それは少女の決意だった。
突如発生した悪の王女マリティナに呼応するかのように、ひとりの女性が立ち上がったのだ。
叛逆の狼煙を上げた、幼い少女はアルマランデ小王国の国旗と、決意を秘めた剣を腰に携えて戦った。
果たして、その先に待ち受けるのが死であったとしても、少女は叛逆の旗を降ろすことはなかったのだ!
例えそれが、悪虐の女王を楽しませるためだけにあるコロシアムで、自分よりもレベルの高い魔物と戦うことになったとしても、彼女は決して旗を降ろすことはなかった。
すでに体はボロボロで、満身創痍の身でありながらも、彼女は民草のために、旗を掲げ続けていた。
翌日、俺たちはコロシアムのあるセヌティスに到着していた。
すでに道中でラインハルトさん達と合流は完了していた。
制欲女がラヴァイトの馬車に居たのは、残念ながら気のせいではなかった。
アーシャ曰く、
「私はこれでも元影です。仮でアーシャと名乗っていますが、私には本名はありませんよ」
「だからなんだ」
「ソースケ様のお役に立つこと請け合いです!」
「いや、要らないから!」
「もちろん、夜のお相手だけでも構いませんよ!」
「擦り寄ってくんな!」
という事らしい。
正直、この上なく邪魔である。
肉食系女子は俺は好きではないのだ。
特に何かされたわけでもないけれどもな!
今は、リノアが引き剥がしてくれているので非常に助かる。
「ここが、コロシアムのある街ねぇ」
俺はセヌティスの入り口を見てそう感じた。
何というか、悪趣味な街並みである。
レジスタンス部隊は潜入するために、先行部隊を残して近くの村で待機しているのだ。
樹を始めとした冒険者に、ラインハルトさんの小隊と人数が多くなりすぎないようにしている。
樹組はリーシア以外でパーティを組んでおり、リーシアは俺の方に派遣されていた。
俺の方はレジスタンスの男とリノア、性欲女にリーシアと言うなかなかにカオスなメンバー構成になってしまった。
ラインハルトさん達も5人のメンバーで情報収集を行う様子である。
リーシア見事に厄介払いされちゃってるよなぁ……。
リーシアには申し訳ない感じだ。
「ふぇぇ、イツキ様に信頼されている証です! 私、頑張ります!」
とは言っていたが、やはり心配ではある。
ここまで関わった以上逃げるなんてできはしないんだがなぁ……。
セヌティスは本当に気持ちの悪い街であった。
至る所にマリティナ……豪勢なドレスで着飾った悪女の石像が並んでおり、中心には金のマリティナ像が鎮座している。
マリティナの権力の象徴のような街なのだろう。
「この街は、元々歓楽街だったの。王都の貴族達が遊ぶためのね。もうちょっとうるさくない感じだったけれども、この有様よ」
とはリノアの言である。
「さて、じゃあ情報収集かな?」
俺がそう言うと、ずいっと出てくるアーシャ。
「ならば私に任せてください、ソースケ様!」
「様をつけるな!」
俺は鼻をつまむ。
「呼吸がしにくいです、ソースケ様。どうせならお尻を叩いてほしいです!」
「やめんか!」
扱いにくいわ!
しかし、元影ならば情報収集はお手の物……か。
「じゃあ、裏の方を任せていいか? 今日中に集まる範囲でいい。集合は、あの大通りの宿屋に泊まる予定だから、そこで」
「わかりました! まずはソースケ様に信用してもらえるように頑張りますね❤️もちろん、ご褒美は……」
「ダメです」
「……うぅ、とりあえず頑張ってきます」
そう言うと、アーシャはシュンっと消えた。
その身体能力はさすが影ということか。
まったく、せいせいしたな、うん。
「さて、それじゃあ俺たちも表の方の情報収集と行きますかね」
「……けっこう雑に扱うのね」
「ふえぇぇぇ」
「……羨ましいな」
性欲女の扱いなどこんなものでいいだろう。
「じゃ、先ずはコロシアムに行くか」
「そうね……え?」
「ふえぇぇ?!」
俺がそういうと、二人が驚く。
レジスタンスの男も反対する。
「いきなりコロシアムに行くなんて、死にに行くおつもりですか?!」
「ちょっと、殴り込みに行くには早すぎない?」
何を言うか。
「ああ言う施設ってのは、VIPと一般客の区別が明確にされているものだ。俺たちは一般客として、コロシアムがどんなものかを視察するんだ。だから全く問題ないよ」
俺はそう言って、店に入る。
チケット売り場と書いてあるから間違いないだろう。
「すみません、一般チケットを4枚ください」
「あいよ。当日券かい?」
「ええ、それで」
「なら、銅貨120枚だよ」
俺は銀貨1枚と銅貨20枚を出す。
「メルロマルク通貨だが大丈夫か?」
「ふーん、まあ、構わないさね。どうやって入ったかは知らないけどね」
「刺激的なコロシアムがあると聞いてね。ゼルドブルから戻ってきたのさ」
「なるほどね。はいよ、チケット4枚だよ」
そんな感じで俺はサクッとチケットを購入する。
「ほら、チケットだ」
「……アンタ、口先だけで生きていけそうね」
「これも身につけた技だ。気にするな」
リノアはため息をついて、チケットを受け取る。
リーシア、レジスタンスの男にも手渡す。
「……見事なお手並みで」
「ありがとさん」
俺たち一行は、コロシアムに乗り込むことになったのだった。