「生徒会は技術スタッフとして1年E組の司波達也君を…」
「そして風紀委員は同じく1年E組の司波零司君を推薦する」
周りの人達は受け入れる所か反発する言葉が多かった
「達也さんの実力も知らないくせに」
「うん、私も達也さんに担当してもらいたいな」
その言葉が聞こえたのか聞こえなかったのかは置いておいて零司はいつかのように居心地の悪さに滅入っていた
「(ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙帰りてぇ〜、んだよ兄さんだけでいいだろ、かの有名なミスターシルバーが九校戦のエンジニアになるんだからそれだけで優勝確実じゃん!なんで俺まで!)」
そんなことを考えてるとも知らない周りの人達はどんどん会話が進んでいく
「納得が行かない者が居るようだが、司波の技能を実際確かめてみるのが一番だろう」
「具体的にはどうする」
「実際にCADの調整をやらせてみればいい…なんなら俺が実験台になるが」
克人の言葉に1人の生徒が危険だといいやらせるのを拒んだ
「では、彼らを推薦したのは私ですからその役目は私がやります。」
「いえ、その役目俺にやらせてください」
そこに立ち上がったのは桐原だった。
達也達は学校にあるCAD調整室に来ていた。
「課題は競技用CADに桐原先輩のCADの設定をコピーして、即時使用可能な状態にする。ただし起動式そのものには手を加えない…で間違いありませんか?」
「ええ、それでお願い」
確認した達也に、真由美が笑顔で頷いた。しかし達也は首を縦にでは無く横に振った。
「如何かしたの?」
「スペックの違うCADの設定をコピーするのは、あまりお勧め出来ないんですが……仕方ありませんね。安全第一で行きましょう」
「?」
真由美をはじめ、複数人が首を傾げた。普段からCADの設定のコピーをしているので、何故達也が渋っているのかが分からなかったのだろう。
しかしエンジニアとしてこの場に参加しているメンバーは頷いたり面白そうな表情を浮かべたりと反応は様々だった。
「それじゃあ桐原先輩、測定しますので手を置いて下さい」
「分かった」
桐原のCADのデータを半自動的に抜き出し、競技用CADにコピーする……のではなく、達也は調整機に作業領域を作りそこに保存した。普通とは違う手順に今度はエンジニアのメンバーが首を傾げた。
想子を計測して自動的にCADにそのデータが組み込まれて普通は終わりなのだが、此処からがエンジニアの腕の見せ所。自動調整に頼らずに精密な調整を行うのだ。
「ありがとうございます。もう外してもらって結構ですよ」
桐原の想子波特性の計測が終わり、後は微調整を施せば終わりなのだが、何時まで経っても達也は作業を始めようとしない。測定結果が表示されているモニターをジッと見ている。
周りで作業手順を忘れたのかとささやかれていたが、あずさにはそうは見えなかった。オロオロとしてるのではなく、怖いくらいに一点を見つめているのだ。
そしてついに好奇心を抑えられなくなり、達也の肩口からひょっこりとモニターを覗き込んで……
「へっ!?」
乙女には似つかわしくない声を出したのだった。そしてあずさの反応が気になったのか、真由美と摩利、克人に鈴音、桐原も背後からモニターを覗き込んで息をのんだ。
普通計測結果はグラフ化されて表示されるのに、今モニターに表示されてるのは画面いっぱいに流れていく数字だったのだ。
それが分かるのは、あずさがエンジニアとして優れた才能を有しているからなのだが、それ以外の人間は今時珍しいキーボードオンリーの調整方法とその速度に目を奪われていた。
「終わりました」
達也に手渡されたCADを桐原が起動し、感触を確かめる。
「如何だ桐原」
「全く違和感が無いですね。何時も使ってるのと同じみたいです」
「確かに腕はあるようですけど、同じ結果なら我々にだって出来ますよ」
頑として達也の実力を認めたくない人たちは、調整完了時間が普通だとか、珍しかったけど特筆すべき事は無いだとかあれこれ難癖をつけてきた。
「私は司波君のチーム入りを強く支持します。彼が見せてくれた技術はとても高度なものです。全てマニュアルで調整するなんて私には真似できません!」
「桐原個人のCADは競技用のものよりハイスペックな機種です。使用者にその違いを感じさせなかった技術は高く評価されるべきだと思いますが?会長、私は司波のエンジニアチーム入りに支持します」
「はんぞーくん?」
真由美は今まで二科生だと蔑んでいた服部が達也を支持したことに驚いた
「九校戦は当校の威信をかけた大会です。1年生だとか、前例がないとかそんなことにこだわっている場合ではありません」
「服部の指摘は最もの物だと俺も思う。司波は我が校の代表メンバーに相応しい技量を示してくれた。俺も司波のチーム入りを支持する」
そうして達也の九校戦メンバーに選ばれた
「さて、次は零司君の番だな」
「やっぱりやらなきゃダメですか?」
「頑張って♪」
メンバー入りが決まった達也は零司に耳打ちする
「零司、手を抜いたら許さないからな」
「怖いですお兄様…はぁ仕方ない、服部先輩、手を加えてない競技用CADをひとつ貸してくれませんか?」
「これでいいか?」
「ありがとうございます。では始めましょう」
そういいまず零司は手を加えていないCADのプログラムを一通り見てから桐原のCADをコピーした競技用CADに手を加え始める。零司も達也同様、完全マニュアル調整で行っている。
「終わりました。」
「なぁ司波弟、何やってたんだ?」
桐原はみんなが思っていることを代弁して喋った
「では解説を交えながら何をやっていたのか皆さんに説明しましょう。まずこっちが服部先輩から頂いた手を加えていない競技用CADです。もう1つは兄さんがやった桐原先輩のCADをコピーした競技用CADです。」
みんな興味深そうに解説に聞き入る
「まず俺は手を加えていないCADのグラフとプログラムを一通り見てからコピーした競技用CADを一度削除し、プログラムを一から組み直しました。」
その行動に周りが騒ぎ出す
「ではこちらをご覧下さい。左が手を加えていないCADの、右が一度削除し組み直したCADのグラフとプログラムです。」
そこに出たのはグラフの違いはどちらとも変わらないが右のプログラムは文字数列が圧倒的に少ない
「あの、一つ質問いいですか?」
「なんですか?中条先輩」
「何故左のプログラムは右のプログラムより文字数列が少ないんですか?」
「標準の競技用CADにあった無駄なゴミを綺麗してから左のCADに打ち込んだだけですよ」
「そんなことが…」
周りは高等な技術をさも平然とやってのける零司に圧倒されていた。そのまま零司も九校戦メンバーに選ばれた。
「あれ?ねえ兄さん、俺別に難しいことしてないよね?なんでメンバー入りするんだ?」
「さぁ?」
周りの普通と達也達の普通がズレていることを彼らは知らない
食事を終え、深雪が片付けをしている時に端末に通信を知らせる合図が来た。相手は非通知だが、司波家にとってこれは別に珍しい事では無い。
「お久しぶりです。……狙ったのですか?」
「お久しぶりです、風間少佐」
『何の事だか分からないが……久しぶりだな、特尉。そして四葉殿』
画面に映ったのは不得要領な顔をした旧知の顔だった。
「その呼び方をすると言うことは秘匿回線ですか……よくもまぁ毎回一般家庭用のラインに割り込めるものですね」
『簡単では無かったがな。特に特尉の家のセキュリティーは一般家庭のわりには厳重過ぎるからね』
「最近のハッカーは見境無いですからね。それにあまり深くまで侵入しようとしなければカウンタークラックは発動しませんよ」
『新米オペレーターには良い薬になったようだ。さて、まずは事務連絡だが、本日『サード・アイ』のオーバーホールを行い、部品をいくつか新調した。これに合わせてソフトウェアのアップデートと性能テストを行って欲しい。』
通信の相手、陸軍一○一旅団・独立魔装大隊隊長、風間玄信少佐は端的に用件を伝えてきた。
「分かりました、明朝出頭します」
『いや、学校を休むほど差し迫った用件では無いのだが……』
「いえ、次の休みには零司と共に研究所の方で新型デバイスのテストがありますので」
『本官が言えた事では無いが、二人とも高校生になってますます学生らしくない生活になってるな』
「この言葉は好きじゃ無いですが、仕方ない事です」
達也の諦めにも似た言葉に、風間少佐も頷きそれ以上のツッコミは無かった。
『では次の話だが、聞くところによると特尉、今夏の九校戦には二人とも参加するようじゃないか』
「……はい」
「お耳が早いですね、少佐」
達也達が九校戦に参加する事が決定したのは数時間前なのだが、その事をもう風間が知っている事に達也は誰が伝えたのか気になったが、聞いても答えてくれないと分かっているので好奇心を捻じ伏せた。
『会場は富士演習場南東エリア。これは例年の事だが……気をつけろよ、達也それと零司殿も』
呼び方が「特尉」から「達也」と「四葉」から「零司」に代わった事で、この話は風間少佐としてでは無く達也と零司の一友人の風間玄信としての進言だと即座に理解した。
『該当エリアに不穏な動きが確認されている。それに国際犯罪シンジケートの構成員らしき姿も確認されている。非常に嘆かわしい事だ』
「国際犯罪シンジケートと仰いましたが、もしかして無頭竜ですか?」
『……よく知っているな。内情の壬生に調べさせて漸く分かったのに』
「壬生さんと言うと、第一高校所属、壬生紗耶香の御父君ですよね」
『面識があるようだな。それで達也、何故無頭竜の事を?』
「ブランシュ討伐後、本家に帰宅した際に母上から聞きました。」
『なるほど、四葉殿なら我々より先に情報を入手していてもおかしくは無いな』
「ですが、詳しい情報は一切ありませんので、少佐の情報は非常に役に立ちます」
「こちらもなにか情報が入ればすぐにでも」
『そうか、壬生に調べさせた甲斐があったと言うものだ。明日は無理だが富士では会えるかもしれないな』
「楽しみにしてます」
『私も楽しみだ……おっと、少し長く話しすぎたようだ。新米が焦ってるからそろそろ切るぞ』
如何やらネットワーク警察に回線割り込みの尻尾を掴まれたようだ。
通話を切った後の達也は少し息を吐き地下室に向かった
〜To Be Continued〜
CADの基本プログラムを完全に把握しているわけじゃないので大目に見てくれると嬉しいです。
それではまた次回!