波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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昨日もフィーロちゃんに引かれてしまった

「なるほどな、そんな事がな」

 

 元康の話を聞いて、改めてレイファとリノアに心配をかけた事を申し訳なく思う。

 アーシャ? あの性欲女は正直苦手だから、生きているなら割とどうでも良い。

 

「そう、で、俺はアンタを見極めにきたわけ。女の子3人から慕われるのを見る限りだと、問題はなさそうだけれどね」

 

 まあ、人がモテるにはそれなりの理由がある。

 俺はそう言うつもりは一切無いんだけどな。

 

「で、槍の勇者様は俺をどうやって見極めると?」

「こう言う時は、これだろう」

 

 元康はそう言うと、槍を木の槍に変化させた。

 

「模擬戦なんかをする時に役に立つ槍だ。アンタもこれで俺と戦ってもらう」

「俺、ベルトで超固定されてて、動けないんだけど……」

「看守、宗介の拘束を一時的に解いてやってくれ」

「いえ、流石に、奴隷紋が効かなかったのでこの拘束を外すわけには……」

「奴隷紋……」

 

 元康が嫌な顔をした。

 尚文に負けた事でも思い出したのだろうか? 

 それとも、奴隷を購入して速攻で解放して殴られたとかか? 

 

「まあ、何に使うかはおいて置いたとしても、コイツが使えるのか試す必要があるからな」

「わかりました。槍の勇者様がそこまでおっしゃるなら」

 

 看守によってベルトに掛けられた錠が解放される。

 ようやく自由になった。

 伸びをすると、体がバキバキと音がなる。

 同じ姿勢でずっと固定されていたからね。

 結構しんどかった。

 

「それじゃ、少し開けているところに行こうぜ。腕試ししてやる」

 

 元康はそう言うと、俺に木の棒を渡す。

 まあ、従うしかあるまい。

 看守の人に案内されて、運動スペースにやって来た。

 

「さあ、君の力を見せてくれ!」

 

 元康はそう言うが、全力は出せないだろう。

 もし、攻撃が当たりでもしたら、刑が伸びそうである。

 すなわち、接待プレイをする必要があると言う事だ。

 

「ぜやああああああ!!」

 

 元康の直線的な攻撃は、いなすのは容易かった。

 合気道でも杖術は存在するのだ。

 軽く捻りを入れて、元康の槍を巻き取るだけでも攻撃の流れを逸らすことは難しく無い。

 

「ふっ、よっ、はっ」

 

 俺は小気味よく杖を使って元康の槍を受け流す。

 

「君、なかなかやるね!」

 

 一瞬KNN姉貴の「なかなかやるじゃ無い」と言う幻聴が聞こえた。

 

「なら、これならどうだ! 乱れ突き!」

 

 スキル使ってきたよ。

 まあ、こんな程度の攻撃ならば、見切るのは容易かった。

 杖で俺に当たる本命だけ撃ち払い方向を変え、それ以外は体捌きで回避する。

 それだけの事なのに、元康は相当驚いた様子だった。

 

「えぇ?! ……君、凄いね!」

「そうか?」

「ああ、これでも、俺はかなりの槍の使い手だと自負していたんだがな……」

 

 元康はそう言うと頭を掻く。

 

「ま、魔物相手ならば十分だと思うけれどな。対人戦なら俺の方が部があるから仕方ないな」

 

 殺した数はそれこそすでに3桁なのだ。

 それも、手練れの冒険者ばかりである。

 否が応でも対人戦特化してしまうのは仕方ないだろう。

 もちろん、今は単にいなしただけであるが。

 

「これなら合格かな」

 

 元康はそう言うと、俺の肩をポンポンと叩いた。

 

「マインによると、保釈までそれなりに手続きかかるみたいだから、しばらく待っていてくれよな」

「そうか、わかった」

 

 元康離れると、看守が走ってきて俺を拘束する。

 ベルトがつけられて、俺は再び身動きが取れなくなった。

 

「それじゃあ、あんまり女の子を悲しませないようにな」

 

 そう言うと、元康は颯爽と去っていった。

 波の前々日だと言うのに呑気なものである。

 そんな俺も、こんな状態だがな。

 樹に拘束される際に武器も防具も全て没収されてしまった。

 

 しかしまあ、両手両足に口まで防がれて、何もできないのはなかなかに辛かった。

 たまに尋問されるが、自分の武勇伝を語るだけになってしまうのでどうしようもなく暇だ。

 レイファたちは大丈夫だろうか? 

 それが一番の気がかりであった。

 

 

 

 私達が槍の勇者様に指定されたカフェで待っていると、槍の勇者様がマインさんと、何故か兵士を連れてやって来た。

 

「よっ、おまたせ。レイファちゃん、リノアちゃん、アーシャちゃん」

「お待ちしてました、槍の勇者様」

「予定より若干遅いんじゃ無いの?」

「悪い悪い」

 

 と言いつつ、マインさんの席をさらっと準備して座らせて、その隣に槍の勇者様は座った。

 

「で、宗介くんと面会して来たよ」

「ソースケは元気でしたか?」

「両手両足にベルトが巻かれてて、猿轡までされているのを見た時はビビったけどね。彼はまあ、元気そうだったよ」

 

 とりあえず、ソースケが無事そうで私はホッとする。

 

「え、ちょっと待って、ベルトに猿轡って、SMプレイでもしているの?!」

 

 リノアさんのツッコミに兵士が答える。

 えすえむぷれいって何だろうか? 

 

「キクチ=ソースケは奴隷紋が効かなかったため、厳重に抵抗ができないように捕縛した状態であります。詳しい原因は不明のため、解明するまではこのまま拘束される予定になっています」

「……と言う事だそうだ」

「そうなの。で、ソースケはどうなるのかしら?」

 

 リノアさんが聞くと、マインさんが答えてくれた。

 

「キクチ=ソースケさんは、これまでの活躍や実力から、波と戦う場合のみ保釈されることが決まりましたわ。それに伴い、裁判とレベルリセットの延期と、逃亡を阻止するための監視をつける義務、波と戦う義務が課せられますわ」

「まあ、ソースケほどの実力者をこのまま牢屋に入れっぱなしと言うのもどうかと思うからね」

「これは、超法規的措置ですので、義務を果たさない場合は即刻の処刑になりますわ」

 

 え、つまり、どう言うことなのだろうか? 

 私が混乱してくれると、リノアさんが教えてくれた。

 

「つまり、ソースケは見張りをつけて波と戦う限りは牢屋にいなくて済むと言うことよ。ただし、逃亡しようとしたり、波との戦いから逃げたりしたら、即処刑ね」

「え、それじゃあソースケは……?」

「とりあえずは外に出れるわね」

 

 うーん、これは安心して良いのかわからない。

 ソースケは波と戦うと言っていたし、見張りをちゃんとつければ問題ないという事なのかな? 

 

「で、ソースケはいつ保釈されるのよ?」

「これから保釈されるのよ手続きに入るから、明日の朝には解放されますわ」

「一応、俺のパーティという事でついて来てもらう事になるな」

「そうですか」

「そうそう、嘆願したレイファちゃん達も、波の戦いには参加してもらう必要があるからよろしくな」

 

 波はお父さんと一緒にやり過ごしたことはあるけれども、私はよくわかっていない。

 ラヴァイトも一緒に戦えるのだろうか? 

 と、槍の勇者様からパーティ申請が届く。

 

「えっ?!」

「一緒について来てほしいからね。大丈夫、俺が守ってみせるからさ!」

「は、はぁ……」

 

 私はそれを承認する。

 

「よし、オッケー。それじゃあ明日からよろしくな!」

 

 という感じで、私とリノアさん、アーシャさんは槍の勇者様と行動を共にすることになった。

 マインさんはいい人そうだし、ソースケが言うほどでも無いかなと思って安心した。

 それにしても、王様に話を通せるなんて、マインさんは一体どういう人なのだろうか? 

 よくわからない人だなと感じたのだった。




さて、第二の波はこれで原作から外れてしまうのが確定しそうです。
どう回避するのか?!
そもそも、宗介は置かれている状況を知らされているのか?
そして、元康のパーティメンバーになったレイファ達の明日はどっちだ?!

時系列的におかしいところを修正しました。

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