事を理解してか、忌々しい顔をするミナ。
だが、少し考えて、鼻で笑う。
「アナタに初めてあった時に、近くにいた殿方……ドラル、でしたかしら? ふふ、強いお人でしたわね。ソースケさん?」
「ま、まさか?!」
「今ではウルフの餌になってますわね! ほほほほほほ!!」
「テメェ!!」
奥歯がギリッと鳴る。
「動かないで!」
「ヒッ!」
尚文が動こうとして、ミナはナイフをレイファの首筋に押し当てる。
軽く血が流れるのが見える。
「チッ!」
「盾の勇者ごときが何をできるかは知りませんが、所詮は盾。今ここで、死んで仕舞えばいいのです」
カツカツカツと足音を立てて、白い奴に近づくミナ。その手にはヒールポーションが握られていた。
「さ、アレックス様、今度こそその最強の力で、犯罪者と盾葬り去ってくださいまし。そうしたら、愛してあげますわ」
流石に今回ばかりはちゃんと、奴の名前が聞き取れた。
「ふふ、ふはは、あはははははははは!」
白い奴は突如笑い出すと、武器を変化させる。
「この僕に! こんな醜いラースアックスⅡを使わせるなんてね! 菊池宗介!!」
「なんだ! あの禍々しい斧は! しかも武器が形を変えたぞ!」
そうか、尚文はまだ知らないんだな。
カースシリーズは未開放だし、他にも勇者武器が存在することは。
なので、黙っていることにした。
「菊池宗介ぇぇぇぇぇ!!!」
「不味い!」
尚文がバッと前に飛び出して、白い奴の斧を受ける。
空間が歪むほどの轟音を立てて、尚文は受け切った。
「ぐはっ! いてぇ! 斧には防御貫通の効果もあるのか?!」
「ナオフミ様?!」
「ごしゅじんさま!!」
ダメージを負ったのか、尚文は口から血を流す。
そんな尚文はすぐに指示を出した。
「ラフタリア! 頼む!」
「……! わかりました!」
「景虎、フィーロ! 持久戦だ!」
「ああ!」
「わかった! ごしゅじんさまを傷つける斧の人、許せない!」
フィーロが攻撃しようとするたびミナが声をかけてくる。
「この子がどうなってもいいのかしら?」
「チッ!」
「ぶー!」
結局は、防戦一方となってしまう。
軽い攻撃は俺が前に出て受け流し、重い攻撃は尚文が盾で受け止めると言った連携した防御を行う。
「うざい! うざいうざいうざい! 君たちもあの連中のように! 僕の邪魔をするのか! それだけで万死に値する!!」
「何を言っている?!」
「ふふ、ふはははははは!! 僕の芸術をわからぬ奴は死ぬがよい!」
白い奴は訳のわからない事を言うと、スキルを発動させた。
「チェーンバインド! チェーンニードル!」
「まずい! その鎖は避けろ!!」
俺は尚文に指示をする。
尚文も理解したのか、俺たちは全て避けることができた。
「チッ! 美しくない君たちに、美しい死に方をさせてあげようと言うのにね!」
カーススキル・ギロチンを使わせるわけにはいかなかった。
現時点での俺たちが、あのスキルを受ければ、確実に死ぬだろう。
と、ラフタリアがミナにこっそりと近づき終えたらしい。
なぜ気づかない。
完全に俺たちが攻撃しないかに集中しているらしい。
ちなみにほかの取り巻きの女は隅で震えていた。
「エアストシールド!」
「なっ?!」
尚文がエアストシールドをミナとレイファの間に入り込ませるように出現させる。
「たああ!!」
素早くラフタリアがレイファを救出すると、ミナから離れる。
「よくやったぞ、ラフタリア! フィーロ、景虎! 今だ!」
「武器の人! いっくよおおおお!」
「ああ!」
俺とフィーロは尚文の前に出る。
『力の根源たる俺とフィーロが命ずる。理を今一度読み解き、大旋風を巻き起こせ!』
「「ハリケーン!!」」
あれ、このタイミングでフィーロって魔法使えたっけ?
疑問に思いつつも、俺とフィーロは合唱魔法を唱える。
雷と風でハリケーンか。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!」
雷と風の突風の嵐に巻き込まれ、白い奴は吹き飛ばされる。
俺は魔力切れを起こさないように、魔力水をポーチから取り出して飲むと、落下地点まで走る。
落ちてきていると言うことは、そこに大きなスキが生じると言うこと。
そして、俺は小手を装備したままだ。
『力の根源たる俺が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者に雷の衝撃を与え給え』
「ツヴァイト・サンダーブリッツ!」
俺は雷を小手に纏わせる。
ハリケーンが効いたと言うことは、魔法防御力がラースアックスに変化させて著しく下がっているからだろう。
ならば、俺の魔法の通じるはずだ!
それに、このクソ野郎はもっとボコボコにしなければ俺の気が済まない!
「必殺!」
俺は呼吸を整える。
ゾーンの入った時の何かはわからなくなってしまったが、この格闘術は使える!
「雷」
俺は構える。
「流水」
合気道で鍛えた、力みを抜く方法と、小手で習得する必殺技が合わさり、新しい必殺技を編み出す。
「千打刻」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドカァッ!!
一撃一撃を必殺の意思を持って放つ。
もはや、突きが早過ぎて、殴っている音がドドドドとなっている。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!」
最後の一発で吹き飛ばされた白い奴は元気な声を上げながら、壁に激突した。
ブシュゥっと耳元で音がする。
「あ……」
傷口が完全に開いてしまったらしい。
「景虎!」
「カゲトラさん!」
「武器の人!」
「ソースケ!」
俺は踏みとどまる。
まだ、あいつは死んでいないし、ミナもまだ生きているからだ!
「て、転送……」
だが、白い奴は転送スキルを使って逃げてしまった。
バァン!
と、扉が開いた。
「何事だね?!」
大広間に声が響く。
その小太りの偉そうな男は兵士の護衛をつけて、乗り込んできた。
「お、お父様?!」
ミナの叫び声が響く。
そう、俺はそいつに見覚えがあった。
アールシュタッド領領主である、アーヴァイン=アールシュタッドであった。
やっぱり、俺TUEEEE感が出てしまうなぁ。
オラオラですかぁ?!
YES!!YES!!YES!!