「エアストスロー、セカンドスロー、ドリットスロー!」
「せりゃ!」
早速結界を作るために投擲してくるコーラ。
俺は即座に反応して、勇者スキルで生成されたそれを弾き飛ばす。
「甘い!」
バシュンとクロスボウで矢を放つ。
慣れれば連射もお手の物だ。
ドスドスと何発か放ったうちの2発が腕と太ももに刺さる。
「くっ! このコンボが通用しないだと?!」
「PvPで【前提が多い】技を使うならなぁ! こうしろよ!!」
俺は弓に魔力を込める。
これはレベル65の時に習得した弓のスキルである。
「影縫い!」
魔力を込めた矢がコーラの陰に刺さると、相手を拘束する。
「な、動けないだと?!」
俺はコーラの目の前に移動すると、剣を構える。
「辞世の句でも読んでいろ。必殺! 双破斬!」
俺は剣を切り上げる。
俺の魔力は雷に寄っているせいか、多少雷っぽいオーラが出ている。
「ぎゃあああああああ!!」
そのまま斬り下ろす。
HPが高いのか、鎧に大きい傷と切られた際に吹き出た血液が出たぐらいで、叩き切られてはいなかった。
ビチャっと地面にコーラの血液が飛び散る。
「くっそ! 卑怯だぞ! どんなチートを貰ったんだ!」
「んな事聞いている暇があるなら、さっさと俺を殺してみせろ」
コーラごときに人間無骨を使うのもな。
弓と剣の練習台にでもするか。
こんな雑魚を簡単に斬首しても、色々と申し訳がないしな。
「エアストスロー! チェンジスロー!」
投げた鉄球から、別の投げナイフが飛び散る攻撃をしてくるが、そんなもの避けるのはそう難しくない。
フェイントも無いし、直線的なのだ。
「うわあああああ!」
手投げ斧を投げてきたので、俺はそれを掴んだ。
あれ、なんか奪えそうな気がする。
「俺が見せてやるよ! こうやるんだ!」
クロスボウで矢を射出して、コーラの逃げ道を塞ぐ。
そして、コーラの手元に戻ろうとするこの手投げ斧をぶん投げる。
「トマホォォォォクゥ!」
戻る勢いに俺の投げた力が加わり、ビュンビュン音を立ててコーラに迫る。
「う、うわああああああああああああ!!」
ドシュっと手投げ斧が突き刺さる。
いやはや哀れなことで。
「く、くそ、素振りで鍛えたステータスで敵わないと言うのか?!」
しぶとい奴め。
「すでに100人以上殺してきた俺に叶うとでも?」
現時点で鎧は返り血で赤黒く染まっている。
道中でもすでに25人殺している。
お陰でレベルが2上がったんだがな。
今はちょうどレベル70だ。
「う、うおおおおおお!!」
お、持っている手斧が禍々しいナイフに変化したぞ。
「シャドウバインド! バインドスロー!」
カーススキルか。
喰らう道理もないので避けようとする。
背後に陰で出来た壁が出来上がっているのを確認する。
ガキンと投げナイフを剣で受け止めると、物理的におかしいがナイフに押し負けて背後に飛ばされて、陰の壁に拘束される。
「ははははははは! 喰らえ! ファラリスブル!!」
陰の壁が浮き上がり、地面から現れた牛を象る容れ物に封じられる。
なるほど、ファラリスの雄牛ね。
容れ物内が急激に熱くなるが、これ長時間閉じ込めてないとそこまでダメージを負わないタイプの攻撃じゃ無いかな。
炎は呪いの効果がついているせいか、最大HPにダメージを受けているが、大したダメージではなかった。
確かに、皮膚が焼き焦げるように痛いが、それがなんだと言うのか。
「ふんっ」
力を入れるだけで拘束が解除される。
「はぁっ!」
人間無骨を数度振るうと、それだけでファラリスの雄牛を象ったものは破壊されてしまった。
うーん、ちょっとだけ暑かったな。
俺はもはや人間をやめているのでは無いだろうか?
HPが10%も減ってしまったがな。
「なっ! 俺の必殺スキルが?!」
「ソースケ! 大丈夫?!」
部位欠損も無いし、呪いのせいで最大HPにダメージを受けているが、特に問題はないだろう。
残りHPは90%も残っている。
「……こんなものか」
レベル70はここまで人間をやめてしまうんだなと思った。
たぶん、ブラッドサクリファイスレベルならば俺も瀕死のダメージを負うのだろうが、そもそも俺は呪いへの耐性が高いしな。
伊達に殺してはいない。
「それじゃあ、そろそろお前に死を与えよう」
俺は剣を構える。
これも、レベル66で習得した必殺技だ。
縮地という前提技能が必要だけれども、俺は既にそれは使える。
滅多に使わないので、短距離しかできないけれどな。
必殺技は本当に、俺の脳内から作られているのではないだろうか?
「昔見た漫画の技だけれど、今ここで再現してやろう」
俺はそういうと、剣を刀のように構える。
縮地で俺は間合いをコーラに一気に詰める。
「け、剣が9つに?!」
「必殺、なんちゃって九頭竜閃!」
ナイフみたいな剣で再現しているため、なんちゃってである。
技名もそのまま。
俺は飛天御剣流なんて使ったことはない。
実際に俺が突いているのは鳩尾だけである。
他は魔力で構成された残像だ。
「ぎゃああああああああああああ!!!」
コーラの身体に同時に9つの斬撃が入る。
袈裟、逆袈裟、胴、逆胴、左右切上げ、唐竹、逆風、そして突き。
剣の動きの全てを同時に放つのが、この技の肝であるが、俺の技量ではまだまだ再現できないので、魔力で代用した。
「が、は……」
ドシャっと言う音とともに、バシャっと血溜まりに倒れる音がする。
「「「いやああああああ!! ユータ様あああああああ!!!」」」
と、コーラの体から光の玉が飛び出し、俺に引き寄せられるようにぶち当たる。
七星武器、投擲具を入手しました。
と、メッセージが出る。
あー……、まあ、そうなるよねぇ。
剣は……全然持てるし、武器として使うことを意識して振っても問題ないが。
これは、コーラから勇者武器を簒奪したということなのだろうな。
「……マジか」
装備を勇者武器:投擲具に切り替えますか?
と、メッセージが出る。
どうやら、切り替え可能なようだ。
まあ、今は必要がないからな。
「ソースケ、大丈夫だった?」
「余裕だな。所詮雑魚は雑魚か」
「でも、呪いが……」
身体を見ると、確かに呪いが俺を蝕んでいる。
「治療は後回しで問題ない。さっさと残りの連中を殺しに行くぞ」
俺はそう言いながら、ヴィッチの気配がする女に向かって矢を放ち撃ち殺す。
他の女は知らない。邪魔してくるなら殺そう。
「ソースケが戦っている間に、協力してくれていた貴族から色々話を聞いていたわ」
「ま、少しばかり時間使っちゃったしな」
騎士団程度ならば瞬殺できるが、コーラにはつい時間を使ってしまった。
リノアによると、殺すべきターゲットは別の場所にいるらしい。
一般でもなく、VIPでもない、すなわち、奴隷のいる場所に、奴隷紋の管理者が居るようだった。
「なら、すぐに向かうか」
「行かせると思うか?」
俺がリノアにそう言うと、被せるように男の声が入る。
見上げると、あの時の武術家がそこにはいたのだった。
波の尖兵扱いでゲットです。
ちなみに、宗介には投擲具の適性はありません。
波の尖兵扱いで無ければ弾かれますね。