波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず

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哀れなものの哀れな末路②

「お、お父様?!」

 

 驚きの声を上げるミナ。

 

「な、なぜ領にお戻りに?!」

 

 噂では、領主様は俺に命を狙われているはずである。

 それならば、領主が戻ってくると言うのは明らかに矛盾だろう。

 

「ミリティナ、お前がまた変なことをやらかしていると聞いたからだ!」

 

 怒気を含む声音でこちらに歩いてくる領主。

 

「ふん、盾、いや、盾の勇者様とその一行か。おい、怪我をしている奴を治療しろ」

「で、ですが……」

「早くしろと言っておるのだ! 貴様もあやつのような阿呆か? ええ?」

「い、いえ、わかりました!」

 

 兵士は敬礼をすると、俺の周囲に来てヒール軟膏で怪我を回復させてくれた。

 渋々と言った表情だが、それでもありがたかった。

 

「して、ミリティナよ。何故お前は盾の勇者様に楯突いておるのだ?」

「そ、そこの犯罪者に手を貸したからですわ!」

 

 ミナは俺を指差してそう言った。

 やっぱりヴィッチの分霊はクソですわ。

 

「ふむ? 犯罪者? この冒険者は、最初の波を鎮めた功労者だろう? 何を根拠に言っておるのだ?」

「マルド様が言っておられましたわ! 剣の勇者様に取り入り、国を……」

「それのどこが犯罪だ? お前のやっている事と、一体何が違うと言うのだ?」

 

 確かに!! 

 的を射た指摘に俺は思わず唸ってしまった。

 

「いいえ、違いますわ!」

「いや、同じだ。昔からマルティ第一王女の影響を受けてか、陰謀ばかり考えおって! これでワシの頭を悩ますのは何度目だと思っておるのだ!!」

 

 完全に怒髪天である。

 やはり、ヴィッチとは懇意にしてたんだな……。

 

「ワシもお前は可愛い娘だと思っていた。だが、今回の失態はどう責任を取るつもりだ? ミリティナ」

「せ、責任、ですか……?」

「ああ、責任だとも。勝手に軍を動かし、勝手に民を扇動したのだ。失敗した以上は、責任を取るのが、政を司るものの使命だと、ワシが何度口すっぱく言ってきたと思っておるのだ?」

「わ、私に責任などありません! そもそも、襲ってくるそこの犯罪者と盾が悪いのです!」

 

 チラリと、領主は俺たちを見る。

 

「ふん、やはり、政治と宗教の癒着は看過できんな……」

 

 領主はため息をついて、そう呟いた。

 

「いいや、責任あるとも。お前が冒険者としてではなく、ミリティナ=アールシュタッドとして人を動かしたのだからな!」

「何故ですか?! お父様!」

「それに、前から常々言っておったはずだ。このような騒動を起こすのは、最後だと。だから、お前にはフォーブレイに行くことになったのだ!」

「フォー……ブレイ……? え、うそ、それはマルティ様の方では?」

 

 ミナの顔が明らかに恐怖で強張る。

 フォーブレイ……なるほど、豚王か! 

 ハハッ! コイツは愉快だな! 

 

「マルティ第一王女は現在槍の勇者様のパーティメンバーとして頑張っておられる。だからこそ、繋ぎが必要なのだよ!」

「い、いやああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 ミナは絶叫する。

 そして、その場で逃げようとする。

 

「取り押さえよ! ミリティナを逃すな!」

 

 ミナのそばに居た兵士が速攻で捕獲してナイフを取り上げて猿轡を噛ませる。

 

「おい、景虎。どう言うことだ?」

 

 うーん、書籍版だと送られなかったんだっけか。

 ならば、少しだけネタバレしても大丈夫か。

 話の流れからすると書籍版の流れみたいだしな。

 

「噂しか聞いたことないんだが、フォーブレイで貴族の女性に与えられる処刑法があるらしい。多分それじゃねぇの?」

「……ほう」

 

 尚文の顔が愉快に歪む。

 ヴィッチがその刑に処される事を考えているのだろうか。

 

「ナオフミ様、変な事を考えてます?」

「なんでもない」

 

 定番のやり取りを見つつ、俺は意識を領主の方に戻す。

 

「ミリティナを連行せよ! フォーブレイに無事に送り届けるのだ!」

「「「はっ!」」」

 

 領主の指示に敬礼して、兵士はミナを連行する。

 俺はミナににこやかに手を振った。

 さよなら! さよなら! さよなーらー! 

 はっはっはっはっは! 

 

「さて、盾の勇者様と、そこの冒険者」

 

 領主が俺たちの方を向く。

 

「ワシはお主たちが好かん。だが、今回のミリティナの暴走を止めてくれたことには感謝しよう」

「ふん、どうだかな」

「ナオフミ様……」

 

 尚文の態度に呆れるラフタリア。

 

「なので、冒険者共を殺戮したことと、護衛の兵士を傷つけたことに関しては、今回は不問とする事にしてやろう」

「恩着せがましい事だ」

「まあ、今回殺害された冒険者どもは、我が国でも婦女暴行を働く不届きものどもだったからして、不問にしても問題ない案件であるがな」

 

 そんなことだろうとは思ったよ。

 聞いている感じだと、この人は政治の理を優先する人物何だろう。

 その方がよっぽど信用が置けると言うものだ。

 

「だが、盾とその仲間による死者が多数出たことも事実だ。だから不問とするのだ」

「……いいだろう。その方がお互いにとって利益はありそうだからな」

 

 尚文は同意した。

 今回の騒動の落とし所としてはそんなところだろうか。

 しかし、ミナの父親はマトモそうな人でよかった。

 これがクズなら、さらにひと騒動あったことが容易に想像できるからな。




ぼかしているのはわざとです。

レイファどうしようか?

  • 一緒に旅をする
  • どこか安全な場所に置いていく

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