唖然としていても仕方ない。
とりあえず、その要人と話す事にした。
髪の毛がボーボーの男性がいた。
「あんたが、レジスタンスの要人か?」
「え、ええ。私はジル、ジル=ドゥレイと言います。助けていただき感謝致します」
ジル・ド・レェか……。
登場人物はオルレアンで、この国はガルバディアかよと突っ込みたくなるな。
いや、例えやすいから良いけどさ。
「この方は、元騎士団の中将さんで、レジスタンスに協力してくださっている騎士団の統率を行なっていた方よ。ジル中将、お久しぶりです」
「ええ、リノアさんもご健勝のようで何よりです。事情はイツキさんから聞いています」
なるほどね。
リノアが信用していると言うことは、信用できる奴なのだろう。
それに、重要参考人として捉えられていたのだ。
あと、『イツキさん』と言ったと言うことは、樹は身分を隠したままらしい。
「他に重要参考人として捉えられている奴は居ないのか?」
「他は、処刑されたり、コロシアムに連れて行かれたりしました。我らがジャンヌ様も、コロシアムに10日ほど前に連れていかれています」
と言うことは、ここで助けるべきはジル中将のみと言うことだろう。
「了解だ。今は囚人達が収容所内で暴れまわっている。その騒ぎに乗じてここを脱出するぞ。逃走経路は確保してあるから、俺たちについてきてほしい」
「わかりました。えーっと……」
「ああ、俺は菊池宗介だ。一応冒険者だ」
俺が名乗ると、ジル中将は驚きの声を上げる。
「ええ??! 隣国で指名手配されている《首刈りの》ソースケですか?!」
やっぱり、俺の悪名は轟いているらしい。
「あー、まあ、そうだ。お前らの味方だから、心配しなくても良いぞ」
「こ、これは確かに頼もしいですね……」
ジル中将の驚き方に、リノアが納得していた。
「なるほど、ソースケは《首刈りの》ソースケだったわけね。ならあの強さは納得できるわ」
リーシアはわかっているせいか、驚きはない。
「ま、そう言うことだ。訳あってお前達に協力している」
俺が説明すると、訝しむような目で俺を見る。
そんなに疑われても困るのだがな……。
不意に視界の隅でカニが動いた気配がした。
「皆さん、撤退しますよ!」
樹が急にそう指示をしつつ、逃亡を始める。
それに燻製、シーフが続く。
他の連中は訳がわからず、とりあえず樹の後をついて行く。
俺はふと振り返ると、カニのHPバーが回復している事に気付いた。
「なっ?!」
俺を
そして、部屋の壁をぶち破って追いかけてくる。
ミサイル基地の追いかけっこイベントじゃねぇか!
「とりあえず、逃げます! 道中遭遇したら撃退して機能停止させます!」
「わ、わかりました! イツキ様!」
「なんだ! あのゴーレムは?! もう倒したのは3度目だと言うのに!」
「ふえぇぇぇ!! おそらく再生機能があるゴーレムですぅ!」
慌てふためく樹組。
「きゃああああ! ちょっと、怖いんだけど! ソースケ、なんとかして!」
「ひええええええ?!?!」
「あれは重要な囚人が逃亡した時に確実に殺すためのゴーレムです! 急いで逃げてください!」
レジスタンス側も慌てている。
流石に、巨大なカニが追っかけてきているせいか、騎士達も囚人達も逃げる。
「うわああああああ!」
「ブラッド・ウィドウが出ているぞ! 皆避けろおおおお!!」
「ぎゃああああああああ!!」
避けきれずに跳ねられる騎士や囚人達。
俺としてはまさにFF8をリアルで体験している気分だ。
と、カニが足に力を貯める。そして、飛んだ。
「飛んだ?!」
天井を破壊して、カニは俺たちの進行方向に着地する。
「戦闘です!」
樹が立ち止まり、弓を構える。
カニがバンバンと、両脇に装備された銃から鉛玉を飛ばす。
燻製に命中して、情けない悲鳴をあげた。
鉛玉って?!
「おい、銃あるのかよ!」
「アレはフォーブレイで開発されたゴーレムです!」
「なるほどな!」
ジル中将の解説に納得する。
アレは、おそらくタクトの野郎が開発した兵器の一つなのだろう。
何故、カニかはわからないがな。
俺は前に出て、前衛をする。
先ほどの銃で撃たれた燻製が悶絶していた。
「痛いいいいいいいいいいいい!!」
ツメが燻製に迫るのを、俺は槍で受け流す。
「ツヴァイト・サンダーショット!」
リーシアが魔法を放つ。
サンダーショットはさすがに効きがいい。
「たああああ!」
リノアがブーメランで殴る。
バババババババババっとリノアに向かって音を立てて、銃が放たれる。
え、連射できるの?!
「複式連射砲ですね。まさか実装されているとは……」
「ガトリングガン?!」
「人間が扱っても、大した威力になりませんが、強いゴーレムが使うとここまで脅威になるのですね」
「ふえぇぇ……。ジル中将って物知りなんですね」
リーシアが感心した声を上げるが、感心している場合ではなかった。
ガシッとレジスタンスの人が掴まれる。
そして、口の部分に付いているヤバそうな装置でガリガリやり始めた。
「ぎゃあああああああああ!!!」
「やばい!」
俺は槍を十卦モードにして防御無視を発動させて、ツメと口元を攻撃する。
ダメージを負ったせいか取り落としたが、攻撃力が足りなかったため切断できなかった。
俺は落下したレジスタンスを掴んで、後方に投げ飛ばす。
「酷い!」
「うぅ、削れてる……!」
「ファスト・ヒール!」
後ろから阿鼻叫喚が聞こえるが、それどころではない。
なんて凶悪な性能のカニだろうか!
俺は捕獲されないように回避しつつ、攻撃を受け流し、ガトリングを回避する。
不意に目が赤く煌めいた。
「ジル中将!」
「任せてください!」
樹がジル中将を蹴ると同時に、カニからレーザーが発射された。
「ぎゃあああああ!!」
遠くで断末魔が聞こえる。
見ると、騎士の一人に命中して穴が開いていた。
おい、こいつのレベルはどうなってやがる!
レベル80行っているんじゃないのか?!
「サンダーアロー!」
樹の雷を纏った矢が命中して、バリバリと電流が走る。
「必殺! 乱れ突き!」
俺は本体に突きのラッシュを放って、ダメージを与える。
直槍モードでもダメージは通るので、レベル60ぐらいか?
「チッ!」
俺は目の部分が赤く輝くのを見て、飛びのく。
レーザー照射は発生がわかりやすいので回避はそこまで難しくない。
レーザー着弾位置を見ると、当たった部分の床が溶けて穴が開いている。
「リノア! 目を狙え!」
「任せて!」
リノアが投げたブーメランがレーザー発車用の目向かって飛ぶ。
しかし、ツメでブーメランを弾き返した。
このカニ、意外に頭いいぞ!
「イーグルピアシングショット!」
樹の放った矢が、鷹の形を象る。
web版でしか披露しなかった、防御貫通の矢である。
カニはツメで防御するが、それを貫通して目に直撃した。
パアンと目が破裂する。
「さすがイツキ様!」
感銘を受けるシーフ。
だが、あと一本レーザーを発射する目が残っている。
「必殺! 疾風突き!」
俺は飛び上がり、技を放つ。
超光速で放つ突きで、レーザー発射の目を潰す。
「ぬおおおおお!」
ダメージから復活した燻製がダメージを与えて、ようやくカニのHPが0になった。
またもや経験値を取得できなかった。
「機能停止した今のうちに逃げますよ!」
「わかりました!」
俺たちは再度、カニから逃亡する。
もちろん、カニは復活して俺たちを追いかけ始めたのは言うまでもなかった。
FF8の要素を色々と混ぜてますよ。
ミサイル基地、ドリル収容所にドールの追いかけっこイベントですね。
次回で決着かな?