夜、レイファと情報の擦り合わせを行う。
まあ、俺は耳を澄ましながら夜になるまでひたすらぼんやりしてただけだったから、レイファの方がしっかりとした情報を集めてきていたのは言うまでもなかった。
さすが天使は出来る女でもあったようだ。
と言っても、レイファの場合はお買い物ついでに色々と情報を仕入れてくる感じではあったが。
一般市民の間では、勇者様の活躍の話題よりも神鳥の聖人の噂の方がメインのように感じた。
薬品だけでなく、人物の運搬、手紙や荷物の運送や最近ではアクセサリーの販売もやっているらしい。
他にも、冒険者では解決の難しい問題を有償で解決すると言ったこともしているようであった。
書籍版よりも手広くやっているんだなと感心するが、フィーロの機動力なら可能だろう。
メルロマルクにも郵便の仕組みはあるが、貴族や位の高い者しか使えないほど高額みたいだからね。
だからこそ、口コミの力が強かったりするわけであるが。
想定するに、村の人が次に行く村を聞いて、運送料と共に手紙を渡すのだろう。
地道に信頼を積み重ねてマーケットを広げて行く。
その後、店舗拡大すれば、ストック型の所得を得る仕組みが完成する。
その収入を不動産投資に使えば完璧だろう。
そう考えれば、尚文には商才があると見るのは間違いではないだろう。
資産家の合気道の先生も、大学を卒業したらすぐに会社を立ち上げろと口すっぱく言っていたのを思い出す。
残念ながら、俺は死んでこの世界に来て冒険者兼賞金首なんて状態になってしまっているがな……。
勇者の方は悪い噂としては、魔物狩り過ぎによる生態系の変化で、強い魔物が減ったせいで弱い魔物……現実世界で例えるならば、熊の狩り過ぎで鹿が増え過ぎた結果、木の皮が齧られたりしているらしい。
それで、木材の質が悪化していたりする害が出ているそうな。
魔物はリポップしないもんなぁ……。
俺は割と意識して、強い魔物を殺したらその分多めに雑魚を討伐していたけど……。
人間の手では調整できない問題なので、難しい問題だろう。
と言うか、ここまで生態系の変化があると言うことは、勇者たちがえらい勢いで魔物を倒しまくっているからだろうけど……。
俺に関してだが、昨日ボコボコにした連中が話したからか、メルロマルク城下町に息を潜めているらしいと言う噂が流れていた。
それと、女の子の人質を取って国外に逃亡しようとしているらしいと言う噂だ。
噂ってのは尾鰭がつくのは当然だが、合っているのが癪である。
国外逃亡してどこかの国で波を鎮めまくろうかと企んでいるのは事実だ。
「ありがとう、レイファ。助かったよ」
「えへへ、ソースケの役に立てて嬉しいよ!」
さて、情報の擦り合わせを終える頃には随分と夜が更けてしまった。
「それじゃ、ご飯にしようか」
「そうだね。お腹空いちゃったもんね」
俺は宿の食堂に向かう。
当然ながら、俺は警戒を解くわけにはいかないため、周囲を見渡すと、見覚えのある槍を持った奴がいた。
金髪ポニテで赤が特徴の鎧を身に纏った、道化様である。
見慣れない女の子をナンパしているように見えるし、他のメンバーが見当たらないことからもまあ、推測がつく。
対面に座っているのは美人であった。
「ソー……カゲトラ、どうしたの?」
「うん? まあ、見てはいけないものを見つけてしまった感じ。あの席にしようか」
「? わかったわ」
俺はそれとなく道化様の声がギリギリ聞こえる位置の席を陣取る。
道化様のナンパ術を聴きながらの夕食……我ながら最低だな。
メニューを見てサクッと注文して、俺は聞き耳をたてる。
「……と言うわけで、俺は村を救ったわけだよ! いやー、中々大変だったね! 俺の機転が無ければもっと苦戦していたよ」
「そうなんですね、さすがは槍の勇者様ですね」
自分の武勇伝を語って行くスタイルなのかな?
まあ、道化様の楽しみなんだろうね。
「君も大変だよね。わざわざ遠いこの街まで来ているんだろう?」
「いえ、そんな! 勇者様ほどでもありませんよ」
なんて感じで、女の子から色々聴き出しつつ食事を進める道化様。
別にそっちにばかり意識を向けているわけではないので、俺は普通にレイファとご飯を食べつつ聞き耳をたまにたてる感じだ。
「良かったら、今度一緒に冒険しようよ! 俺の仲間も紹介するからさ、ね?」
「は、はぁ……。そこまで仰られるのでしたら……」
落ちたな(確信)
これでヴィッチはエステ代ゲットである。
明日か明後日には、あの子を娼館で見かけることになるのだろう。
可哀想に、道化様の被害拡大中であった。
ここで止めることも出来るのかもしれないが、騒ぎを起こすわけにはいかないので、残念ながらお見送りである。
可哀想に、元康に目をつけられたばっかりに……。
心の中で合掌しておこう。
「ん、どうしたの、カゲトラ?」
「ああ、明日はレイファと一緒に行動しようと思ってな。レイファのレベルもあげておく必要があるだろうしね」
「そうだね。一緒に旅をするなら、私も強くなる必要があるものね!」
レイファがナンパなんてされたらたまらないからな。
道化様の目線が一瞬レイファに向いていた気もするし、気をつけなければならないだろう。
そんな感じに俺たちは一晩を明かしたのだった。
宗介達は第二の波に参加する?
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参加しない