波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず

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これで、弓の勇者編終了です!
ものすごく後味の悪い結末ですが、ご了承ください。


【高難易度】あっけない幕切れ

 さすがに、怪我が1日で完治するほど甘くはないのが事実である。

 回復薬のおかげで、骨は完全にくっついたが、打撲痕はまだまだ完治に時間がかかるし、呪いのせいで肉体損傷の治りが悪い。

 今は鎧や小手は装備解除されているが、ファラリスブルで焼けた呪い痕は黒くなっており、その部分の腫れは収まっていないのが現状だ。

 流石に聖水は持ってないんだよなぁ。

 最大HPも減ったままだし、嫌な感じである。

 しかし、身体が動かないと言うのはどうしようもない。

 意識の方は結構はっきりしているが、身体中に重りを乗せられたかのように動けず、言葉も内臓をやられてしまったためか、出しにくい。

 今はアーシャが膝枕をして、リノアに看病してもらっている状態だ。

 

「それにしても、コンゴウジ=テッペーだっけ? あの強さは異常よね。人間、あんなに強くなれるものなのかしら?」

 

 リノアの服は、予備のものを着ている。

 移動中に着替えたそうだ。

 

「ええ、私も調べてみたんですけれど、スティール=ダイヤモンドが初めて確認されたのは、およそ4年前ですね。マリティナが毒婦として権力の中枢に食い込む際の右腕として動いていたのが確認されています」

「4年……。あいつが言っていた事を考えると、どこかの国から呼び寄せたように聞こえたわ。それも、若返らせてね」

 

 金剛寺哲平、ね。その名前には聞き覚えがあった。

 実戦空手を提唱していた人物で、金剛寺流空手術の創始者である。

 マイナーなんだけれど門下生は恐ろしく強く、大会を荒らして回ったそうだ。

 もちろん、怪我人続出したため、オリンピックには出られなかったと言うニュースぐらいなら聞き覚えがあった。

 アイツ、同じ世界から来たやつだったのか……。

 

「若返らせて……。どうやってかは知りませんが、気になりますね」

「マリティナがそう言う魔法を持っているならば由々しき事態ね。気になるわ」

「ただ、私が集めた情報にはそう言う若返りに関するものはなかったんですよね」

 

 しかし、あれだけの情報を喋っておいて、金剛寺は頭が破裂しなかったのはなぜだろうか? 

 もしかしたら、見限った波の尖兵の粛清用として召喚された存在なのかもしれないな。

 ……今の勇者では太刀打ちできる気がしないが。

 

「うーん、顔や髪の色を見る感じだとソースケと同郷なのよね」

 

 リノア達にとっても、アイツは不思議な存在のようである。

 

「そうそう、話は変わるけれど、戦況は聞いてきたわよ」

 

 リノアは話を変える。

 

「現状は、レジスタンスが優勢ね。騎士団でもこちら側の人がかなりいたこともあって、混乱しているところを叩いている状態よ」

 

 あれほどの悪政だ。

 鬱憤が溜まっていてもおかしくないだろう。

 実際、クテンロウでもレジスタンスが頑張っている最中だろうしな。

 

「あと、イツキ達も頑張っているみたいね。主にマルドやカレクが敵を倒していってるみたいだけれど」

 

 まあ、あの将軍様プレイでも連携すればかなり強い事は分かっているからな。

 マッチポンプでも強いせいで、やめられなくなっているのだろうな。

 身体があまり動かせないので、リノア達の会話を聴きながら、そんな事を考察していた。

 

 果てさて、結論から言うと、この国を取り戻すことには成功した。

 結局、俺の回復が間に合うはずもなく、終わってしまったわけである。

 樹とジャンヌが頑張ってくれたようで、まあ、最後は完全に蚊帳の外になってしまったわけだ。

 マリティナは、残念ながら取り逃がしたらしい。

 これは金剛寺が関わっていたと言う事を、リーシアから聞いた。

 

 そして、現在俺はと言うと、樹に拘束されてレイファ、アーシャ、そして何故かリノアとともにメルロマルクへと戻ってきていた。

 

「ソースケ、大丈夫?」

 

 と、優しく声をかけてくれるレイファの天使度の高さに涙を禁じ得ない。

 ちなみに、リノアが付いてきた理由は聞かされていなかった。

 

「では、宗介さん。ギルドに連行します。まあ、その格好では抵抗は無理でしょうし、大人しくしていてくださいね」

「……」

 

 俺は首から下は袋に入れられて、ベルトで締め上げられていた。

 口には猿轡をされており、抵抗はできなかった。

 俺の武器、どこに行ったんだろう……? 

 

「わはははは! これが犯罪者の末路よ!」

 

 快活に笑う燻製がムカつく。

 

「ちょっと、ソースケをどうするつもりですか!」

 

 詰め寄るレイファに、樹は平然と答える。

 

「もちろん、罪を償ってもらうためです。今回は正義のために力を行使しましたけれど、彼はそもそも悪なのです。悪事の罪を償って、正義を為して始めて許されるんです」

 

 ドヤ顔で樹はそんな事を言うが、レイファが納得するはずがなかった。

 

「何でですか! ソースケは悪い人に追い回されたから、仕方なく撃退していただけです! それに、冒険者ならば賞金首を相手にする以上殺されても文句は言えないはずです!」

「何を言っているんですか? 罪の無い人たちを殺害するのは悪に決まっているじゃ無いですか。君もちゃんと勉強しなさい」

「なっ?!」

 

 樹の屁理屈に言いくるめられたレイファは憤慨して地団駄を踏む。

 結局、俺は引き渡されて、ギルド預かりになってしまったのだった。




ちなみに、金剛寺は樹達を見て興味なさげに
「ふっ、このような雑魚が勇者な訳あるまいて。戦う価値すらないわ。だが、仕事は果たさせてもらおう」
と言って、マリティナと数人の部下を連れてどこともなく消えてしまいました。

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