留置所内でも、俺は拘束されいていた。
牢屋の中で、硬いベットの上でベルトに縛られて身動きが取れないのだ。
HPは減った分を除いて90%ほど回復しており、順調には回復しているだろう。
下手すればレベル1リセットされてしまいかねないので、ここは無抵抗を貫くことにする。
奴隷紋も効かなかったしな!
留置所でも尋問が行われるが、俺は無抵抗にすらすらと答えるため、看守達は肩透かしだったようだ。
「キクチ=ソウスケ、何故冒険者達を殺した?」
「俺の首にかかった賞金を狙ってくる以上仕方ないだろう?」
「そうじゃない! アールシュタッド領での虐殺だ!」
「アレも同じだ。錬サマの冒険者パーティを無理矢理除外され、三勇教に意味不明に神敵扱いされてみたら良いさ。それで、冤罪で犯罪者扱いされた挙句、俺を殺そうと冒険者達が襲いかかってくるんだ。返り討ちにするしかないじゃないか」
「が、だが、殺害するのは……! それに、貴族の御令嬢まで殺害したんだぞ!」
「50組近くの冒険者パーティに命を狙われて、それが言えるなら大したものだと思うが。それに、御令嬢を冒険者パーティに入れるなよ……」
「……」
「それに、アールシュタッド領の件に関しては領主様から直々に不問にするとのお達しが出てるはずだ」
「……」
と、俺はそんな不毛なやりとりを繰り広げていた。
教会引き渡されなかったのは、俺が大人しく従っていたからだったようである。
まあ、抵抗してもねぇ……。
留置所に拘留されて3日目、面会という形で俺は面会室に通された。
本来であれば奴隷紋の拘束があるけれども、何故か俺には効かなかったからね、仕方ないね。
だから、看守をやっている兵士が両脇に立っている状態での面会となった。
「いよっ!」
部屋に入って早々に俺は引き返したくなった。
だって、道化様がいたんだからな。
「うむ……」
猿轡がかまされていてうまく喋れなかった。
看守が俺から猿轡を取り払う。
「えーと、槍の勇者様ですか。何の用ですか?」
「その声は、確か錬の仲間だったかな?」
案外覚えていたようである。
地頭は良いからね。
「元、ね。勇者様の女はどうした?」
「いやー、流石にこんな所まで来てもらうのは悪いからね。外で待機してもらってるよ」
留置所と言っても、メルロマルク城下町内にある。
裁判を経て罪が確定し次第、東の収容所に収監されるらしい。
「そうか。で、俺に何の用だ?」
「レイファちゃん、だっけ。君の彼女に頼まれてさ、マインに話したら、オルトクレイ王に話してみるって言ってたんだよね」
「?」
俺が要領を得ない顔をしていると、元康はニッコリさわやかな笑みを浮かべてこう言った。
「君をここから出しに来たのさ。菊池宗介くん」
「……はぁ?」
俺は、元康が何を言っているのか理解するまでに、少し時間がかかってしまった。
──すでに、物語は俺の知っている原作からズレ始めている事に、俺はまだ気づく余地が無かったのだった。
次回導入も含めて、弓の勇者編完了です。
弓の勇者は良い感じにヘイトを稼いでいて、感想を読んでいて面白かったです。
次回から、槍の勇者編になります。
徐々にズレを見せ始める物語を宗介は生き残りつつどうやって戻していくのか、原作知識を活かして、ハッピーエンドに繋がるハードモードの書籍版の話に戻せるのかが見ものですね!