波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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R-15の内容が含まれるかな?


【高難易度】センニュウ・ソウサ

 レイシュナッド収容所は、まさに悪魔城のそれだった。

 魔王の城っぽい監獄と言ったところか。

 近づいてみると、高い壁に囲まれており、鼠返しまで付いている。

 侵入経路は、正面の入り口しかない徹底ぶりである。

 近場に馬車を止め、俺たちは樹と合流する。

 リーシアは樹の元に戻り、慌てた様子で下っ端作業をする。

 

「樹、これはどうやって入るんだ?」

「もちろん、入り口から入りますよ」

「……囮役をやれって事かよ」

「いえ、この程度の人数ならば、僕がパラライスアローを撃ちます。全員が効果時間中に突入すれば問題ないでしょう」

 

 いや便利だな、勇者スキルってのは。

 俺の使えるのは完全に『技』に分類されるからな。

 俺が使える『技』はソードブレイクができる短剣の技や、合気道を交えた『流水』系統の技、後は槍や弓の技ぐらいなのだが、麻痺や沈黙、毒と言った技は事前に薬を仕込む必要がある。

 

「オーケー、了解だ」

「では、突入準備が出来次第放ちますね」

「おい、リーシア!」

「ふえぇぇ、わかりましたー!」

 

 燻製の指示に従って物品を準備するリーシア。

 俺はポーチの中に今回分の薬品を入れているので問題ないが、他は準備が必要だからな。

 仕方ないので俺も手伝う。

 リーシアが入った馬車に入って、俺はリーシアの作業を見る。

 どうやら今更薬袋の作成らしい。

 自分たちで準備はするつもりはないのだな……。

 

「手伝う」

「ふえぇぇ? これは私の……」

「一人でやって樹を待たせるわけにもいかないだろ。こういうのは数人でやった方が早く終わるってもんだ」

 

 俺はテキパキと薬品の分類と人数分の袋を準備してそれに樹達が準備したものを仕舞う。

 自分の分でよくやるので、もはや慣れたものである。

 

「しかし、本当に学習しねぇな燻製の野郎は。勇者の調合する薬品だけじゃ状態異常対策は万全にはならねぇといつになったら理解するんだ?」

「ふえぇぇ、それ、私が準備しました」

「どっちにしても、リーダーなら準備する様に指示するのが当然だろ。責任者は燻製だから燻製が悪い。下請けするなら注文はちゃんと正確にするのが義務ってもんだろ」

 

 俺の中では燻製は悪だ。

 元の世界にもこういう奴は大量にいたが、実際目の当たりにするとな……。

 樹はもはや忠告を受け入れられる様な精神状態ではないだろうし、無駄だからしないがな。

 

「ふぇぇ……」

「まあ、燻製の奴らには状態異常対策なんて不要だろうから、永遠に買う必要はないがな」

 

 俺は笑いながら、連中のセットを整えてリーシアに袋を渡した。

 

「あ、ありがとうございます」

「さ、さっさと配ってこい。時間が無いからな」

「は、はい!」

 

 リーシアはそう言って各々に回復薬一式を配りに行った。

 

「犯罪者! キサマ、何故リーシアを助けた?」

 

 馬車から出てくると、憤怒の表情の燻製が居たが、知ったことでは無い。

 

「時間短縮だ。相変わらずお前はこんなことやっているんだな」

「リーシアは下っ端だから当然のことだ」

「はっ、良いからサッサと収容所に突入するぞ」

「待て! キサマ!」

 

 声がでかいんだよな。本当に無能な働き者の見本である。

 幸いにして、見張りの兵は気づいていない様であった。

 

「パラライスアロー!」

 

 樹は麻痺の状態異常を引き起こす矢を飛ばす。

 矢は不思議な軌道を描いて、連中に命中し、ドサっと倒れた。

 

「皆さん、行きますよ」

「「「「はい、イツキ様」」」」

「了解です」

 

 各々返事をするが俺はうなづくだけにしておいた。

 樹と俺は麻痺で昏倒している騎士のところに近づくと、鎧を剥ぐ。

 こういう場合は怪しまれない様に敵と同じ格好をするのが定石だ。

 

「パラライスアロー」

 

 詰所の騎士も昏倒させて、俺たちは全員分の鎧を確保する。

 それにしても、剥いた騎士達は全員イケメンであるのがわかる。

 鎧は詰所に設置して、詰所の中に連中を紐で簀巻きにしてぶち込んでおく。

 殺した方が後ぐされなくていいんだけれどなぁ。

 と考える俺はもうダメかもわからんね。

 

「全員着ましたか?」

「ふえぇぇ、結構ぶかぶかですぅ……」

 

 男性用しか鎧がないのだから仕方のない問題である。

 一応、似た背格好の奴の鎧を確保したので(予備の鎧が詰所にあった)、背の一番低いリーシア以外はそこまで動きを阻害しないのだ。

 

「ふん。ではそれぞれ散開して、役目を果たすのだ。我々の正義を示すためにも、タイミングを見誤るなよ?」

 

 燻製の言葉に、全員了承するようにうなづいた。

 そして、各班別れて行動を開始した。

 

 俺たちの達成目標は脱出経路の確保と、看守の抹殺、それに樹の攻略に合わせてとある設備を確保すること。

 脱出経路の確保自体は移動しつつ使えそうな場所を探索すればいいだろう。

 最初にやるべきは、看守の抹殺である。

 これは、奴隷紋の関係だな。

 こういう犯罪者を収容する施設と言うのは、この世界では囚人が反抗しない様に奴隷紋を強制させて、奴隷契約を結んで拘束するのがこの世界の常識だ。

 そのため、奴隷紋の権限を持ている奴全員を皆殺しにする必要がある。

 樹が倒すこの収容所の長官はもちろん、看守連中も全員殺す必要があるのがミソだ。

 権限が残っていたら、この収容所を出た瞬間に死亡と言うのはあり得る話だからだな。

 侍達も、下位の看守を殺す必要があるため、俺たちがやるのは上位の看守の抹殺になる。

 まあ、侍達には魔法使いもいるし、重要人物分の解呪の儀式に必要なものは侍班が持っているので、要人救出は大丈夫だろう。

 

「こっちよ!」

 

 俺はリノアさんの案内に従って、上位看守の抹殺を行うために移動していた。

 もちろん、怪しまれないためにも走ったりはしないがな。

 騎士以外は基本的に素顔を晒して働いているため、奴隷紋オーナーを見分けるのはたやすそうであった。

 ちなみに、今の同行者設定はレイファ、リノア、リーシアとなっている。分隊で分隊リーダーが俺、本隊が樹となっている感じだ。

 しかし、フルフェイスは見えにくいな。もちろん、仮面ライダーの様に見えにくいアクションスーツ程ではなさそうだが、これで戦うのはなかなか難しいだろう。

 頭部は守れるので、安心感はあるが、視界が制限されるのが辛いところだ。

 

「居たわね……。アイツよ。奴隷紋のオーナーは」

 

 騎士に対して偉そうに講釈を垂れているおっさんがいた。

 燻製と同じような顔つきであるのが見て取れる。

 実際、偉いのだろう。

 

「オーケー、アイツね。しかし、よくわかったな」

「レジスタンスに協力してくれる人が居るからね。全員が全員マリティナを信望しているわけじゃないと言うことよ」

 

 まあ、聞く限りだとかなり悲惨な悪政だからな。

 取り立てたやつからマリティナが嫌われていたとしてもおかしくはない。

 だからこそ、レジスタンス達は活動できるのだろうがな。

 ジャンヌはそこまで熱い指示を集めていると言う証左でもある。

 

「なるほどね」

 

 俺はそう言いつつ、通り過ぎる。

 顔がわかれば、後は情報収集を行い行動パターンを把握して、一人のところを暗殺するだけである。

 

「ちょ、なんで見過ごすのよ!」

「今はタイミングが悪いからな。オーナー権限はアイツだけか?」

「そこまでは……」

「正確なことはわからないか。それじゃあまあ、アイツ長官っぽいし、アイツの部屋を見つけて、奴隷紋の管理権限の仕様を確認するのが先だな」

「そうね」

 

 と言うわけで、俺たちは聞き込みをする事にした。

 聞き込みの結果、長官の名前はガーフェル=ライラロック、37歳だと言うことがわかった。

 長年収容所の所長をやっていた人物で、いち早くマリティナに取り入った人物だそうだ。

 確かに所長の顔は豚の様に見える。

 残念ながらイケメンとは言えないだろう。

 レイシュナッド収容所の長官はアッシュ=ランゲトルージュと言うイケメンらしいがな。

 こっちは、樹案件なので無視する。

 で、俺たちは上手く所長の事務室に侵入することができたのだった。

 

「さすが、所長というだけあって豪華な部屋ね」

「ふぇぇぇ。私の実家よりお金持ちな感じですぅ」

 

 実際金を持ってそうだ。

 様々な勲章やトロフィーが並べられており、他にも成金趣味の自分の像があったりと趣味が悪い部屋だ。

 

「ん、なんだね君たちは?」

 

 どうやら、ご在宅であった様である。

 俺は、マリティナ聖王国式の敬礼をして、こう告げた。

 

「はっ! 定時報告の資料を代理でお届けに上がった次第でございます」

「……そうか。ならば、そこの書類入れに入れておきたまえ。ワシは忙しいのでな。ぐふふ……」

 

 何ともまあ、だらしのない声である。

 グポッグポッと音がするのは気のせいではないだろう。

 

「了解しました!」

 

 俺はそう言って、資料を箱に入れる。

 そして、人間無骨+でばっさりと首を刎ねる。

 呆気なく飛ぶ生首。

 一瞬見えた顔は醜く快楽に歪んだ顔であった。

 

「んはぁ、あれ、所長様、どうされ……」

 

 俺は素早く、女の口を塞ぐ。

 目を見開き、叫び声を上げる女。

 口を塞いだおかげで、そこまで大きい叫び声にはならなかったが。

 しかし、美女だしエロい格好をしている。

 

「おい、叫ぶな。助けに来た」

 

 俺はナニを丸出しの首なし死体を蹴り飛ばす。

 

「いいな?」

 

 俺が聴くと、女は首を高速で縦に振る。

 

「いいぞ」

 

 俺がそう言うと、固まったままだったリノアさんとリーシアが動き出す。

 

「ふ、ふぇぇぇぇ……」

「何の躊躇いも無く首を刎ねたわね……」

 

 リーシアは足をガクガクさせており、リノアさんはドン引きした様子だ。

 

「虫けらを殺すのにそんな躊躇いとかあるか? ああ、奴隷の子がいる様だから保護してやってくれ」

「ふぇぇぇ、わかりましたぁ」

 

 リーシアが奴隷の子を保護する。

 目に毒な格好をしているので、あまり見ない様にしよう。

 

「リノア、物色するぞ」

「わかったわ」

 

 俺たちは部屋の物色を始める。

 幸いにして、机の上はあまり血液が飛び散ってはいなかった。

 下腹部に血が入ってたのだろうか? 

 一通り漁っていると、規則マニュアルが出てきた。

 文字が若干異なるため、読み辛い。

 

「リノア、読めるか?」

「ん、任せて」

 

 リノアがマニュアルを読み始める。

 俺はリノアに資料を任せて、色々と部屋を物色し始めるのだった。




所長がナニをしていたのかは、ご想像にお任せします☆

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