それから、魔物の素材の買取金を受け取った後に俺たちはギルドに向かう。
日本人的には冒険者ギルドと言った方が感覚的に理解しやすいが、要するに冒険者に国や個人からの仕事を斡旋する、役所みたいなところだ。
俺の記憶に違いがなければ、メルロマルクのギルドは実質役場で間違いはない。
セーアエット領は異なるが、基本的に国、ひいては三勇教が監視しているのがこの国の現状だ。
「坊主はギルドに登録してもらう。その仕事をこなしていくのが次の仕事だ」
「ああ、だから武器を新調したんだな……」
「そうだ。それに、ギルドに登録しておけばメルロマルク国内のどのギルドでも依頼を受けれるようになる」
「はぁー。便利っすねー」
「そうだ。レベルによって受けれる依頼の難度は決まっているから、無理さえしなければ金を稼ぐにはもってこいだろう」
と言うわけで、俺はギルドに登録する事になった。
この辺は尚文が使っていなかったせいか、非常に描写が少ない。
俺が役場と表現したのも、国と深くつながっており、国の命令一つで斡旋するしないを決めるところにある。
こういうのは、普通の波の尖兵なら面倒臭がってこないだろうなとは思う。
実際、手続きも面倒臭かった。
ドラルさんの紹介で冒険者としてギルドに登録するのが若干簡単なだけで、紹介なしや他国の冒険者のライセンスなしで登録するには面接やら色々と面倒な手続きが必要らしい。
これじゃあ、この国出身の亜人は冒険者にもなれないし、盾の勇者がギルドを使用できるはずもなかった。
「ふぅ……ようやく手続きが終わった……!」
「ソースケ、おつかれさま」
書類を何度か書き直したけれど、なんとか審査が通り、ギルドの使用許可と他国でも通用するライセンスが発行された。
ギルド職員曰く、こういう書類は勇者様以外は基本的に代筆はしない方針らしい。
「割と早い方だったのではないか? 俺が登録するときはもう一時間くらい登録に時間がかかったからな」
「そ、そうなんだ……」
こりゃ確かにメルロマルクで冒険者なんて最初の段階で躓くわけである。
「さて、今日は帰るには遅い時間だから、この街に泊まっていく。せっかくだから、坊主はレイファと一緒に、この依頼をやってみたらいい」
ドラルさんが持ってきた依頼は、討伐系の依頼だった。MHを想起させるようなデザインの依頼書だなと思いつつ、内容を確認する。
「オオウサピルの討伐」
「ああ、レベル5なら問題ないだろう」
「ゴブリンとかファンタジー魔物じゃないんだな」
「ゴブリン?」
反応からすると、ゴブリンは存在しないらしい。
あまり魔物の描写はされないが、どうやらこの世界には居ないのだろう。
むしろ、エルフやドワーフの存在がある【狩猟具の世界】の方にいそうではあるけれどもね。
「いや、勇者世界で有名な雑魚モンスターの名前さ。で、俺は今日はそれを狩ればいいわけ?」
「ああ、明日でも構わないが、お前の実力なら2時間ほどあれば大丈夫だろう。場所もそう遠くないからな」
「んー、わかった。ドラルさんがそう言うなら、俺にはできるんだろう。回復薬は何本か使って大丈夫か?」
「ああ、3本までなら黒字だな」
「よっし、それじゃ行きますか! レイファ、準備だ」
「うん、わかったわ」
という感じで俺たちはオオウサピルを狩るために、テキパキと準備をして、現地に向かった。
オオウサピルは巨大なウサピルである。名前の通りだな。
ウサピルの成長先の一つで、強力な魔物である。
ウサピルにも種族があるらしいけれど、俺には詳しくはわからなかった。
「ぴょ!」
大量にいるウサピルを、俺は槍で突き殺していく。
異様にウサピルが多く、歩いているだけで飛び出してくるほどエンカ率が高かった。
とは言っても、通常のウサピルならばそこまで問題ではない。
4つの武器装備補正もあるが、いい装備を装備したおかげか、かなり戦いやすいのだ。
小手のお陰で合気道をかけて投げ飛ばした時のダメージも増えているらしく、レベルの割にはかなり戦えるようになっていた。
「お、レベル6に上がった!」
「ソースケ、おめでとう!」
ちなみにレイファはレベルが9らしい。
パーティを組んでいると左上のHP/MPゲージにアルファベットでレイファの名前と、HP/MPゲージが表示されるが、ステータスはわからない仕様である。
若干遠目のウサピルを槍で、接近してきたウサピルを小手や剣で制圧しながら進んでいくと、でかいウサピルが出現した。
「ぴょ!!」
出会い頭にオオウサピルは蹴りをかましてくる。俺は槍を両手で構えて、後ろに控えているレイファに当たらないように受け流す。
「くっ!」
獲物が長い槍でうまく受け流すと、俺は槍を片手に持ち替えて剣を抜く。
「せりゃ!」
ズバッとオオウサピルに攻撃が当たるが、上手く流されたのか大してダメージを負ってるようには見えない。
距離を取られたので、すぐさま弓に持ち替えて矢を放つ。
西洋弓なので、弓道のように胸を張って撃ったりはしないが、弦はちゃんと引き絞って撃つ。
矢は腕の部分に刺さり、ダメージを与えたことがステータス魔法で確認できる。
『力の根源たる私が命ずる。理を読み解き、彼の者を風の力で薙ぎ払え』
「ファスト・ウインドショット!」
レイファは魔法を唱えて、風の弾をオオウサピルに当てる。
レイファは風魔法と回復魔法に適性があったのか。
レイファの風の弾を受けたオオウサピルは吹き飛ばされてしまう。
ちょうど俺の目の前にくる形になった。
俺は剣に持ち変えると、レベルアップで覚えた必殺技を使う。
「必殺! 兜割!」
飛び上がり、脳天を剣で割るように振り下ろした。
グシャっと鈍い音を立ててウサピルの脳天をかち割る。
頭部を大きく損壊したオオウサピルのHPはゲージが0になり絶命した。
「うーん、まあこんなものかな?」
俺は剣を振り血を払う。
ビュッと音を立てて、剣に着いていた血が地面に払われる。
「さて、解体してさばいた後、部位証明箇所を切り取って片付けますか」
「うん、わかったわ」
俺たちはこうして、初めての依頼をこなしたのであった。
もちろん、レベルアップにまではいかなかったけれど、それなりの経験値は得られたけれどね。
盾の勇者世界の魔物って強さごとのリストってないんですかねぇ?
菊池宗介の辿る運命はどうする?
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