宿に帰ると、助かったという表情でレイファが駆け寄ってきた。
「ソースケ!」
何かと思えば、道化様であった。
あー、同じ宿に泊まってたのか……。
「えーっと、君がカレシ君かな?」
ここはそう名乗った方がいいだろう。
「ああ、そうだが……」
「なるほど、だったら申し訳なかった。君のカノジョ……レイファちゃんがあまりにも美しかったから、つい声をかけてしまったんだ。申し訳ないね」
「そうか、それは仕方ないな」
この道化様、男の姿はあまり気にしないたちなのかな?
ローブ姿でフードを深くかぶっているのに、それを気にしないのか。
あの時、城でウェポンコピーさせた時よりもさらに馬鹿になっていないだろうか?
それとも、考えることを放棄してしまったのだろうか?
そんな無様な姿の道化様に、呆れるしかなかった。
「良かったら、今度ダブルデートしない? 俺って槍の勇者だからさ、こう見えても結構強いんだよね!」
もはやただのチャラ男と化した無様な姿を晒す元康に、俺はただただ呆れるしかなかった。
「いえいえ、槍の勇者様のお手を煩わせるわけにはいきませんので。では、私どもはこれで」
「ああ、ちょっと!」
俺はレイファの手を握って、道化様の元を立ち去る。
元康が槍に触れないように、レイファを引っ張る形になったのは申し訳なかったが、仕方ないだろう。
「ソースケ、助かったよ」
「タイミングが悪かったな。あんなのがいるから気をつけるんだよ」
「うん! えへへ」
うーん、天使だな。
それにしても、勇者連中に会ってもすっかり怒りと言うか、そういうものが出なくなった。
これは、あの薬の効果だろうか。
とにかく、あの道化様が愛の狩人になった瞬間に、毎秒死亡フラグがついて回ることになるので、それまでには何とかしたいものである。
『宗介、お前は波の尖兵だったのですぞー! バーストランスX!』
なんて落ちが付いて回るなんて嫌にも程がある。
尚文も錬も俺を認識しているしな……。
現状、どうしようもない流れとはいえ、勇者連中に認識されてしまうのはあまりよろしくないことである。
そして、本来は目立ちたくない波の尖兵の連中に比べて、俺は明らかに目立ちすぎている気がする。
斧の勇者を騙る尖兵もぶちのめしてしまったしな。
「……ま、考えても仕方がないか」
俺はそう呟いて、部屋に向かう。
実はこの時にはもう、事態が動き出していた事に気付いていれば良かった。
間抜けにも、俺は
翌日、俺たちは宿を後にした。
どうやら道化様もこの宿に泊まっている様子なので、早めに出発する感じである。
ラヴァイトを回収して馬車につなぎ、街の入り口まで行ったところで、妙な連中が立っていた。
おいおい、あの鎧姿は燻製じゃねぇか!
「そこの馬車! 止まれ! その馬車に犯罪者が乗っているのはお見通しだ!」
と言うことは、あの地味な装備をした奴が樹か。
俺はコソコソ隠れる。
「乗ってませんよ。言いがかりはやめてください」
レイファが対応してくれて助かる。
「そうまで言うならば、その馬車の中身を改めさせるが良い! さあ! さあさあ!」
燻製が無理やり入ってこようとするので、俺は蹴り飛ばした。
「ラヴァイト!」
「グアー!!」
ラヴァイトは俺の声に応えて駆け出した。
チッ面倒なことになりやがった!
しかも、燻製までいやがる!
まったくもって燻製は俺を邪魔するために生きているんじゃないだろうか?!
「ソースケ?!」
「あいつらは俺の賞金目当ての冒険者だ。巻き込まれたら面倒だから全速力で逃げるぞ!」
「グアアアアアー!」
ドッドッドと馬車を引きながら全力で駆けるラヴァイト。
後ろを見ると、連中が馬の引く馬車で追いかけてきているのが見える。
「チッ!」
俺は馬車の荷台の後部に出る。
そして、クロスボウを構える。
樹が弓を構えているのが見える。
息を吐いて俺は、飛んでくる矢を射る。
実際、これは精密射撃である。
射撃攻撃は基本的に威力とスピードが比例する。
ならば、今の樹の矢のスピードはまだ、現実的に対処のできる速度だろう。
命中の能力は、妨害が効く特殊能力。
ヒロアカみたいな世界観だと考えれば、腑に落ちる。
「はぁぁぁぁ……」
俺は矢を放つ。
俺の常識ならば、矢の軌道が逸れる方向に打った。
だが、命中はしたが、想定よりそこまでそれはせず、馬車の縁に突き刺さった。
「クソっ! チートじゃねぇか!」
やはり勇者だ。
ならば、それぞれ切り払いをせざるを得ないだろう。
俺は槍を装備する。
馬車で安定しない足場なので、正直槍で対処はしにくかった。
俺は的確に俺を狙って飛んでくる矢を切り落とす。
さすがに切り落としたら特殊能力の発動は治るらしく、今度は馬車に当たることはなかった。
「む、やりますね……!」
ラヴァイトの足と馬の脚ではやはり馬の方が早く、追いつかれてしまった。
なので、樹の声が聞こえるわけである。
結構な近距離に居るのに矢を飛ばしてくるので、俺は短剣の方で切り払う。
非常に分が悪い。
「ははは! この距離ならば飛びのれますぞ! イツキ殿!」
「では、マルドさん、カレクさん、追い詰めてください!」
「わかりました、イツキ様! でりゃあああ!!」
ビリビリと音を立てて、馬車の横の幕が破られる。
「グアァァアアアア?!?!」
ラヴァイト、可哀想に。
涙目なのがわかる。
「ふふふ、ようやく追い詰めたぞ、犯罪者」
「貴様はイツキ様の正義の前にひれ伏すのだ!」
ああ、殺したい!
こいつら死ねばいいのに!
だが、物語上俺は、コイツらを殺すことはできないのだ。だから、槍を装備から外し、剣を構える。
「ははははは! そんな軟弱な短剣なんぞでワシらの相手が務まると思ったら大間違いだ!」
「イツキ様の名の下に斬り伏せてしんぜよう!」
「燻製! お前も剣の勇者様のところにいただろ! なんで弓の勇者様のところにいる!」
俺は話をして時間稼ぎをする。
話したがりのコイツなら、話さないわけがないと思ったからだ。
当然、この窮地を死人が出ないように切り抜けるための策を考えるわけだが。
「ふん、剣とは正義の不一致で別れたのだ! せっかくドラゴンを倒したと言うのにな! 誰のおかげでドラゴンを倒せたと思っておる!!」
燻製は憤慨してそう言った。
「へぇ、誰のおかげなんだ?」
「無論ワシの活躍のおかげに決まっておるだろう!」
「お前はせいぜい脳筋的に突っ込むことしか出来ないだろうが! 毎度毎度思ってたが、少しは戦闘にも頭を使え!」
「ふん! ワシが戦いやすいように環境を整えない剣が悪いのだ! その点、イツキ様はワシがピンチになったら的確に救ってくださる。そして、ワシとイツキ様の正義は一致しておるのだ!」
阿呆だな。
いまだにコイツは無闇矢鱈に突っ込む事を辞めてないと言う事らしい。
あかん、コイツとここで戦うと、最悪馬車が破壊される。
俺はどうにかしてコイツらを排除できないか考えるのだった。
燻製は変わらないのだ!
宗介達は第二の波に参加する?
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参加する(ボスに向かう)
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参加する(街を防衛する)
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参加しない