波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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エピローグ

 翌朝、俺は女神に言われたことを反芻しつつ、尚文たちと朝食を食べる。

 

「お前達は、これからどこに向かう予定なんだ?」

「俺は、北……アイヴィレット領に向かう予定だ」

「樹が居るところか……」

 

 北の飢饉のある地域なら、隣国に密入国も簡単だろうと考えたからだ。

 

「レイファはどうするんだ?」

「私はソースケについていきます。盾の勇者様に提案された通り、リユート村に移住するのも悪くない選択ですけれど、私の家族はソースケだけなので……」

「いや、レイファがそう決めたのならそれが良いだろう。差し出がましい申し出だった」

「いえ、盾の勇者様のお心遣い、感謝しかないです!」

 

 レイファの言葉に一瞬ではあるが、尚文はフッと微笑んだ。

 ラフタリア達は気づいてないように見える。

 対面で向き合って居なければ気づかないほどの一瞬だったし、レイファはそもそも尚文がほとんど笑うことがない事を知らないため突っ込まなかった。

 

「それにしても、盾の勇者様ってお優しい方なんですね」

「そうです! ナオフミ様はお優しい方なんですよ!」

「うん! ごしゅじんさまは優しいの!」

 

 レイファの言葉に激しく同意するラフタリアとフィーロ。

 あっという間に女子会が始まってしまう。

 

「あまり興奮するな。周りの客に迷惑がかかるだろう」

 

 尚文は諌めつつ、サクッとご飯を食べ終える。

 レイファとラフタリア達はなぜか自慢大会になり、俺と尚文の経歴が語られて居た。

 

「……へぇ、そう言えば宗介って普通にラフタリア達と会話して居て不思議に思って居たんだが、言葉を一から覚えたんだな」

「まあな」

 

 個人的に言わせて貰えば、聖武器のその異世界言語翻訳機能は本当に羨ましいところである。

 神様転生なら、本来付与されるべきスキルだとは思うんだがなぁ。

 

「全く……勇者どもには宗介を見習ってほしいものだ」

 

 錬は確かに多少マシだが、樹や道化様はさらにひどいからな。

 だが、この世界の連中は平然と他人の努力を裏切ってくる連中ばかりだから、どうしようもない世界だと思う。

 神様転生するならば、もっと別の世界の方が良かった。

 残念ながら、俺の世界は【盾の勇者の成り上がり】のweb版で語られた世界観の一部なのだけれどな。

 俺は知りとうなかった! 

 型月的世界観も嫌ではあるけれどな! 

 

 そんな感じで、俺たちは朝食を済ませた。

 そして、俺とレイファはあの小屋まで送って貰った。

 

「岩谷、運賃は?」

「構わないさ。流石に薬は料金をいただくがな」

 

 俺は尚文から即時回復ヒールポーションと魔力水を購入して居た。

 

「盾の勇者様、ありがとうございました!」

「ああ、お前達も気をつけろよ。行くぞ、フィーロ」

「はーい! またねー、武器の人、おねーちゃん」

「また会いましょう、ソースケさん、レイファさん。お二人ともお元気で!」

 

 フィーロの引く馬車は行商の旅を続けるために各地を巡る。

 あいつらが居たおかげで、俺は無事にミナを処刑台に送れたし、少なくともレイファにまた会うことができた。

 

「さて、ラヴァイトは元気かな?」

「ラヴァイト、戻っていると良いんだけれど……」

 

 俺は、小屋に戻る。

 改めて思うと小屋にしては大きいと思う。

 森の中にあるし、人里からかなり離れているので、ドラルさんの家系が建てた家なのだろうな。

 俺は、家を前にするとひどく懐かしい感じを受ける。

 実家のような安心感というのはこういう感じだなと改めて感じる。

 

「グアー!」

 

 ドッドッドと駆け足と鳴き声で、ラヴァイトと一発でわかる。

 

「ラヴァイト! 良かったー!」

 

 スリスリとレイファに頭を擦り付けるラヴァイト。

 レイファはラヴァイトを撫で回す。

 

「あ……」

 

 レイファは撫でる最中、ラヴァイトの魔物紋の場所で手を止める。

 魔物紋の場所を優しく撫で、レイファは涙を堪えたような声音で言葉を紡いだ。

 

「あ、お父さん死んじゃったから、魔物紋の再登録をしないとね」

「グアー……」

 

 二人とも悲しい目をしないでほしい。

 正直、俺は信じられないでいたしな。

 今でも実は生きているんじゃないかと思ってしまうぐらい、俺には現実感のない事であった。

 

「さて、この家に戻ることはほとんどないから、荷物整理をするかな」

「うん!」

「グアー♪」

 

 俺は、残念ながらメルロマルクでは命を狙われる身だ。

 だからこそ、女王が戻ってくるまでは生き延びなければならない。

 だからこそ、北へ向かうのだ。

 そして、メルロマルクが落ち着いて、三勇教が無くなった時に戻って来るためにも、部屋を綺麗にしておくのだ。

 

 だが、例え三勇教が壊滅したからと言っても、別の脅威が俺を待っている事には違いがない。

 霊亀、異世界の侵略者、波の尖兵、そして、タクト。

 そいつらが、俺の事を放っておいてくれるなんて考えは無かった。

 特にタクトは、レベル300超えの化け物である。

 生き残るためにも、ヴィッチじゃないけれども何か策を練る必要があった。

 

 どんな理不尽な世界でも、レイファと共に生き残る事を俺は決断するのであった。




これで、盾の勇者の編終了です!
宗介とレイファのイラストは完成次第アップロードします。

キャラクターデザインしてほしいキャラはいる?(100超えたキャラ描きます)

  • 菊池宗介
  • レイファ
  • ドラル
  • ミリティナ=アールシュタッド
  • その他(メールして)

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