地下室に向かった達也のために紅茶を入れて向かおうとしていた深雪を引き止めた
「深雪、兄さんの所に行くんだろ?ミラージュバットのコスチュームを着ていくといい」
「さすが零司お兄様!名案ですわ!」
深雪は急いでミラージュバットのコスチュームを着て達也のところに行く。その光景を見てコーヒーを飲みながら呟く
「兄さんから聞いてたけどそろそろ飛行術式のデバイスが完成する頃だろう…さてと」
俺はある場所へ連絡を入れる
「もしもし、葉山さんですか?」
『おや、零司殿ではありませんか?最近よく電話を頂きますね』
「すみません、こちらも情報だけでも持っておきたいと思いまして…母上は?」
『真夜様はお眠りになられました。起こしてきましょうか?』
「いえ、大丈夫です。」
『かしこまりました。では用件と言うのは?』
本題に入る
「はい、まず先程風間少佐からの連絡が入り、今回の九校戦には無頭竜が干渉すると聞き、詳しい情報が欲しかったため連絡を入れた次第であります。」
『そうですか、申し訳ありませんがこちらが得ている情報はあまり詳しくはありませんが、今回の九校戦、無頭竜の標的は第一高校の生徒…だけとしか』
「そうですか、お手数をおかけします。それだけでも充分です、そろそろ兄さん達が戻ってきそうなのでここら辺で」
『そうですか、では九校戦は真夜様とご拝見させて貰います』
「エンジニアですが、ありがとうございました葉山さん。」
葉山との電話を切ると直ぐに達也が深雪と共に地下室から上がってきた
「誰と電話をしていたんだ?」
「知り合い」
嘘はついていないが葉山さんの名を出すのはやめておこうと考えた
後日フォア・リーブス・テクノロジー、略称FLTのCAD開発センターは達也たちの住まいから交通機関を乗り換えて二時間の辺鄙な場所にある。実は電動二輪を使えば半分の時間で着くのだが、生憎天気が悪い為二人乗りは避けたのだ。通いなれている達也だが、逆に言えば通いなれているからこそ、長距離の移動は面倒でしか無いのだ。
「あっ、御曹司!」
研究施設の中の一室に達也と零司、深雪が入室すると、それに気付いた研究員が群がってくる。非常に珍しい事だが、此処では深雪では無く達也が歓迎されるのだ。
御曹司と言う呼び方も、初めは重役の息子だからと言う嫌味で使われていた言葉なのだが、何時しか次期リーダーを期待しての呼び方に変っていた。皆が好意でそう呼んでくれているのを達也も分かっているので、迂闊に「やめてくれ」とは言えない状態になってしまっているのである。
「お邪魔します。牛山主任はどちらに?」
深雪が自分が褒められている時以上に喜んで、上機嫌の微笑を振りまいて研究員たちの余所見を誘発してるのに若干呆れながらも、達也は目的の人物の所在を初めに話しかけてきた研究員に尋ねた。
「お呼びですかい、ミスター」
「スミマセン主任、お忙しいところに」
「ダメダメ! 此処に居る私たち全員はアンタの手下だ。手下に謙りすぎちゃ示しが付きませんぜ」
「皆さんは親父に雇われてるのであって、俺の部下と言う訳では……」
「何を仰る。天下のミスター・シルバーともあろうお方が。俺たちはアンタの下で働けるのを光栄に思ってますよ」
「それを言うなら、名実共に此処のトップはミスター・トーラス、貴方じゃないですか」
FLT CAD開発第三課、此処は世に言う「シルバーモデル」の開発部署だ。そして一切の情報が非公開の謎の天才技術者の正体を知っている人間が揃っている場所でもある。
「やめて下さいよ。俺は「ミスター」や「トーラス」なんて柄じゃねぇんです、それに俺はもうトーラスじゃねぇですよ、2代目トーラスは御曹司の隣にいる弟さんじゃねぇですかい。アンタ達の天才的なアイディアを実現する為に、ほんのちょっと手伝っただけなんですから。御曹司が未成年って事で単独の開発権利者だとマズイって事で仕方なく名前を連ねてるだけでさぁ」
「牛山さんの技術力がなきゃループ・キャストは実現しませんでしたよ。俺にはあの考え方は出来ませんでしたからね。牛山さんに比べれば俺にはハードの知識も技術も劣ってますし、製品化出来なければ技術も理論も役に立ちませんよ」
達也の謙遜とも取れる言葉に、牛山さんはむず痒そうに頭を掻いて降参を示した。
「止め止め! 如何やっても口では御曹司には勝てねぇ。それで、今日は何しに来たんです? まさか俺たちの顔を見に来たってこたぁ無いでしょ?」
第三課で働く研究員の殆どが男性。同姓の達也が好んでくるような場所では無い事は牛山も分かっている。しかし数人居る女性研究員は達也の事を尊敬以上の感情の篭った目で見ている事も知っている。
「オーケー牛山さん、今日はこれです」
もちろん達也も女性研究員の視線には気付いているのだが、その事を話題にしようとはしない。
「これはもしや……飛行術式ですかい?」
「牛山さんが改良してくれたおかげで、簡単にシステムの書き換えが出来ましたよ」
元々は達也が組み立てた試作用ハードを牛山がより高度に改良したものが、牛山に渡された意味を、達也を手伝っている第三課の全員が理解した。
「それで、テストは……」
「何時ものように俺と深雪で。ですが俺たちは普通の魔法師とは言えませんから」
息を呑む音が部屋中から聞こえた。それだけ三大難問の一つが覆されたと言う事実は大きな意味を持つのだ。
「おいテツ、Tー7型の手持ちは幾つだ?」
「十機です」
「馬鹿野郎!何で補充しとかねぇんだよ!部品の発注なんて後回しだ!あるだけ全部に御曹司のシステムをフルコピーしろ!ヒロ、テスターを全員呼べ!何?休みだぁ?そんなの関係ねぇ!すぐに呼び寄せろ!分かってんのか?飛行術式だぞ!現代魔法の歴史が変るんだ!」
急に慌しくなった研究室でただ一人、深雪だけが変らぬ笑顔で佇んでいた。
テスターによるテストは予定時間を大幅に越えて行われた。実験が上手く行かなかった訳では無い。九人のテスターが希望して有線ケーブルから無線に切り替え、更には空中鬼ごっこを始めてしまったのだ。
「お前ら全員阿呆だろ。常駐型魔法がそんな長時間使える訳ないだろ」
魔法力が尽きるまでテストを続けたのだが、幸いにして後遺症が残るような事態にはならなかったのだ。
「馬鹿やったツケは自分で払えよ。超勤手当てなんて出さねぇからな」
テスターからブゥブゥと文句が垂れているのを完全無視して、牛山は達也に話しかけた。
「何か気になる事でもあるんですかい?」
達也の表情から、牛山は達也が結果に満足してない事に気がついた。
「欲を言えばきりが無いのですが、今のままでは負担が大きすぎますね」
「そりゃ、普通の魔法師の保有する想子なんぞ、御曹司やお嬢様と比べれば微々たるものですからね」
「CADの想子自動吸引スキームをもっと効率化しなくては……」
「兄さん、ならソフトじゃ無くハードで処理すれば少しは負担も減るんじゃないかな?。タイムレコーダーも専用回路をつけた方がいい」
「さすが2代目トーラスだな」
零司は照れくさそうに頭を掻き、テストが終了した。第三課を出た廊下で2人の男性と鉢合わせた。
それは達也と深雪の父親である司波龍郎と四葉家内序列4位の青木だった
「これは深雪お嬢様、ご無沙汰致しております。零司様もお変わりないご様子で」
「お久しぶりです青木さん、お父様もお元気そうで」
「お久しぶりです青木さん」
深雪は棘がある言い方で、俺はあえて青木さんと同じやり口で返答する。
「青木さん、ここにいらっしゃるのは私と零司お兄様だけではありませんが」
深雪は達也にも挨拶をしろと言いたそうな話し方をするが
「お言葉ですがお嬢様、この青木は四葉家の執事でございますれば、一介のボディーガードに例を示せと仰せられましても秩序というものがございます。」
「私の兄ですよ?」
深雪は苛立ち始める
「恐れながら、深雪お嬢様は四葉家次期当主の座を家中の皆より望まれているお方。お嬢様の護衛役に過ぎぬそこの者とは立場が違います」
深雪の怒りが爆発する前に達也が止めに入る
「おや、青木さん…口を挟んで失礼かと存じますが随分穏やかならぬことを仰る。今のご発言は他の次期当主候補の皆様、ましてや現当主のご子息である零司に対して余りにも不穏等ではありませんか?それとも叔母上は後継者を指名なされたのでしょうか」
正直母さんは俺以外を当主にするつもりはないのだが、あえて何も言わずにこのやり取りを見ていた
「(青木さんも良くもまぁ当主の息子である俺がここにいることを知りながら、深雪に当主にさせたがるよね)」
そんなことを考えてはいるが口にはしない
「真夜様はまだ何も仰せになられてはいない」
「これは驚いた!四葉家で序列第4位の執事である貴方が次期当主候補者である深雪に憶測を吹き込んだという訳ですか…さて、秩序を乱しているのはどなたなのやら…」
達也の正論に青木は苦虫を噛み潰したような表情をする
「憶測ではない、心同じくする者同士思いは通じる!心を持たぬ似非魔法師如きに分かりはしないだろうが」
青木は――彼は、深雪の前で言ってはならない事を言った。青木の発言を聞いてすぐに、辺りから何かが軋むような音が聞こえてくる。急激に下がった気温を元に戻そうと空調が最大で起動しているにも関わらず、気温低下は抑えられない。
だが、軋むような音と共に気温の低下は収まった。達也が左手が指差すと壁に張り付いていた霜や、深雪の周りに渦巻いていた冷気が消えた。
蒼白になった妹を片手で抱き寄せ、斬りつけるような視線を青木に向けた。
「その心を持たぬ似非魔法師を作ったのは、俺の母親にして四葉家現当主四葉真夜の姉である司波深夜…旧姓四葉深夜ですが。俺を似非呼ばわりするという事は四葉家当主とその姉を誹謗しているということになるんですが」
「達也、やめなさい。お母さんを悪くいうものでは無い。お前が母さんを恨む気持ちも分からないではないが」
「親父、それは勘違いだ。俺は母さんを恨んでなんていない。行こう深雪、零司」
「分かったよ兄さん…」
零司は龍郎を通り過ぎる瞬間、龍郎に話しかけられる
「ところで零司君、何故君が司波の性を名乗るんだね」
「あなたが知る必要はありません。サイオン保有量だけが取り柄の種馬が」
「なっ!!」
「零司、置いていくぞ」
「待ってよ兄さん!!」
俺達はFLTを後にする。
月曜、達也と零司が教室に入るなり、クラスメイトから「おめでとう」と言われた。一瞬何の事か理解出来なかった達也と零司だったが、すぐにエンジニアとして九校戦メンバーに選ばれた事だと理解した。
「みんな情報が早いな……」
「ホントですね。ついこの間決まったばかりなのに」
「そう言えば、今日の発足式が正式発表じゃなかったっけ?」
美月もエリカも達也が選ばれた事を誰かから聞いたようで、如何やら彼女たちが率先して噂を流してる訳では無さそうだった。恐らく部活の先輩に聞いたのだろうと、俺たちはエリカの質問に冴えない表情で頷いた。
「確か5限目でしたね達也さん達も出るんですよね?」
「うん、まぁ……」
歯切れの悪い返事をした
「一年じゃ達也と零司だけなんだろ?」
「一科の連中、かなり悔しがっててるみたいよ〜」
「選手の方は一科だけなんだかなぁ」
「仕方ないですよね、嫉妬は理屈じゃありませんから」
「大丈夫よ、魔法は飛んでこないから」
そして午後、発足式と言う名のお披露目会が開かれる事となり、達也と零司はエンジニアのユニフォームを着て壇上に並ぶ。真由美に名前を呼ばれ、深雪にバッチをつけてもらったのだが拍手は疎らなものだった。そうして発足式は幕を閉じた
〜To Be Continued〜
いや〜お待たせして申し訳ない。最近何かと創作意欲がわかなくて、もっぱら他作品を読んだり、今まで見てなかったアニメ見たりと色んなことしてたら期間がもうやばい事にw
それではまた次回!!