どうぞ、想像しながら呼んで見てください。
それでは、本編始まります。
友希那はすぐに見つかった。
駅前の大通り入口付近にいたのだ。
涙を流して.......。
そっと近づく。
湊さん.......
「......っ!.......貴方.....どうして.......」
友希那は咄嗟に、袖で涙を拭おうとした。
それじゃあ目が腫れちゃうよ
もう遅いと思うけど そう呟きながら、
ポケットからハンカチを取り出し、涙を拭った。
彼女の目は赤くなっていた。
「........どうしてここに........?」
涙声のまま、再度聞いてくる。
少し気になったから.......って言うのもあるけど。
これを渡しに来たんだよ
そう言ってスタジオに落ちていた猫の刺繍の入ったハンカチを渡した。
「......これって」
1度拾ったことがあったから、すぐにわかった
そう、初めて彼女の言葉を交わした日。
ほんの少しの時間だったけど、不思議と心地のいい瞬間だった。
ずっとリサ達と悩んでたんだ........
どうすればRoseliaの音を取り戻せるんだろう.......って
「.......」
友希那は俯いたまま、耳を傾けてくれていた。
最初のRoseliaのことはわからないけど......湊さんの言っていることは
少しわかった
昔のような緊張感のある張り詰めた空気。それが消えたために生まれた今の雰囲気。
湊さんはさ。自分で考えて、自分のやり方で動いていた
でもそれでよかったのかな?
「.......え?」
友希那は顔をあげて、こちらを向いた。
友希那は誰にも何も言わず、昔のように練習して、取り戻そうとした。
それじゃあ、バンドじゃないよ
「.........」
1人で悩まず、抱え込まず、みんなに相談すべきだったと思う
それはきっと彼女もわかっている。
でも........こんな風になったのも、よかったかもしれない
「......どうして?」
友希那の方を向いて、目を合わせる。
本音でぶつかり合う.......それこそバンドなんじゃないかな?
「.............」
バンド組んだこともない自分が言えることじゃない。
「ふふっ。貴方は何を言っているの?」
自分でもわからないよ。でも........
「でも、何?」
いや、なんでもないよ
「友希那先輩?」
後ろから聞きなれない声が聞こえてきた。
「........戸山さん?」
それは、花咲川の制服?
「はい!ところでそっちの人は」
彼女の後ろから同じ制服を来た女の子達が走ってきた。
「おい香澄!急に走るなよ!」
ツインテールの少女を筆頭にこちらに近づいてくる。
「あれ?先輩じゃないですか!」
その中に見慣れた少女がいた。
ああ、沙綾ちゃんか
いつも行っているパン屋の少女だった。
「沙綾、知り合い?」
その隣のロングの子が聞いた。
「うん、いつも家のパン買っていってくれる先輩だよ」
「あ!この前チョココロネを譲ってくれた人だ!」
1度店で見かけた、大量のチョココロネを買っていく少女もいた。
どうやら彼女達は「Poppin’Party」というバンドを組んでいるらしい。
そのライブをするということで、浮かない顔の友希那に声をかけに来たようだ。
確かにコロッケ屋のあの子や喫茶店の娘さんもバンドを組んでいた気がする。
こう考えると、ほとんどの知り合いがバンドやってるような....。
「そういえば、友希那先輩と一緒にどうしたんですか?」
「まさか先輩、湊先輩のこと泣かせたんですか?」
「えええええ。悪い人?」
おいおいおい!冤罪だ冤罪!
確かにまだ目元が赤いから、傍から見たらそう思うのは仕方がないと思う。
「違うのよ......彼が慰めてくれたのよ」
目元を拭いながらそう返事をする友希那。
「ところで、友希那先輩、大丈夫ですか?」
戸山さんが友希那の顔を伺う。
「ええ。彼のおかげで落ち着いたから大丈夫よ」
ほっとして息を吐いた戸山さんは、真剣な顔つきになって言った。
「........あの!ライブ、来てくださいっ!」
突然の申し出に、最初に声をあげたのはツインテールの子だった。
「は、はあ!?おい香澄っ!なんでそうなるんだよ!?」
「友希那先輩達の力になりたいけど、私上手に
アドバイスとか、無理だし.......」
突然ではあるものの、彼女の心からの激励であると感じた。
「あの、私達の演奏、Roseliaのみなさんみたいに
上手じゃないですけど、観てくれたら、
きっと元気になれると思いますっ!」
「戸山さん.......」
「そうですよ。先輩!」
それに続いて沙綾ちゃんも誘ってきた。
ああ、そうだな
『みなさん、こんにちは〜〜!
Poppin’Partyですっ!それじゃあ早速、1曲、いっきまーっす!!」
Roseliaとは全く違う、ノリノリで明るい曲。
ステージ上の5人は笑顔で、楽しそうに輝いていた。
ふと、横の友希那を見る。
これを見て、どう思っているのだろう。
Poppin’Partyのライブが終わり、一息ついた。
「友希那せんぱ〜〜〜い!!」
飼い主を見つけたペットのように、こちらに駆け寄る戸山さん。
「戸山さん。お疲れ様」
それに続いて、他の4人も来た。
「今日の演奏、どうでしたか?
キラキラドキドキ、してもらえましたか?」
「うん、したよ!」
「おたえに聞いてるんじゃねーっつの!」
どうやら彼女はこういう子らしい。
しかし、彼女の次の言葉に驚かされた。
「でも、私達がキラキラドキドキできてなくちゃ、
絶対聴いてる人には伝わらないと思う。だから、大事なことだよ」
...........!
「自分達が.......」
......この子本当はわざとやっているのではないか?
「あなた達、いつもどんな気持ちで演奏をしてるの?」
友希那の疑問に、彼女らしい答えが返ってくる。
みんなのことが大好きという気持ちを歌にのせ、届いてほしい。
自分達のその気持ちを感じてほしい。みんな同じ気持ちで演奏している。
正直「キラキラドキドキ」についてはよく分からないが、大事なことが伝わってきた。
友希那も感じるものがあったようで、表情を変えた。
戸山さん達から、またRoseliaのライブを見に行きたいこと。
沙綾ちゃんにまたパン屋に行ったら話をすることをお互い伝えて、帰路に着いた。
友希那と2人での帰り道、彼女が口を開く。
「.......考えたこともなかったわ。
みんながどんな気持ちで演奏しているかなんて」
ああ、誰だってそうだ。自分以外の周りの気持ちを理解するなんて、口で伝えないとわからない
「ええ。同じ気持ちで演奏しているかなんて、なおのこと
気にしてなかったわ」
でも、わかったんだろ?
「ええ。私達の音を取り戻すこと.......それは、私達が
Roseliaである誇りを取り戻すことなのかもしれないわ」
ようやく友希那が納得した。
しかし、
「あと少し.......あと少しなのに......」
まだ.......見つからないのか......。
だったら、向き合えばいい
「え?」
2人の間に少しの静寂が生まれた時、口を開いた。
孤高だった貴女と、今は違う。今の貴女にはなにがある?
自分は何がしたいか.......その気持ちと
「.......Roseliaとして......歌いたい」
そうだ。それが今、貴女がやるべき事。誇り取り戻すためにすることだ
そう言って、一歩前に出て振り向く。
「私に......できるかしら」
街頭に照らされた彼女は、やっぱり綺麗だった。
できるさ.......絶対
それから数日後。
ここ最近の日課である、作詞の手伝いのために友希那に付き添っていた。
友希那達が本当のRoseliaになった時、今までの付き合いがあったこともあり、Roseliaのサポートとして参加することになった。
そのひとつとして作詞の手伝いである。
なあ、今日はどこに行くんだ?
すぐ隣を歩く友希那に声をかける。
「そうねえ.......」
そう言って向かったのは学校近くの公園。今日は周囲に誰もおらず、静かだった。
静かな場所に来たかった、というわけではないことはわかる。
鈍感ではない自分には、どうしてもこの空間にはまさかと思ってしまう。
2人で並んでベンチに座る。
その際、ハンカチを敷くにも忘れない。
「ありがとう」
最近彼女との距離が妙に近い。
その所為でより意識してしまう。
沈んでいく太陽を眺めているうち、彼女が立ち上がり、こちらを向いた。
友希那......?
夕暮れに照らされる彼女の顔は、決してその光の所為ではないと理解する。
両手を膝の前で握りしめ、俯いていた顔を上げた。
「ずっと......考えていたの。いつからこんな風に思うようになったのかを」
...........
「私達のために、貴方は色んなことをしてくれた。いつもそばに居てくれた」
その瞳は、まっすぐにこちらを見つめてくる。
「優しい貴方は、誰にでも親切で、すぐに仲良くなる。それを見ていると、胸が痛むの」
それって.......
わかってしまう。友希那の今の気持ちを、自分に対する想いを。
「不安な時、いつも貴方の顔が思い浮かぶと、自然にその不安がなくなる。貴方と一緒にいると、楽しくて、胸が高鳴る」
彼女の顔は真っ赤に染まっていた。
「やっとわかった。私は.............貴方のことが好き。誰よりも.......貴方が大好きなの」
友希那の顔は、今まで見たRoseliaのボーカルとしての彼女ではなく、
1人の少女としても湊 友希那だった。
「返事を.......聞かせて?」
無言で立ち上がる。
近づいていくと、友希那は目を逸らして、恥ずかしそうにしていた。
........そっか
その姿は煌びやかで美しい。とても愛おしいと感じた。
だから強く抱きしめた。
「っ!」
........同じ気持ちだよ
「それって.........」
ああ。友希那が好きだ。大好きだ。誰にも渡したくないぐらい好きなんだ
そう口にすると、友希那の瞳から涙が零れた。
それはあの時のような悲しみの涙ではなく━━━━━━━
「ありがとう.......」
━━━━━━━━喜びの涙だった。
「あら?」
パジャマに着替えを済ませ、彼の部屋に戻ると
彼はベットの壁に寄りかかり眠っていた。
「........疲れたのね」
Roseliaの練習の付き添い。ライブ衣装の相談や買い物。ライブの打ち合わせ。
そして今はセットリストの相談。
今日だけでかなり忙しそうにしていた。
寝てしまうのは無理もない。
「................」
ゆっくりと彼に近づく。
手にはセットリストの紙とライブステージの図面を持っていた。
「本当........熱心ね」
彼にはずっと助けられてきた。
メンバーが自分たちの音を見失った時や誰かが欠けて、練習どころじゃなかった時。
そんなときすぐに動いて、支えてくれた。
1年前、ただの隣の席で、興味がなかった。
けれど他の人とは違う何かを秘めている。
きっとあの出会いは、奇跡だったんじゃないか。
その表情を見ると、そう感じる。
自然と口元が緩む。
彼を起こさないよう、膝の上に頭を乗せた。
所謂膝枕だ。
「........起きてないわよね?」
普段は大人びた雰囲気を持っている彼。
その寝顔は、子供のようだった。
「ふふっ...........可愛い」
そっと頭を優しく撫でる。
彼を綺麗な黒髪が、指の間を抜ける。
いつもは自分がされていること。
たまにはこうするのもいいと思った。
「.......貴方のおかげで、私は幸せよ」
彼は起きる気配がない。
視線の先は、彼の唇。
ゆっくりと顔を近づける。
鼓動が一層、早くなる。
彼の顔が間近に迫る。
目を閉じようとした刹那。
「あ...」
彼が目を覚ました。
いつの間にか眠っていたらしい。
意識が戻ったのは、後頭部に柔らかい感触がした時だ。
「........起きてないわよね?」
まだ寝ていると思っているのか、機嫌のいい声が聞こえてくる。
「ふふっ...........可愛い」
髪を撫でる小さな手の温かさを感じる。
友希那からこうされるは、初めてだった。
彼女の風呂上がりのシャンプーの匂い。少し火照った太ももの温もり。
本当に心地いい。
「.......貴方のおかげで、私は幸せよ」
そんなこと言われれば、我慢が出来なくなってしまう。
そろそろ寝たフリはやめよう。
そう思って目を開けると、友希那の顔が目の前にあった。
「あ...」
気づいた友希那は羞恥で顔を赤くし、離れようとする。
それを逃がすまいと、腕を掴んで引き寄せる。
「急にな.......〜〜〜〜〜っ!」
急に何を、と口にする前に膝枕の状態から頭を抑え、即座にキスをした。
柔らかい唇の感触。
「んっ........んんっ」
目をつぶり、本能のままに唇を貪る。
部屋には唇を重ねる音が響く。
やがて息継ぎのため、お互い唇を離す。
「はあ......はあ........突然なにするのよ......」
.......あんなこと言われたら、そうしたくなるよ
「あんなこと........っ!いつから気づいて?」
独り言として呟いていた本音を、まさかバッチリ聞かれていたことを知った彼女は、さらに顔を真っ赤にした。
「.........意地悪」
枕を抱きしめ、そっぽを向く仕草が可愛かった。
悪かったって、許してくれ
「......ふんっ」
不機嫌です、と言わんばかりの反応に、頬を掻く。
できることならなんでもするから.......
その言葉に反応した友希那が、こちらを振り向く。
「......なんでも?」
さっきの態度が嘘のように、ずんずん近づいてくる。
「.......本当になんでもしてくれるの?」
その迫力に、首を縦に振るしかなかった。
「それじゃあ..........」
そういって抱えていた枕をこちらに投げてくるのを、受け止める。
突然な━━━━━
言葉は続かなかった。
友希那に唇を奪われたからだ。
甘い香りが、鼻孔をくすぐった。
唇を離し、友希那は言った。
「...........さあ、今日は私も満足させてくれる?」
あの時の行動は、決して間違いじゃなかった。
Roseliaは本物のバンドとして成長していった。
そして、彼女とこうなるなんて、1年前まで有り得なかった。
でも、今は恋人として過ごしている。
その幸せを、再確認したのだった。
とりあえず友希那とイチャイチャしよう エピソード1[完]
3週に渡る2人の出会い(馴れ初め)でございました。
久しぶりに2章を見直したら........はい(´・ω・`)
最後の部屋でのことに関しては、友人のハメ作家から頂いたシチュエーションです。長らくお待たせして申し訳ない。
さて、次回なのですが、いつも通り提案されたシチュエーションを主に書きますが、ひとつ私が考えている話があります。その場合はある方からの許可が必要なんですよね〜。なのでどうなるかはわかりません。
Twitterとこちらでアンケートしようと思いますので、是非よろしくお願いします。
それでは次回があったらよろしくお願いします!
シチュエーションアンケート2弾
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