漁っていた資料を紙に図としてリノアさんに書き起こしてもらう。
奴隷紋の統括はどうやら、さっき首を刎ねた所長がやっていた様で、下に13人の看守が権限を持っている様だ。
「なるほどな。この13人を殺せば、達成目標の1つが完了するのか」
「そうね。ただ、重要度の高い囚人は長官が直接管理しているみたいね」
「ま、長官は樹に任せれば大丈夫だろう。残りは俺らと侍で処理すれば問題なしか」
まあ、連中なら自分の正義欲を満たすためなら殺しも躊躇わない連中だ。
13人を消すのは問題ないだろう。
俺がそんなことを考えていると、リノアさんが呼び名に対して呆れて言ってきた。
「サムライって……。あなた、結構変なあだ名付けて呼ぶのね」
「見たまんまだろ? 俺は奴らとは馴れ合うつもりはないからな」
「あー……。まあ、鎧のマルドとの様子を見ている限り、仲間だとは思っていなかったけれど、敵対関係なんだ」
「そういう事。事情があって殺せないが、その事情がなければ俺は全員殺すだろう程度には嫌っている奴らだ」
「……ソースケがそう言うって事は、そうなんでしょうね」
やっぱりドン引きするリノアさん。
虫を殺すのと違いがわからなくなっている俺としては、逆に引かれる方が理解ができない。
やはり、俺はすでに狂っているのだろう。
「ソースケさん、この子はどうしますか?」
リーシアが俺に聞いてきた。
目に毒すぎる格好をした美少女だ。
Fカップはある形の良い乳、スタイルは良く、性奴隷目的のせいか、食事とかは所長が気を配っていたのだろう、ムチムチな感じである。
それをスリリングショットで隠しつつ、腰にはシースルーのスカートを履いていると言った感じの服装である。
あー、ダメだエロすぎる。
顔は、可愛い系の美女だし、うーん、エロ漫画の見過ぎレベルである。
俺はすぐに顔をそらす。
「処遇はリーシアに任せる。とりあえず、その格好をなんとかしてくれ……」
忙しすぎて禁欲生活が長引いている俺としては、非常に困る。
と言うわけで、その奴隷の子に体が見えない様にローブをまとってもらう。
「そ、その、ありがとうございました」
「まだ解放されていないだろう? とりあえず、この部屋からアンタを連れて脱出する必要があるな」
「そうね。ただ、この服だとカレクたちに引き渡したらマズイことになりそうなのが問題よね」
まさか、性奴隷と一緒にいるとは思わないもんな。
「で、アナタはなんて言うの?」
「アーシャです。私は美女だからという理由で投獄されました」
「なるほど」
マリティナの被害者であった。
「それから、所長様や他の方にご奉仕をする事を条件に生かされ続けている感じです」
「……」
なるほどな。
アーシャは性処理係として使われ続けていたのか。
リノアさんとリーシアは怒りで震えていた。
「ソースケさん、私、許せません!」
「そうよ! 到底許しちゃいけないわ!」
しかし、女王が治めているはずなのにこの始末なのか。
それもなんだかなといった感じである。
「私の他にも、そういう事をして生かしてもらっている方が居ます。その方々も助けてもらえないでしょうか?」
「もちろんよ! ねぇ、ソースケ!」
「助けますよ! ソースケさん!」
力強い目を俺に向けてくる二人。
これは、仕方ないかもしれなかった。
「わかってる。だが、優先順位はわかっているよな?」
「ええ、看守と言わず、皆殺しにしちゃいましょう!」
「ダメです! ちゃんと国を正しく戻してから、罪を償わせましょう! これは悪です!」
「どっちでも良いが、リノア、国を取り戻すのが先だ。殺すのは最小限にした方がよさそうだぞ」
俺から注意すると、何故かお前がいうなという目線で俺を見るリノアさん。
俺は一応、必要がなきゃ殺さないからね?!
口封じとかが有効だと思えば躊躇いなど無いが。
「あ、ありがとうございます」
何故かアーシャはギュッと俺を抱きしめてきた。
鎧を着込んでいるためあんまり感じないけどね。
「はいはい、それじゃあ長居すると怪しまれるからな。とりあえず、看守連中13人の連中を殺すためにも、探索を再開するぞ」
「「おおー!」」
俺たちは兜を再び被り、アーシャを連れて探索を再開した。
普段からこの際どい格好を強制されているらしく、ローブを脱がせて連れまわすことになったのは、なかなかに辛い。
連れ回していると、アーシャは身体を触られまくるし、その度にリノアさんとリーシアが怒るため、なだめるのに苦労した。
だが、その甲斐あって、情報の収集が完了する。
アーシャを連れて何故か気苦労が増えた気がするな。
それほど、女子の怒りは怖いという事だろう。
さて、アーシャには一度待機してもらうことにする。
何処にと言うと、性奴隷の女性たちが監禁されている牢屋にだ。
リノアさんとリーシアは反対したが、やはりアーシャがいると足手まといなのだ。
「ダメよ! そんなの!」
「いや、アーシャがいる事によってお前らが暴走するからなんだが? それに、木は森に隠した方がいいだろう?」
「うぐ、それを言われると……」
リノアは言葉に詰まる。
リノア達の暴走で、予定より時間が押しているのが現状である。
「私は大丈夫です。それよりも、この国を取り戻すために頑張っている皆さんの邪魔になりたくないですし」
「アーシャちゃん……」
既に3人には友情が出来上がっていた。
美しい友情である。
「それじゃ、行くぞ」
と言うわけで、俺たちは性奴隷を収容している牢屋に向かう。
到着早々、俺は見張りに話しかける。
「所長から、この子を返してくるように言われた。開けてもらえないか?」
「ああ、構わないぞ。AD01203だな。鍵はこれを使ってくれ」
俺は牢屋の鍵を受け取る。
「ありがとうな」
「仕事だしな。俺も遊びたいが、お偉いさん以外はお金払わないと使えないんだよね。俺も偉くなりたいものだぜ」
「はは、ご愁傷様」
俺はそんな軽い会話をしつつ、中に入る。
俺の会話に憤慨するリノア。
「何よ! なんで文句の一つも言わないのよ!」
「リノア、お前ここに何しに来たの?」
「う……」
俺に言われて言葉が詰まるリノア。
全く、優先順位を考えてほしいものである。
「さて、AD01203だったか」
しかし、このフロアは目に毒な光景が広がっていた。
個別に檻に入れられているが、肌色が非常に多い部屋だった。
ご無沙汰なせいで童貞みたいな反応をしてしまう俺自身に悲しくなる。
「ここですね」
リーシアの指摘に、俺は番号を確認する。
「それじゃ、アーシャはここで待機だ。必ず助けるから、大人しく待っているんだぞ」
「はい、ソースケ様」
ゾッとした。
そう言うのはやめてほしい。
「ソースケで良い。とにかく、事が終わったら解放しに向かうから、大人しくしておけよ」
「はい!」
あー、クソ。
全くもってやれやれである。
アーシャが大人しく牢に入ったのを見届けて、俺たちはこの場を離れる事にした。
これから血生臭い暗殺の開始である。
それだと言うのに、俺はすっかり毒気を抜かれてしまった気分だった。