「宗介、久しぶりだな。元気にしていたか?」
「ああ」
まさか、こんな所で失った仲間と会えるとは思えなかった。
俺のパーティだった頃とはすっかり違っているが、やはり宗介は宗介だった。
だが、俺が近づくと、なぜか宗介は短剣を構えた。
腰に装備したものではなく、どこかで見たことがあるような宝石の装飾がされた短剣だった。
「何を考えている?!」
騎士が俺を守るように、宗介に立ちはだかった。
どうしたと言うのだろうか?
「ぐあああああああああああああ!!」
そして、一瞬で血飛沫をあげて倒れた。
「ソースケさま?!」
「宗介?!」
宗介は、嫌な笑みを顔に貼り付けている。
な、何が起こった?!
「クックック……。なぁ、錬。お前は、世界を守ることはどう言うことだと思う?」
な、なんだこれは?!
「……どう言うことだ?」
俺は剣を構える。
それも、今一番強いサンダーソードだ。
「なあオイ、教えてくれよ錬。クックック……。世界をお前は守れるのか?」
「もちろん、守ってみせる!」
「滑稽だな。こんなゴミクズみたいな世界、滅んでしまえば良いだろう?」
「宗介……?」
「ソースケ様、何を?!」
宗介はそう言うと、
「エアストスロー、セカンドスロー、ドリットスロー、コンボ、サウザンドスロー」
宗介の手につき次とナイフが出現する。
「俺を殺せなければ、錬、お前に世界は救えない。さあ、戦え!」
ふっと宗介が消える。
一瞬でHPが削れる。
痛い、なんだこれは?!
見ると、身体中にナイフが突き刺さっていた。
「なっ?!」
「弱い。が、さすがは精霊具の勇者様だ。硬いな。だが、次で終わりだ」
俺は負けるのか?!
それになぜ、俺が宗介に攻撃されているのかわからなかった。
「おやめください! 何を考えているのですか?!」
「勇者殺しだ。この世界を破壊する」
「なっ?!」
ダメージを負った騎士が立ち上がり、再び宗介の前に立ちはだかる。
「何を考えている?! キクチ=ソースケ!!」
「クックック……。何を? はっはっは、わかっているだろう?」
宗介は明らかにおかしかった。
まるで、魔王を彷彿とさせた。
「なぜ、俺にこの選択をさせたのか、お前達メルロマルクの連中ならばわかるだろう? なあオイ!」
再び宗介の手元のナイフが消えて、鎧の男の身体中に突き刺さる。
「ファスト・ヒール!」
宗介を慕う女が慌てて彼を回復させる。
「クックック……。そんな強さもないくせに、何が守るだ。そもそも錬。お前は一体何を守っているんだ?」
「うをおおおおおおおおお!!」
騎士が剣で攻撃するが、宗介は最小限の動きで的確に避ける。
「チェインブレイク」
宗介は武器を鎖鎌に変形させると、騎士を鎖鎌の鎖で巻きつけて、鎖を爆発させた。
「う、ガハッ……!」
再び倒れ臥す、騎士。
「お前は何も守れはしない。人も! 世界も! そして、お前の心もだ! あははははは! はははははははははは!!」
「くっ! 何をわかったような口を!」
俺は、宗介を敵として認識する。
ここで奴を倒さなければならない!
「さぁぁぁぁぁぁ! この菊池宗介を止めてみろぉぉぉぉ! 俺は世界を殺すぅぅぅぅ!!!」
「俺がお前を止めてみせる!」
俺は宗介の間合いに近づく。
「遅い」
振りかぶった剣は受け流され、顔面にナイフが突き刺さる。
剣の加護のおかげで、頰に切り傷ができただけで済んだが、完全に俺を殺す攻撃だった。
「遅い」
宗介の姿が消えると、一瞬で周囲にナイフのドームができ、俺に向かって飛んでくる。
「はああああああ!!」
俺は180度埋め尽くされたナイフを剣でなんとか防ぐ。
足や腕に刺さるが、剣の加護のおかげで大きい怪我にはなっていなかった。
「遅いぃぃ!!!」
宗介は武器を手斧に変化させる。
「トマホォォォォォゥクゥ!!」
そして、斧を投擲する。
「レン様!」
ウェルトが盾で宗介の投擲した斧を防ぐ。
「ぐっ! ソースケさん!」
「ウェルトォォォォ! お前はここで殺してやるかぁぁ!」
「あの時はすまなかったと思っている! だが、今は波の時だ!」
「だから殺すんだよオォォ!!」
もはや、宗介は話の通じる状態ではなかった。
「ウェルト、テルシア、ファリー! あの時俺を嵌めた罪、今ここで断罪してやる。どうせ死ぬんだ。ここで俺が殺してやる! はははははははははは!!」
宗介は再びスキルを使うと、また消える。
「うわあああああああああ!!」
「きゃああああああああああ!!」
「ウェルト! テルシア! くそおおおおお!」
俺は宗介を殺すために剣を振るう。
宗介は平然と俺の剣を紙一重で回避して、手痛い反撃を食らわせてくる。
「流星剣!」
「流星投擲!」
俺が必殺スキルの流星剣を放つと、それに合わせて宗介も流星シリーズの技を使ってきた。
全て相殺される。
おかしい、まるで、宗介が勇者の武器を持っているかのようであった。
「もしかして、あの武器は七星武器の投擲具では?」
「……どう言うことだ?」
ファリーがそう推察する。
「でも、なんでソースケさんが投擲具を? 投擲具の勇者様は他の国にいるはずなのに?」
「そう言う推察は地獄でしていろ」
宗介はそう言うと、再び一瞬で消えて、ナイフのドームを作り出す。
そして、一斉に降り注ぐ。
剣でなんとか打ち払うものの、ダメージが蓄積していく。
あの攻撃は一体なんだ?
俺たちは地面に倒れ伏した。
「クックック……。さあ、トドメだ!」
宗介はそう言うと、武器を禍々しいナイフに変化させた。
俺の胸ぐらを掴み、首筋にナイフを突きつける。
ぐ、まさかのゲームオーバーか。
やはりあの時、宗介が離脱したのがフラグだったのだろうか?
だが、宗介の動きがピタリと止まる。
「う、ぐ、が! な、何を……!」
宗介はそう言って頭をかきむしる。
ナイフの柄から手を離しているにもかかわらず、ナイフは地面に落ちない。
「レン様! 今のうちに!」
「だが、宗介が!」
「いつ、再び殺しにくるかわかりません! 早く波を鎮めるのが勇者様の役目です!」
バクターに諭され、俺はそうだったと思い至る。
まるで何かに洗脳されたようにしか見えない宗介を置いて、俺たちは撤退した。
くそっ! 俺は強いんじゃなかったのか?
宗介にまるで歯が立たなかった事に俺は悔しい思いを抱き、波の本体の方向に撤退した。
宗介は、時を止めるスキルを使っています。