波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず

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【高難易度】コイスルオトメ

 さて、俺たちは馬車でそれぞれ別の地点からアルマランデに再突入する事になった。

 国境線の警備員はレジスタンス側なので、翌日ならば脱出に使った検問所以外は問題なさそうである。

 ボウラルドはなぜ協力してくれるのかという事に関しては、俺はアルマランデの実権を握りたいためだと考えている。

 それ以外にボウラルドには旨味無いしな。

 

 そんな事を考えながら、ラヴァイトの引く馬車に揺られていた。

 すでに国境の突破は完了しており、雑魚の騎士団を蹴散らした後なのは言うまでもない事か。

 

「ソースケさん、でしたっけ?」

「どうした?」

 

 リノアさんが聞いてきたので返事をする。

 

「ソースケさんはどうして、レイファさんと冒険者をやっているんです?」

「……さてな。俺もよくわからない。冒険者を始めたのは食っていくためだったけれどな」

 

 今の俺はただ、運命に翻弄されているだけだ。

 メガヴィッチの意図する物語の改変を行うつもりは毛頭なく、かと言って別に逃げるつもりもない。

 原作のストーリーが俺を逃さないかの様に重要人物と引き合わせてくるし、その中でなぜ、レイファとともに旅をしているのかと言うのは、正直よくわからないのが現状だ。

 逃げる選択肢もあるにはあるが、俺はレジスタンスの連中を見捨てる事出来ないし、マリティナは俺が殺す相手なのだろう。

 どっちにせよ、今のこの現状は俺ではなく、メガヴィッチや他の何かに与えられた試練の様に感じていた。

 

「レイファさんは恋人かしら?」

「家族だな。妹みたいなものだ。レイファがどう考えているかは、無視することにしている」

 

 レイファが俺に対して好意を抱いていることぐらいは、トーシローでもわかる事だ。

 レイファは俺とドラルさん、ペットのラヴァイト以外には敬語を使って話すし、レイファは結構べったりとひっついてくる。

 これで好意がないと言ったら嘘だろう。

 だが、俺はそれを受け止めるべきではない。

 それはレイファの幸せにはならないからだ。

 だから、俺の中では妹と定義している。

 

「無視する事にしているって……」

「俺にも事情があるのさ」

「ふぇぇ、レイファさん可哀想です……」

 

 何故か、ラヴァイトの馬車に乗っているのは、俺とリノアさん、それにリーシアであった。

 現場に到着したら、3班に分けてそれぞれで行動するためであるが、樹は燻製とシーフとレジスタンス、侍は魔法使いと剣士、で、俺はリノアさんとリーシアになった。

 樹曰く、

 

「レイシュナッド収容所の攻略には、班を3つに分ける方が効率がいいです。僕は攻略の要の部分をやりますので、カレクさん、宗介さんそれぞれで重要な役目を負ってもらいます」

 

 という事らしい。

 侍達の役目は、牢獄の解放と収容者の避難誘導だそうだ。

 俺たちは、脱出経路の確保と、看守の抹殺、それに樹の攻略に合わせてとある設備を確保することらしい。

 樹の役目は、時間制限のある収容者の回収と、ボスの討伐だそうだ。

 なんでも、その収容者は時間をオーバーすると処刑されてしまうらしい。

 で、その為にも、俺はとある設備を最速で確保する必要があるそうだ。

 

「宗介さん単独でも構わないかと思いましたけど、道案内にリノアさん、監視の意味合いでもリーシアさんをつけさせていただきますね。他の方だと、いざという時に連携できなさそうな気がしますからね」

「そいつは有難い」

 

 と二つ返事で請け負ったのだった。

 

「でも、ソースケさんが何で賞金首になっているのかわからないですぅ。話してみると、イツキ様と同じように正義感のある方の様に見えますし……」

「確かにね……。逃げる事だって出来たでしょうに、あたしたちを手伝ってくれているし」

「ま、俺はクソ野郎限定だが、冒険者を散々殺してきたからな。それで指名手配されてしまったんだろうな」

 

 それ以外に理由は分からなかった。

 襲ってくる以上は殺す以外にないだろう。

 下手に生かしておくと、後々困るからな。

 

「それに、俺がレジスタンスを手伝うのは、この国を支配している奴が気に食わないからだな。誰かさんと違って、正義感を満たすためではない」

「あはは……」

 

 リーシアは困った様な表情をする。

 

「ああ、あの感じの悪い鎧ね。あたしもあの鎧は好きじゃないわ。あの腐った目は、この国の騎士連中とよく似ているもの」

「ふぇぇぇ。あ、あまりマルドさんの悪口を言わないでください!」

 

 樹はまだ、ちゃんと正義を成そうとしているが、燻製はな。

 人を貶めても悪とも思わない、俺に逆らう奴は皆悪だって思ってそうである。

 樹の場合は片方の意見……ノイジーマイノリティだけを聞いて突撃してしまう、阿呆な連中と同じイメージだが、燻製は意図的にノイジーマイノリティを取り上げて、いう事を聞かなければレッテルを貼って侮辱する奴らと同じだと俺は思っている。

 樹の仲間連中は少なからずそう言う奴らが集まっている様に感じる。

 と言うか、燻製と侍達は仲がいいのだ。

 まるで旧知の仲である様にな。

 類友なのか、よく分からないがな。

 

「あんな奴、かばう必要はないでしょ。ま、強いみたいだし、利用させてもらうけれどもね」

 

 リノアは燻製が強いと思っているみたいだが、とんでもない。

 雑魚中の雑魚だろう。

 陰謀以外に脳細胞を使うつもりがないのだからな。

 

「ふぇぇぇ」

 

 まあ、こっちで組む分には問題ないだろう。

 リーシアはレベル70を超えないとステータスが低いままの雑魚だと言う点に注意をしておけば、問題はない。

 リノアはレベルは38だったりするのはまあ、仕方のない事だろう。

 世の中はクラスアップをすると言うのは相当難しい事なのだから。

 

「そういえば、リノアさんって耳は人間なのに猫の尻尾があると言うことは、半亜人ですか?」

 

 リーシアが指摘して初めて気がついた。

 そう言えば、確かにリノアは耳は人間だが、猫っぽい尻尾がある。

 瞳もよくみると猫っぽい。

 

「そうよ。メルロマルクでは見かけることは少ないかもだけれど、猫の半亜人ね。あたしみたいに人間の耳で、亜人の特徴の尻尾があるなんて、珍しいかもだけれどね」

「シルトヴェルトだと嫌悪される存在ですからね。下手すると、人間よりも扱いが低いとか」

「良く知っているわね。まあ、あたしはアルマランデ出身だし、シルトヴェルトには行ったことないから分からないけれどね。それに……」

 

 リノアはそう言うと、尻尾をスカートの中に隠す。

 

「こうすれば人間にしか見えないのだから、普通に暮らす分には問題ないわ」

 

 まあ、見た目で判断している以上はそうなるだろう。

 

「でも、リノアさんはなんでレジスタンスに参加されているんですか?」

「……あたしの生まれ故郷だからよ。アルマランデはあたしの様な半亜人の受け皿になってくれた国だしね」

 

 戦う理由は人それぞれである。

 故郷を取り戻したいと戦う人たちも俺の世界でも多くいたはずだ。

 東ティモールとか、チベットとかはそう言うイメージがある。

 

「リーシアちゃんは、なんであいつらの仲間をやっているの? リーシアちゃんみたいな純粋な子が所属する様なパーティじゃないと思うんだけどな、あたしは」

「ふぇぇ、私はその……イツキ様に助けていただいたので……その……」

 

 それだけで、何かを察するリノアさん。

 

「なるほどね、あの弓を持って戦う冒険者ね。……大変な道よね。進展がある事を祈るわ」

「あ、ありがとうございますぅ……」

 

 リノアはリーシアに同情する目線で肩をポンと叩いた。

 

「少し外を見る」

 

 俺はガールズトークに耐えられなくなり、外の様子を見ることにした。

 

「わかったわ」

「行ってらっしゃいですぅ」

 

 俺が出ると、ラヴァイトが退屈そうに馬車の後を追って馬車を引いているところだった。

 今は競争じゃないしな。

 

「ラヴァイト、退屈か?」

「グアー……」

「もうしばらくの辛抱だ。我慢してくれ」

「グアグア」

 

 俺たちは収容所に向かうために、樹の馬車を先頭に移動している感じである。

 しかし、一応森……いや、枯れ木しか無いのだが、森の中を進んでいると退屈であった。

 道なりに進んでいるとはいえ、こうも景色が変わらないと、眠くなってきてしまう。

 出てくる魔物も樹が弓で仕留めてしまうので、うまあじが無かった。

 

 その日は野営をして一晩明かすことになった。

 

 翌日もそんな感じで馬車の旅を過ごしていると、いよいよ異様な建物が見えてきた。

 まるで、某ゲームのドラキュラ城の様な見た目をしている。

 

「あれが、レイシュナッド収容所……!」

 

 リノアの声がしたので、振り返ってみると、苦虫を噛み潰した様な顔をしていた。


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