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私達はソースケに会えないまま、間も無く波の時間を迎えようとしていた。
「槍の勇者様、ソースケは無事だったんでしょうね?」
「ああ、共に戦う事になっているよ。ちゃんと無事なことは俺の目でも確認してきたから大丈夫大丈夫!」
リノアさんが焦るのも仕方ないだろう。
昨日の夜、懇親会の後でマインさんが私達に話した内容が、衝撃を与えていたからだ。
「バカな小娘。お前達があの、《首刈り》に再会できると思っているのかしら?」
マインさんの嘲るようにリノアさんに言った一言である。
「どう言うことよ!」
「そのままの意味ですわ。確かに生かして差し上げるわ。それはモトヤス様との約束ですもの。ただし、会わせるとは一言も言っていないわ」
「……!」
リノアさんが物凄い形相で睨む。
「そもそも、私も《首刈り》を生かしておくなんて反対なの。モトヤス様が仰るから、有効活用してやろうと言うだけのお話ですわ」
「……マルティ王女、何故今このタイミングでその事を私達に教えたのですか?」
「ふっ」
アーシャさんの詰問に鼻で笑うマインさん。
「小さな希望に縋っているのが余りにも滑稽だったからですわ。私は親切にも、貴女達の現状を教えてあげただけですの」
何という人だろう。
いいや、人でなしと言った方が正しい。
この国の……私の国の第一王女がこんな人だったなんて信じられなかった。
小馬鹿にして私達を笑う悪魔がそこにいた。
「せいぜい、モトヤス様のお役に立てるように頑張ることね」
彼女はそう言うと、私達の元を去る。
「……まるで、マリティナね。いいや、そのものな感じがするわ」
「リノアに同感ね。髪の色も顔の形も違うのに、そっくりだったわ」
リノアさんとアーシャさんはマインさんに対してそう感想を述べる。
私は、目の前で起きた出来事を信じられずに呆然としていた。
ああ、確かに、こんな性格の人が第一継承権を持っているはずがなかった。
女王さまが幼いメルティ第二王女殿下に第一継承権を指名したのも納得であった。
そのマルティ王女は槍の勇者様に寄り添っている。
私は、この人を早く槍の勇者様から遠ざけなければ大変な事になるのではないかと思ったのだった。
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間も無く転送される。
私は、戦力外なのですぐに盾の勇者様のところまで走る予定だ。
本当に死んでしまえば、ソースケに会う機会がないからだ。
00:00
その時、3度国中に響くほどのガラスの割れるような大きな音が木霊する。
そして、一瞬で景色が切り替わる。周囲を見渡すと、空にはワインレッドの亀裂が広がり、勇者様とその仲間達が状況を把握しようとしていた。
「ここは……メシャス村?!」
私とソースケが逃亡している最中に立ち寄った村である。
「盾の勇者様!」
何故かいるメルロマルクの若い兵士達が、盾の勇者様のところまで走って行っている。
「フィーロ! 槍を蹴って亀裂に向かおうとする奴らにぶつけろ。加減はしろよ」
「はーい!」
私は唖然としていたので、被害はなかったけれど、フィーロちゃんがフィロリアルクイーンの姿で槍の勇者様のところまで走って行き、蹴り飛ばす。
「え──?」
蹴り飛ばされた槍の勇者様がリノアさんや他の勇者様を巻き込んで、引き飛ばした。
「「「わああああああああああ!」」」
私は思わずめを瞑ってしまった。
そして、盾の勇者様の周囲に集まっていた。
「キレーなおねーちゃん、乗って」
フィーロちゃんが私のところに来たので、私はうなづいてフィーロちゃんに乗り、勇者様方のところに近づいた。
「な、何をするんだ!」
「それはこっちのセリフだ馬鹿共!」
槍の勇者様の糾弾に対してそう答える盾の勇者様。
「いきなり……?!」
「いきなりなんです! 僕達は波から湧き出る敵を倒さねばいけないのですよ!」
剣の勇者様と思わしき少年は、文句を途中で止めて、信じられない物を見るように動きが止まった。
弓の勇者は相変わらずである。
「ソースケ!」
剣の勇者様はそう言うと、向いていた方向に駆け出す。
私もフィーロちゃんの上から、ソースケを見つけて思わず顔がほころんだ。
「あー、マジか。いや、錬サマ、先に尚文の話を聞いてくれないか?」
「……? あ、ああ、話したいことはいっぱいある。待っていろ」
困ったような顔をするソースケ。
……何か、雰囲気がおかしかった。
「ああ、まずは話を聞け。敵を倒すのはその後だ」
盾の勇者様は目線で兵士たちにアイコンタクトを取ると、兵士達はメシャス村の方へ走っていった。
「さては……僕達への妨害工作ですね!」
「違う!」
弓の勇者が戯言をほざく。
本当に黙っていてほしい。イライラする。
弓の勇者は盾の勇者様の否定に驚き、目を見開いた。
「落ち着け、そして考えろ。俺は援助金を貰えないから波の本体とは戦わない。せいぜい近隣の町や村を守るのが仕事だ。そこは理解したか?」
「ああ」
「勇者としては失格ですね」
剣の勇者様が相槌を打ち、弓の勇者が余計な事を言う。
と言うか、盾の勇者様が報奨金を貰えないなんて初耳である。
「次に、錬、樹、元康、お前等は波の大本から湧き出る的の撃破が仕事だ。大物を倒せば何は収まるのか、亀裂に攻撃をするのかはやってないから知らない」
「ボスとリンクしているのですよ!」
ソースケ曰く、早めに波を抑えたいならば、亀裂を攻撃するのが有効だとも言っていた。
「だけどもな、俺達にはそれ以外に重要な仕事があるの……わかってない?」
「なんだ?」
剣の勇者様が首を捻る。
その様子に、盾の勇者様はため息をついた。
「あのな、騎士団はどうしたんだよ!」
「そんなものは後から来る」
剣の勇者様の仲間が撃った、場所を知らせる魔法弾を指差す。
メシャス村は馬やフィロリアルでも1日半かかる遠い場所だ。後から来ると言うのは楽観が過ぎるだろう。
「ここは城下町から馬やフィロリアルで一日半の距離があるんだぞ! 間に合うかボケ!」
「じゃ、じゃあどうすれば良いんだよ!」
「情報通のお前らが言うのか?!」
狼狽える剣の勇者様に、盾の勇者様が解説する。
盾の勇者様は兵士たちを指差した。
「そう言えば……あの方々はどうやって転送を?
「編隊機能を使ったんじゃね?」
と、槍の勇者様が割り込んだ。
「6人以上は経験値効率が下がるのはみんなも知っての通りだよな。宗介と、そこのおっさんを連れて来る際に何か方法がないか探したらあったんだよ」
槍の勇者様の回答に、全員が驚く。
ソースケはため息をついて、そう言うことかと呟いた。
「なるほど、そう言う機能があるんですね」
弓の勇者も納得のようである。
「わかっている元康が何で他の兵士を連れてきていないのかは置いておくとして、とりあえず確認だ。誰か波での戦いについて、ヘルプなどの確認を行ったもの」
盾の勇者様が手を挙げながらそう言うと、勇者様方全員がキョトンとした顔をする。
「熟知しているゲームのヘルプやチュートリアルを見る必要なんてないだろ?」
「そうだ。俺達はこの世界を熟知している」
「ええ。ですから、早く波を抑えることを最優先にしましょう!」
三人の勇者様の回答に、盾の勇者様は呆れた表情をする。
「じゃあ波の戦いはお前等……他のゲームでなんて言う?」
「は?」
「何のことだ?」
「それよりも早く行きましょう!」
弓の勇者は人をイラつかせる天才ではないだろうか?
私の弓の勇者への心象はどんどん悪くなっていく。
リノアさんを見ても、呆れた表情をしていた。
弓の勇者とその仲間達は、波の大本へと駆け出していった。
「元康、お前は俺の質問の意味がわかるだろ?」
「まあ……インスタントダンジョン?」
「違う。タイムアタックウェーブだろ?」
「ギルド戦、またはチーム戦、もしくは大規模戦闘だよ!」
いまいち、私は勇者様の話している言葉の意味が掴めなかったが、どうやら戦い方の話をしているらしい。
「……お前等、ゲームのシステムを完全に理解していても大きなギルドの運営をした事が無いんじゃないか?」
盾の勇者様の指摘に、槍の勇者様が反論する。
「俺はチームの運営をしていたぞ」
「じゃあ何で理解できない」
「必要ないだろ。それに、宗介を連れてきたのは俺だ。それで十分だろ?」
「はぁ!?」
「どうにかなるもんさ」
ソースケは沈黙してただ、この流れを傍観しているだけだ。
さっきから、ソースケの様子は明らかに変である。どうしたのだろう?
「フィーロちゃん、下ろして」
「んー、ごしゅじんさまからキレーなおねーちゃんは村に着くまで守れって言われているから、後で降ろすよー」
どうしよう。ソースケがおかしい。
「俺はそう言うのに興味がなかった」
「……とにかく、今回は俺達がどうにか頑張ってみるが、次はちゃんと騎士団と連携を取れよ」
盾の勇者様がシッシと追い払うように波の大本に行くように促すが、二人は立ち去らない。
「その前に、ソースケ……いや、宗介と話をさせてくれ」
「好きにしろ」
「それと、レイファちゃんを離せよな!」
「彼女は完全非戦闘員だ。こちらで預かる」
「だが、俺のパーティだ!」
「くどい!」
槍の勇者様は舌打ちをする。
「……槍の勇者、行きましょ。盾の勇者様、レイファをお願いするわ」
リノアさんが槍の勇者様を促して、諦めるように波の大元に向かった。
アーシャさんは既にソースケのところに待機している。ブレないなぁ。
「と言うわけだ。俺達も近隣の村へ行くぞ! ラフタリアとフィーロ、レイファもな」
「はーい!」
「はい!」
私はソースケのところに行きたかった。
だけれども、剣の勇者様と話があるようであった。
だから、私はフィーロちゃんに手足を羽毛で絡め取られたまま、なすがままについていくことになったのだった。
「ソースケ……」