波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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4つの武器

 武器屋はどうやら亜人のルーモ種と呼ばれる種族が営んでいた。

 イミアの叔父、トゥーリナだっけ? その人がどうやら営んでいるらしい。

 まだ、波が起こる前みたいだし、そう言うこともあるだろう。

 やり直しでも、ルーモ種はメルロマルクのセーアエット領にいた描写があるしね。

 

「いらっしゃい」

「すまないが、この坊主の武器を注文したい」

 

 ドラルさんはそう言って俺を指名する。

 

「ん? お前さんの斧じゃないのかい?」

「ああ、あの斧はまだまだ現役だ。買い替える必要は無いからな」

「そうか……。まあ、木を切り倒すだけなら大丈夫だろう」

 

 ルーモ種の鍛冶屋は俺を見る。

 

「ん? その少年は……?」

「ああ、拾った。勇者では無いから気にしないで構わない」

「いや、普通気になるだろう。人間だから奴隷では無いみたいだがな」

 

 やれやれと言ったジェスチャーをして、ルーモ種の鍛冶屋は俺にこう言った。

 

「それじゃあ、手を見せてくれないかな?」

「手?」

「ああ、手を見れば、どう言う武器が必要かはわかる」

「そういうものなの?」

「……」

 

 メルロマルク城下町の武器屋の親父さんと同じ技量を持っていたはずである。

 なので、俺は素直に手を見せた。

 

「ふんふん、なるほど。獲物は剣と槍、弓を使っているのか」

「ああ、コイツにあった武器を見繕ってもらえないかと思ってな」

「なるほど。と言っても、彼は4種類の武器を同時に扱うことに長けているんじゃ無いのか? 得意な武器と言うのは無いように思える」

 

 すごいな。そう言うのまでわかるのか。

 

「盾……は、この国だと嫌がられるだろうから、ドラルと同じく斧でも持ってみたらどうだ?」

「いや、流石に重くなりすぎないか……?」

「ふーむ、だったら、小手なんかはどうだ? ごちゃごちゃしている分、自分を守ることには弱いだろうからね。一撃必殺の斧か、隙を埋める小手のどちらかをお勧めするよ」

 

 俺は少し考える。

 バックラーみたいな盾は欲しいとは思っていた。

 ディルムットでは無いが、俺は剣と槍の二槍流で戦っている。距離が空けば弓で攻撃すると言ったスタイルだ。

 中近距離をカバーでき、遠距離も対応できるスタイルだ。俺は何故かこの戦い方がしっくりきている。

 普通では、こんなごちゃまぜな武器の戦い方は隙ができて扱いきれないのにである。

 

「じゃあ、小手で頼む」

「はいよ。それじゃ、小手のサイズを見繕うから、こっちにきてくれ」

 

 と、ルーモ種の鍛冶屋は俺の手の長さを計り、ちょうどいいサイズの小手を渡してくれた。

 ガントレッドと言えばいいのかな? 

 思ったよりも軽くて使いやすそうである。

 

「うん、なんかすごくしっくりきた」

 

 すると、左下に流れているログにメッセージが流れる。

 

 4つの武器を装備した事による装備ボーナス!

 

 ステータス魔法を見てみると4つの武器を装備した事によるステータスボーナスが付与されていた。

 どうやら、これがあの性悪女神から無理やり渡されたチートのようである。

 

「やっぱりね。君は武器の数が重要だと思ったんだ。もちろん、これらの武器は君のレベルに合わせているがね」

 

 そんな事までわかるのは、素直に感心せざるを得ない。

 

「ありがとう! 助かる」

「いえいえ。お代はドラルから貰っているから気にする必要は無いさ」

 

 しかし、武器も装備感も、4つも武器をてんこ盛りにしているのにしっくりくる。

 自分のポジションが正しい位置に収まったかのようなジャストフィット感とも言うべきだろうか。

 これは神を僭称する者から受けた呪いなのかもしれないがな。

 

「後は、防具だな。鎧は鎖帷子で大丈夫か? 皮の鎧よりは防御力があるからな」

「ああ、多分大丈夫だと思う」

 

 俺は剣を腰に収め、弓と槍を背中に背負う。

 ある意味三勇者を統合したと言った感じである。

 

「ま、これで坊主も初心者冒険者に見えるな」

「ソースケカッコいいよ!」

「へへっ、ありがとう」

 

 とは言え、しっくり来ると言っても使い慣れねば意味はない。

 魔物を倒す仕事の最中に武器が足りない気がして追加装備していた形ではあったが、クソ女神の呪いのせいだろうな。

 別に俺は勇者の武器を奪うつもりはない。

 奪えば話の本筋が変わるし、七星武器……この世界の眷属器を奪えば確実にタクトに殺されるからな。

 それに、俺をメルロマルクに転移させたクソ女神の思惑も図らなければならないだろう。

 ヴィッチから、メルロマルクの三勇教がメルロマルクで勇者召喚の儀式を行うと言うのは伝わっているだろう事は想像に難くない。

 と、考えるならば、俺の役目は四聖武器の簒奪なのだろう。

 4つも勇者武器を装備できると言う事から考えれば、自然とそこに行き着く。

 ならば、クソ女神の思惑を潰すならば、俺はメルロマルクで転生者狩りを行えば、筋書き通りになるはずだ。

 と、考えて思考を止める。

 

「坊主、そろそろ買取商のところに向かうぞ」

「ああ、わかった」

 

 俺は、自分が何のためにメルロマルクに転移させられたのか、与えられた力の目的は何なのかを考えながら、ドラルさんに着いていった。




宗介は4つの武器を装備するとステータスボーナスを得られます。
単体で装備して戦っても、何かしっくりきません。
また、本来召喚するべき波の尖兵代わりに転移させられているので、実は制約自体は重めです。

菊池宗介の辿る運命はどうする?

  • 七星武器の勇者を襲い、タクトに殺される
  • 七星武器に選定されて、タクトに殺される
  • 異世界の眷属器入手
  • 眷属器の選定を拒み、剣、槍、弓で頑張る

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