波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず

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多分盛り上がって来たところ?


【高難易度】敗戦

「てめぇ、その声は……!」

「また会うとはな。はは、会いたかったぜぇぇ?」

 

 武術家はそう言うと、フェイスガードを脱ぐ。

 そこにはやはり、イケメンの……いや、正しく言おう。日本人の顔が現れた。

 

「俺と同じ転移者だったんだな、お前」

「ああ、だがまあ、俺様の方がお前よりも先輩だがな」

 

 俺はメルロマルク語でしゃべっているつもりだが、眷属器のせいかハッキリと日本語で理解できる。

 

「ソースケ……? 知り合いなの……?」

 

 そして、リノアの声まで日本語に聞こえる。

 

「いや、知らない奴だ。だが、俺と同郷のやつだろう」

 

 武術家は肩をすくめる。

 

「俺様は闇の武術家、殺人空手の使い手、金剛寺哲平だ。この世界に転移する際に若返らせてもらったが、俺様は元の世界では83歳だった」

 

 道理で強いわけだ。

 

「うくくくく、まさかこの世界で同郷の、達人級に出会えるとは思っていなかったぞ。しかも、この惨状! 俺様が裏切った依頼主の連中を皆殺しにしたのと似ている! うくくくく……」

 

 非常に愉快そうに、金剛寺は笑う。

 いやしかし、元年齢が83歳だと? 

 

「最近、弱い連中しかいないから退屈だった。お前との殺し合いは、久し振りに魂が揺さぶられたよ。しかも、殺すのになんの躊躇いも無いと来た!」

 

 スッと、金剛寺は構える。

 俺も、両手を広げて前に出して合気道の構えをする。

 

「今度は容赦も何もせぬぞ。存分に殺し合おう」

 

 殺気が凄まじい。

 鳥肌が立つほどだ。

 リノアが恐怖で腰を抜かして尻餅をつく音が戦いの始まりで合った。

 

 ──バシィィィン! 

 

 高速で放たれる突きに俺が対応して、カウンターで当身を放つ。その当身を金剛寺が手のひらで受け止めた音であった。

 息を吐く暇もなく繰り出される突きを、俺は全て受け流す。

 蹴りは重心をずらして回避する。

 カウンターは全て入れているが、やはり簡単に止められてしまう。

 コイツ、ビビらないせいか態勢が崩れないのだ。

 

「そらそら! 受け流すだけでは決着が着かんぞ!」

「くっ……!」

「あの技を使って見せよ! 俺様が攻略してやろう!」

 

 あの技と言うのは【気】の事だろう。

 流水岩砕拳の真似をすれば確かにコイツにダメージは与えられるだろう。

 だが、全力で攻撃を受け流さないとやばいのは、両手に感じる痛みで理解できた。

 あの拳は、間違いなく一撃必殺だ。

 拳圧だけで地面が抉れているのがわかる。

 目の前の男は本当に人間なのか? と、そんな疑問を抱かずにはいられなかった。

 

「そらそらそらそら!」

 

 手数の多さ、そして、威力の高さにより、受け止める手に痺れがたまってくる。

 攻めなければ負ける! 

 

「ハァァァァ……」

 

 俺は息を全て吐くと、【気】を使う呼吸を始める。

 EPは盾の強化法だったか、勇者の武器を手にした俺は自然と気を扱っているのだろう。

 だが、知っている事と使える事に大きな差異があるように、気を使うと言うのは難しい。

 俺の場合は、呼吸でスイッチを入れるイメージだ。

 

 気を織り交ぜる事により、相手の防御を貫通してダメージが入り始める。

 さながら、ドラゴンボールのように俺と金剛寺は格闘戦を繰り広げる。

 

「チッ! 攻撃をすり抜けて突きが入って来やがる!」

 

 だが、回避時の手の痺れから、ダメージはあまり入っていない。

 

「わはははは! 久方振りの好敵手だ! 実に良い、実に良いぞ!」

 

 奴の攻撃は当たれば終わり。

 俺はそれを回避し、すり抜け、HPを削りきれば勝ち。

 そんなギリギリの戦いである。

 まるで、地上3000mのビルの間を鉄筋の上を歩いて渡り切るような感覚だ。

 完全なる膠着状態であるが、相手の方が有利である事には変わりがない。

 

「……試してみるか」

 

 俺はそう言うと、握りこぶしを作る。

 奴の拳を受け流す際に、腕に打撃を加える事にした。

 

 3回ほど受け流しの際に攻撃して、奴は俺との間に間合いを開けて下がる。

 

「ほう、なかなか面白いことをする」

 

 痛かったのか、手を振りながら金剛寺は拳を構え直した。

 

「武器破壊ならぬ、拳破壊か。なるほど、対抗手段としては悪くない、が」

 

 金剛寺の姿が揺らぐ。

 

「幻楼拳」

 

 ふっと、姿が消えて、俺はとっさに動いた。

 脇腹に衝撃が走る。

 

「がはっ!!」

 

 それだけで、HPの半分近くが削れてしまう。

 やばい! 

 これはまずい! 

 大きくHPを損傷すると、意識が持っていかれたりするからだ。

 再び、今度は鳩尾を守ってた腕に衝撃が走る。

 腕の痛みがひどい。

 もしかしたら骨折したかもしれなかった。

 

「そうらそらそらそら!!」

 

 俺は防御姿勢をとり、奴の技をなんとか防御する。

 しばらくボコボコにされてしまい、両腕の骨は折れて、腕が上がらなくなる。

 HPも残りわずかになってしまった。

 

「グアアアアアア!! あ、あがああああ!!」

「ソースケ!!」

 

 俺はその場に倒れてしまう。

 あ、これはダメかもしれない……。

 

「ハハハハハ! やはり俺様こそが最強! 無敵! 殺人空手に一切の陰りなし!」

 

 リノアか俺の元に駆け寄る。

 が、金剛寺がそれを止める。

 

「させんぞ、女!」

「きゃあ!」

 

 リノアの目の前の地面がえぐれる。

 

「うくくくく、女、亜人か」

 

 リノアの尻尾がスカートから飛び出していた。

 金剛寺はリノアの胸ぐらを掴むと、持ち上げる。

 

「離しなさいよ!」

「うくくくく、亜人の女は好きにして良いとマリティナ様は言っていたからな」

「ちょ、やめなさい!」

 

 金剛寺はニタっと笑うと、リノアの服を破る。

 

「リ……ノア……!」

 

 俺は、動きたくても動けなかった。

 身体中が痛みで悲鳴を上げている。

 口からは血が出て、両腕は完全に変な方向に曲がっている。

 

「いやあああああああああああ!!」

「うくくくく、ハハハハ! この凄惨な場で女を犯すのも一興よ。キサマは朽ち果てるまでそこで大人しく見ているが良い!」

 

 くそっ! くそっ! 

 俺は何もできないのか?! 

 身体は動かないし、拳を作ることもままならない。

 この現状をどうにかできないのか?! 

 

 と、そんな時に、声が聞こえた。

 

「イーグルピアッシングアロー!」

 

 鷹の姿を象った矢が、金剛寺に襲いかかったのだ。

 

「ちぃ!」

 

 金剛寺はリノアをどかして矢を殴り落とした。

 

「大丈夫ですか、宗介さん?」

 

 正体は樹であった。

 樹以外にもいつものメンバーに加え、ジャンヌの姿があった。

 

「おい、お前大丈夫か?」

「ジャンヌさん!」

 

 ジャンヌがリノアを助け起す。

 

「ジャンヌ? ……どう言う状況だ?」

 

 ジャンヌがいる事に困惑する金剛寺。

 

「もちろん、僕たちが助けたんですよ」

 

 ドヤ顔でそう言う樹。

 別に不利では無いだろうに、金剛寺はため息をつくと、構えを解いた。

 

「……ふん、興が削がれた。ジャンヌが脱走したことをマリティナ様にも伝えなければならん。殺すのは、また今度にしてやるよ、菊池くん」

 

 金剛寺はそう言うと、地面を思いっきり突いて破壊して、この場を去る。

 

「待て!」

「逃すか!」

 

 と、追おうとした燻製と侍を止めたのは、ジャンヌであった。

 

「待て、あいつは追ってはいけない!」

「どう言う事だ?」

「あいつは危険だ。レベル100ですら容易に殺す暗殺拳の持ち主であるスティール=ダイヤモンド。マリティナの右腕であり、対策を取らねば危険な奴だ」

 

 ジャンヌの鬼気迫る様子に、燻製も侍の追うのを止めた。

 

「ですが、間に合って良かった。宗介さんは無事とは言い難いですが、リノアさんも無事でしたしね。アーシャさんに伝えてもらわねば間に合わない所でした」

 

 樹はそう言うと、まだ意識のある俺にこうささやいた。

 

「しかし、助かりました。宗介さんが思った通りに動いてくれたおかげで、やりやすかったです。まあ、流石にやり過ぎだとは思いましたが」

 

 どうやら、コロシアム強襲の内容を俺に伝えなかったのはわざとだったらしい。

 

「ソースケ! ソースケ!!」

「ソースケ様!」

 

 と、リノアが涙目で俺にすがりついてくる。

 傍にアーシャもいる。

 

「無事なの? 死んじゃいやよ!」

「う……ごかさ……ない……で……くれ……」

 

 痛みで意識が飛びそうだから。

 

「ツヴァイト・ヒール!」

 

 魔法使いが俺に回復魔法をかけてくれたおかげで、痛みが和らぐ。

 

「とにかく、一度ここから離れましょう。宗介さんは任せましたよ」

 

 俺は、樹の言葉を最後に意識を失ってしまったのだった。




やはり、波の尖兵強スギィ!!

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