波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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この村はどこだ?!

 ガタガタと揺れる馬車の中で、俺は燻製に侍と対峙していた。

 お互いに得物を抜いて睨み合っている。

 こうなったら馬車から叩き落とすしかないと結論づける。

 燻製なら全身鎧だし大丈夫だろ。

 レイファはこちらをチラチラ見ながら、不安そうに手綱を握っている。

 ラヴァイトも全力で走っているので、足場も悪い。

 

「問答無用! いくぞ、マルド殿!」

 

 話が終わったと見てか、侍が刀を振りかぶってくる。

 いや、わかりやすい攻撃で結構。

 合気道がその分かけやすくて良い。

 俺は手刀を刀を持つ手に沿わせて、振りかぶる勢いを利用して四方投げを決める。

 ドンと音を立てて侍を寝転ばせる。

 侍の顔にはクエスチョンマークが浮かんでいた。

 

「カレク殿! おのれ犯罪者め!」

「今のはだいぶ優しめに投げたから、ダメージはないと思うんだがなぁ」

 

 燻製は俺が合気道(連中からすれば妙な体術)を使う事を知っているせいか、斧を構えたままである。

 いや、正確には思い出したか。

 

「どうした、かかってこないのか? 燻製!」

「誰が燻製だ!」

 

 燻製が近づいてきて斧を振りかぶる。

 さすがにレベル差があるため、侍よりも剣速が早い。

 恐らく、樹のメンバー内でレベルが一番高いのだろう。

 まあ、錬と共に居ればレベルが高くなるのは考えれば当然である。

 

「ふんっ」

 

 俺は当然ながら、燻製の斧に剣を沿わせる。

 あの白い奴に比べれば、燻製の斧など遅すぎてあくびが出る。

 ムカつくので顔も殴る。

 

「いったああああああああああ!!」

「マルドさん!」

 

 樹のホーミング弾が飛んでくる。

 俺はすぐに燻製の拘束を解除して、切り払いをする。

 命中率100%でも切り払いが発動したらノーダメージだしな! 

 しかし、痛がりな燻製と樹の相性は確かに良いらしい。

 

「はああああああ!!」

 

 侍が背中から切りかかってきたので、振り返らずに刀を振る手に触れて、左に半歩ずれてしゃがむ。

 

「のわああああ!」

 

 それだけで、侍はくるっと前跳び前転をして燻製に激突する。

 ギッシギッシと馬車が揺れる。

 

「グアー!! グアグア!!」

 

 自分の馬車が破壊されかけていることに、ラヴァイトが文句を言う。

 やはりさっさと追い出すべきか! 

 俺は侍の刀を回避しつつ、そう判断する。

 刀の振り出所である手に手刀を当てて、受け流しつつ馬車の外にポイする。

 

「のあああああああああああ?!」

 

 後ろにポイしたので、勢いよく転がっていく。

 

「カレク殿ぉぉぉ!」

「お前も後を終え!」

 

 俺は燻製を蹴り飛ばす。

 

「ぬぅ! なんの!」

 

 サクっと俺は短剣を刺す。

 

「ぎゃああああああああああああああああ!!」

「おらよ!」

 

 更に追撃で蹴りを入れる。

 刺したところは特に致命的になるところではない。

 お腹の鎧の隙間の部分である。

 燻製は叫び声とガラガラと鎧のなる音を立てながら道に転がっていった。

 

「マルドさん! くっ、覚えてなさい、菊池宗介! 必ず僕たちが捕まえてみせます!」

「知るか! 弓の勇者様はさっさと本分を果たせよな!」

「くっ……! マルドさん達を回収しますよ!」

 

 樹は悔しそうな表情をすると、馬車を引いて燻製達を回収しにいった。

 しかしまあ、侍の名前ってカレクだったんだ……。

 まるで『カクさん』みたいな感じだな。

 となると、あの嫌な雰囲気を出してる女が『スケさん』なのかな? 

 

 なんとか燻製達から逃れた俺たちは、少し離れた村に泊まることになった。

 近くの村に着くまでに、1日は経っていた。

 村に到着した俺たちは早速村の宿に宿代を払い、ここに泊まることにした。

 うーん、それにしても、なんかすごく見覚えのある村だった。

 

 ちなみに、移動の際の税はちゃんと納めている。

 商売をやっているわけじゃないしな。

 

「……はぁ、なんとかまけたかな?」

「でも、諦め悪そうだよね、あの人たち」

 

 ちなみに、ラヴァイトが涙目で馬車から離れなかったので、村の人たちに依頼して修理をしてもらっている。

 

「全くだ。クソっ、馬車を傷つけやがって」

「ラヴァイト泣いてたもんね」

 

 しかし、樹が俺の名前を知っているのはなかなか不味い状況かもしれなかった。

 連中はお互いに出し抜こうとしている感があるので、情報共有をしたりはしないが(錬の場合はそもそもウェルト達がワザと知らせないだろうが)、厄介なことには違いなかった。

 この村には張り紙は出ていないが、恐らく錬に知られる事を防ぐためなのだろう。

 俺の賞金首の張り紙は、結構目立たない位置にあったしな。

 

「それじゃ、この村がどこの位置にあるか、確認も兼ねて少し散歩するか」

「うん」

 

 ラヴァイトは全力で走らせたため休憩と言うのと、馬車の修理を依頼しているのでそれまでは休憩である。

 ランダムに道を蛇行して来たため、樹達も追いつくまでにそれなりの時間を要するだろう。

 夕暮れ時には出発かな、と考えながら歩いていると、突然声が聞こえた。

 

「おおおおおおおおおおお!! これはなかなかの逸材!!」

 

 うげっ、この声は! 

 俺が振り向く暇もなく、俺は見覚えのあるババアに拘束されていた。

 

「なかなかの素質じゃな! 素晴らしい!」

「な、なんなんですか、あなたは?!」

 

 レイファも驚いた様子である。

 

「おおっと、失礼。ワシはババアですじゃ。神鳥の聖人様に命を救われた、武術を得意とするものですじゃ」

 

 自分からババアと名乗っていくのか……。

 

「あ、私はレイファと言います。彼はカゲトラと言います」

「これでも冒険者をやっている。よろしくな」

 

 俺がそう挨拶をすると、じっくりと俺を観察した後に、こう言った。

 

「ふむふむ、ではカゲトラ殿、このババアと手合わせを願えませんかな? お主も何がしの武術を極めつつある模様。このババアと手合わせをする事で、何かが見えて来るやもしれませんぞ?」

 

 このババアは強い。

 身のこなしだけじゃない。

 圧倒的強者の感覚を感じる。

 

「拒否権は?」

「ふふふ、ワシはお主が拒否するとは思ってないから聴いておるのじゃ」

 

 俺は強さには貪欲な方だ。

 強くなければこの世界では生きていけないからだ。

 常日頃から鍛錬を怠ったことはないし、合気体操は毎日やっているほどである。

 

「……わかった。ご教授願おうか」

「ソー……カゲトラ?!」

「ふむ、ここではじゃなんですじゃ。ワシの家の前ならそれなりの広さがありますじゃ。そこで手合わせ願いましょうぞ!」

 

 こうして俺は、作中最強ババアと手合わせをすることになってしまったのだった。




出たよババア
そして、名乗らないババア

宗介達は第二の波に参加する?

  • 参加する(ボスに向かう)
  • 参加する(街を防衛する)
  • 参加しない

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