波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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【高難易度】カラテノタツジン

 そうと決まれば話は早い。

 俺たち冒険者は遊撃の護衛として、男連中とともにメルロマルクへと女性や子供達を護送することになった。

 護送には、彼らが育てていた馬を用いることになる。

 ラヴァイトは俺を乗せて移動し、他は馬に乗って戦うことになった。

 ちなみに、燻製は馬に乗ったところ馬が鎧の重さに耐えきれなかったため、馬車で待機することになった。

 

「やっぱり、ちゃんと軍用に育てた馬じゃないと重くて耐えられないみたいだねぇ」

 

 と、馬を育てていたおばさんは断言した。

 しかし、馬なんかよくもまあ育てられたものだと思っていると、この時のために育てていたらしく、人間よりも優先して餌を与えていたようだ。

 人間は雑食だからね。

 全員が栄養失調状態のため、俺ら以外には全員にデバフがかかっている状態であった。

 

 さて、日を改めずにすぐにアルマランデ撤退戦をする理由であるが、これは既にこの場所が敵に割れていると推測したためである。

 俺たちが到着するまでに時間がかなりあったはずだし、レジスタンスに協力する冒険者を殲滅すると言う事は、レジスタンスすらも飼い殺しにしていると考えるのが妥当だろう。

 マリティナはこの状況をわざと作り出して遊んでいるのだ。

 

 ならば、冒険者と合流したことが知れ渡れば、すぐに此処は殲滅させられるだろう。

 だからこそ、俺が皆殺しした事で情報の遅延が発生している現状で逃亡を即日実施した方がいいのは自明の理であった。

 

「では、行くぞ!」

「「「おおーっ!!」」」

 

 ラインハルトさんの合図とともに、俺たちは出発した。

 実際、樹もゲームでの最適解がその通りだったため、文句を言ってこなかった。

 

「あれ、NPCがこんな判断しましたっけ?」

 

 と疑問に思っていたがな。

 

「ラヴァイト!」

「グアー!!」

 

 俺は先行して、ラヴァイトと共に魔物を潰していた。

 魔物は進行の邪魔になるし、馬が怯んでしまうからな。

 しばらく進んだところで、俺は殺気を感じて止めるように促した。

 

「止まれ! 敵がいるぞ!」

 

 国境線には、豪華な装飾具を装備した騎竜にまたがるマリティナ聖王国騎士団が待ち構えていた。

 相変わらず紫色のフルプレートを装備している。

 俺の声に、樹やイツキ教の連中がやってくる。

 ちなみにレイファは怪我をしている人達を見ている。

 パーティなので、俺が殺人するとその経験値がレイファやラヴァイトにも入るんだよね。

 だからか、レイファのレベルは24まで上がっていたりする。

 

「来たな、レジスタンスども。よくも俺の部下を皆殺しにしてくれたな!」

 

 この軍団の中で一番偉そうな奴が騎乗槍を構えてそう言う。

 優しい俺は殺した理由をちゃんと教えてやる。

 

「ふん、俺を殺しに来るならば、殺される覚悟を持ってこいよ」

「キサマ……!」

「どうやら、敵のようですね。皆さん、懲らしめてあげなさい」

「「「はい、イツキ様の言う通り!」」」

 

 うーん、やはり宗教だよなぁ。

 しかも、本物の正義を信じている奴は此処にはいないというオチが付いている。

 

 今回は殺すなと言う指令が出ているので、俺は直槍モードで戦うことにする。

 と言っても、直槍モードですら殺意は高いため、トドメを刺さないように気をつける必要があるが……。

 槍が使い慣れ過ぎていて、基本槍ばっかりで戦っているからなぁ。

 剣の腕もボウガンの腕も磨く必要があるな、これは。

 俺はラヴァイトに乗り、不埒な輩が居ないか見て回る予定だ。

 あの連中のことだ、女子供を人質に取ればいいとでも考えてそうである。

 

「行くぞおおぉぉ!!」

「「おおー!」」

 

 侍の掛け声に合わせて、樹隊が先陣を切った。

 

「グアー!!」

「どうどう、ドラゴンは嫌いかも知れんが、レイファを守るためだ、落ち着け」

「グ、グアグア!」

 

 ラヴァイトは騎竜に反応して興奮しているのを抑える。

 ラヴァイトもやはり、レイファを守ることの方が優先順位が高いようだ。

 俺は集中して周囲の気配を探る。

 すると、案の定何人かで待機しているのがわかる。

 2チーム居るのだろうか? 

 その中に、俺の殺意センサーに反応する奴がいるのもわかる。

 

「ラヴァイト、あっちだ!」

「グア!」

 

 正面は樹達に任せて、俺は隠れている気配を殺しに向かう。

 

「そこだ!」

「グアー!」

 

 俺はラヴァイトから飛び降り、槍で攻撃する。

 

「必殺! 乱れ突き!」

「うわあああああああ!!」

 

 隠れていた奴に命中したらしい。

 流石に防御無視ではないため鎧まで切り裂くことはないが、ダメージは入るようだ。

 

「ラヴァイト、蹴散らせ!」

「グアアアアアア!」

 

 なんだかんだ言って、ラヴァイトのレベルも34にまで上がっているしな。

 俺ほどではないしにしても、雑魚ならばラヴァイトでも蹴散らせる。

 

「うわああああああああ!」

「この鳥、強いぞ!」

 

 俺は、リーダーを相手にする。

 

「おりゃ、はあああ!」

 

 短剣で切り刻む。

 鎧のおかげでダメージが軽減されているみたいであるが、鎧に傷が付く。

 

「ぐぬ、つ、強い!」

 

 相手の剣に合わせて、俺は受け流し、剣を奪い四方投げをかける。

 抵抗したせいか、相手の腕がゴキッと音を立てるが知らないな。

 

「あがあ!」

 

 当身を入れてそのまま後頭部を地面に叩きつける。

 グワンと音がなり、リーダーは手足を痙攣させて気絶した。

 

「ラヴァイト、次だ!」

「グアー!」

 

 俺は駆け寄って来たラヴァイトにまたがり、次の波の尖兵が居るところまで駆け寄る。

 ちょうど、馬車の護衛をしていた連中と戦っているところだった。

 

「うはははは! どけどけ! 女は全て俺様のものだ!」

 

 またもやロクデナシの転生者か。

 悪鬼羅刹しか転生させていないんじゃないだろうか? 

 そいつも、紫の鎧を着ているためわからないが、言動や放っている気は間違いないだろう。

 

「死ねええええええええ!!」

 

 俺は人間無骨+を起動させる。

 そして、首を刎ねる。

 

「あっぶね! 死ぬところだったじゃねぇか!」

「チッ!」

 

 どうやら避けられてしまった。

 

「おお、冒険者様!」

「俺がコイツの相手をするから、お前らはほかの騎士団の連中を抑えててくれ」

「わかりました!」

 

 俺はサクッと指示を出すと、そいつに穂先を向ける。

 

「お前、マリティナ様が言っていた危険人物だな!」

「それは光栄なことだ」

「どっちにせよ、お前みたいな奴は嫌いだ。殺してやんよ」

「やって見やがれ!」

 

 奴と俺の剣が交錯する。

 ギンギンと音を立てて刃と刃がぶつかり合う。

 コイツ……できる! 

 俺の戦い方の特性を理解しているのか、力の流れをちょくちょく変更してくるのだ。

 だから、合気道に技を繋げられず、剣戟となってしまっていた。

 

「俺は天才だからな! お前の身のこなしから、サブミッションがメインだと言うことはお見通しだ!」

「チッ!」

 

 俺と奴が数度打ち合う数度打ち合う。それだけで、コイツが何かしらの武術の達人では無いかと推測できた。

 それは、相手もなのか、奴はこう言って来た。

 

「貴様も武術の達人か。俺もそうだ。貴様相手ならば俺様も本気を出せると言うものだ。ふんっ!」

 

 奴は俺を突き飛ばすと、剣を鞘に納めた。

 そして、独特の構えをする。

 

「空手か……!」

 

 猫のように両手を上げて拳を作る。

 空手の構えに似たようなものがあったことを思い出した。

 

「俺の殺人空手で数多くの武術の達人を殺して来たものだ。貴様も俺の殺人空手の前に敗れ去るがいい」

 

 見ればわかる。アイツには武器を使う意味がないだろう。

 だからこそ、俺はクロスボウを装備した。

 ああいう危険な奴には遠距離攻撃が適切だからだ。

 俺が矢を打つと、奴は少ない動作で矢をひらりと回避してしまう。

 俺は走りながら、クロスボウを放つ。

 

「三段撃ち!」

 

 クロスボウから放たれた矢が3つに分かれる。

 魔力で生成された矢だ。

 

「ふんっ!」

 

 奴は矢を拳で払う。

 なんて強さだ! 

 あんな正拳突きを受けたら、内臓破裂どころじゃねぇぞ……! 

 俺は走りながら、クロスボウを打つ速度を上げる。

 奴は矢を払いながら、俺に食らいついてくる。

 

「そうら、もうおしまいか?」

 

 俺はとっさに、右手を出していた。

 それが奴の正拳突きをそらす結果になった。

 いつのまにか近づいた?! 

 俺はクロスボウを腰に下げて、奴の打撃を両手で受け流す。

 うう、ビリビリするぐらい強烈な突きである。

 もし、合気道をやっていなかったらこの時点で詰んでいたのではないだろうかと思うほど、技量が高い。

 

「せい! はぁ!」

「ふっ、ふっ、すぅ」

 

 カウンターで当身を入れるが、余裕で防がれてしまっている。

 俺も全ての突きを受け流しているので、なんとか無傷で済んでいるだけだ。

 

「いいな、お前面白い奴だ。今まで戦った中で強いほうかもしれない」

「それは光栄だな」

 

 だんだん突きの速さが増していく。

 対応できる速さであるが、だんだんキツくなって行く。

 

「スピード上げて行くぜオラあああ!!」

 

 俺は、どうやってこの状況を打破するか、脳みそをフル回転して考えていた。




難易度高めで敵を設置しています。

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