波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず

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【高難易度】レジスタンス

「じゃあ、兜を取るか」

 

 俺がそう言って兜を取ると、イケメンの顔が現れた。

 まあ、顔はイケメンではあるものの、醜悪な根性が滲み出ている顔をしている。

 俺の殺意センサーには反応がないため、現地人だろうと推測ができる。

 今は俺に対する恐怖で涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっているがな。

 

「……なかなか見目麗しい顔をしていますね。なるほど、レジスタンスの彼が言っていたことは本当のようですね」

 

 樹は納得したように答える。

 

「では、このカレクが質問しましょう」

「わかりました。カレクさんにお任せしましょう。僕とカレクさん、それに宗介さんは話を聞いて、お二人は女性メンバーがその惨たらしい死体を見ないように隠してください」

「「はっ! イツキ様!」」

 

 燻製も、樹の指示には素直に従うらしい。

 燻製は俺を睨んでいたが、知らんな。

 

「では、カレク様がお前に質問する。所属と名前を明かせ」

「お、おおお、俺はマリティナ聖王国騎士団、第2奴隷区の管理を任されている、ライシャン=エードルド先任曹長だ! こここ、殺さないでくれ!」

 

 先任曹長……騎士団を名乗っているけどどちらかと言うと軍じゃないかなと思う。

 確か、アメリカの軍位だっけか。

 

「では、お前の役目は何だ?」

「ここ、この地に、マリティナ様に刃向かうレジスタンスの根城の一つがあると聞き、哨戒していたんだ! あと、怪しい馬車が2台やって来ると言う情報を聞いて、レジスタンスへの協力者がやってきたと思い、これを殲滅する任務も仰せつかっている!」

 

 なるほどね。

 この地区を統括しているお偉いさんがいると。

 と言うか、レジスタンスはかなり追い詰められている様子である。

 これは確かに外国に亡命して態勢を立て直す必要がありそうであった。

 まあ、俺はあまりにも対人特化し過ぎてわからないかもしれないが、騎士団の技量はかなり高い方である。

 

「キサマらのレベルは?」

「お、俺は63、他は平均すると37だ!」

 

 この隊長、俺の方をチラチラと見て来る。

 しかし、燻製よりもレベルが低いのに苦戦するって……。

 ちなみに、この時点で燻製のレベルは68だったりする。

 さっきレベルが上がった俺と同じレベルなのは驚きである。

 なるほど、人間の雑魚はクラスアップ前だが、階級が付いている連中はクラスアップ済みなのか。

 そりゃ、攻略難易度も上がるはずである。

 

 他にも色々と内部情勢やわかっているレジスタンスの居場所、捕らえられたレジスタンスの収容所などを色々聞き出し、俺はその場に放置してやった。

 両手両足無しでどうやって生きていくんだろうな? 

 俺が置いていくと指示した時の顔は見ものだった。

 

「ソースケ、やりすぎ!」

 

 と、レイファには怒られたが、俺は反省する気は毛頭なかった。

 

 そして、ようやく俺たちはレジスタンスのアジトに到着した。

 道中の魔物はレベルが高い上に気性が荒く、かなり頻繁に襲って来る。

 中にはレベル76の魔物もおり、コイツはさすがに手抜きの勇者様でも手を抜かずに討伐するハメになったがな。

 

「ここが我々のアジトになります」

 

 アジトは、多数の男性達と美女、老人子供が居た。

 なんでも、老人は不細工筆頭のため毎月処刑されているそうだ。

 そして、この地区で美女ということは、案の定ガリガリに痩せていた。

 どうやら、マリティナが実権を握っておよそ3年でここまでなってしまったらしい。

 恐ろしいディストピアだな。

 

「冒険者様、まずは我々のリーダーに会ってください」

 

 瘦せぎすの男に案内されると、リーダーらしい精悍な男を紹介された。

 

「おお、ヴェドガー! 生きて戻ったか!」

「ええ、ラインハルトさん。こちらの冒険者様にメルロマルクで助けて頂きました」

「ふむ、冒険者様方、ヴェドガーを助けていただきありがとうございます」

 

 ラインハルトは礼儀正しく礼をする。

 

「いえ、こちらも偶然でした。助かって良かったですよ」

 

 樹が柔和な感じで対応する。

 燻製ではこう言う対応はできないから仕方がないだろう。

 燻製が話を切り出す。

 

「でだ、この男から助けてほしいと依頼されたわけだが、理由を話すがいいぞ」

 

 燻製の偉そうな物言いに、ラインハルトはヴェドガー……瘦せぎすの男の方を向く。ヴェドガーはうなづいた。

 

「彼らは強力な冒険者です。あのメルロマルクでクラスアップができるほど、信頼の置ける冒険者です!」

「ふむ……なるほど。これは弓の勇者様の天啓かも知れないな!」

 

 ふと、飾りを見ると弓をモチーフにした飾りが備え付けられている。

 この国は弓教なのかもしれないな。

 樹はその言葉に、ギクリと反応するが、バレたわけではなかったという事を理解してか、少しホッとした様子である。

 

「しかし、弓の勇者様は召喚されたという話だ。詳しい国際情勢はそこまで入っては来ないが、彼らはきっと弓の勇者様が使わした方々なのかもしれないな!」

 

 ラインハルトの言葉に、この場の雰囲気が高揚した気がする。

 だが、樹は相変わらず将軍様プレイを続行する様子であった。

 

「どちらにせよ、ワシ達が助けることには変わらんだろう。早く話せ」

「おおっと、そうだった。すまないな」

 

 ラインハルトは気を取り直すと、依頼内容を説明しだす。

 

「道中で見え来た通り、この国はもうおしまいだ。我々は奴隷のように虐げられるか、処刑されるかの道しか残っていない」

 

 ラインハルトは絶望するような表情でそう断言した。

 それほど、この国は状況が逼迫しているのだろう。

 

「最初はそんな悪政から人々を救うべく立ち上がった我らレジスタンスだったが、我々のリーダーであるジャンヌ=ダルクさんが1月前に捕まってしまい、その後は成すすべなく我々レジスタンスは壊滅の危機に陥ったわけだ」

 

 ジャンヌ=ダルクとはまた史実の人間を引っ張ってきたな。

 まあ、ビックネームだし、引き合いに出してもあり得る話だろう。

 

「なるほどな。そのジャンヌ=ダルクとか言う輩を助け出せばいいのだろう? あいた!」

 

 と、燻製が突然そんな事を言い出す。

 それに対して樹は燻製の足を踏んづける。

 

「ええっと、僕たちに何か手伝えることはありますか?」

 

 どうやら、ジャンヌ救出ルートは樹にとってうまあじでは無いらしい。

 

「え、ええ。そりゃもう助けてもらえるならありがたいですが……。その前に一度国外に出て、装備を整えてから攻めた方が良いかと思います。なんと言っても、ジャンヌさんはコロシアムに捕らえられていますから」

 

 コロシアム……ねぇ。

 俺は樹に囁いた。

 

「もしかして、バッドエンドルートってのはコロシアムに行くことなのか?」

「はい、ジャンヌ救出ルートはバッドエンドルートですね。救出しに行くと、ジャンヌは処刑されてしまい、そのせいで最悪の魔物が召喚されてしまいます」

「……なるほどね」

「いずれ救助しますが、今安直に向かうべきではありません。それに、イベントが発生しておよそ3日目に救助に向かうのがベストな選択肢ですよ」

 

 まあ、ゲーム知識があるならそれに従った方が良いのかもしれない。

 それに、お陰でこのイベントのシナリオが掴めた。

 囚われのお姫様と言うのはジャンヌの事だろう。

 彼女をうまく救助して、レジスタンスの革命を成功させるのがこのシナリオの趣旨だ。

 要するに、このシナリオの主人公はジャンヌなのだ。

 ゲームの主人公はそれこそ、影の立役者の立ち位置なのだろう。

 なるほどなー。

 PSO2でそれやって炎上した気がするんだが、特にEP4みたいな感じで。

 

「と言うわけで、我々から依頼したいのは、国境の突破の手助けです。正直、老人や子供の方が多く、このままでは逃げられなくて……」

 

 樹がチラリと見ると、燻製はうなづいた。

 

「良かろう。では、我々がお前達を守ってやるとしよう。感謝するといいぞ! はっはっは!」

 

 なんでコイツいちいち偉そうなんだろうな。

 俺は呆れるしかなかった。




影の立役者で、主人公と強力な敵に対して、協力して倒す展開って燃えるよね。
そんなイメージのシナリオです。

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