「…すまない、刹那。助かった」
城を出て広場に着くと、尚文は感謝の言葉を言った。
その表情を見て俺は疑問を浮かべた。
おかしいな、やり直しと同じタイミングで助けたと思ったのだが、目つきがナオフミオルタ化してるぞ。
「あ、ああ。一昨日言ったろ?何があっても味方でいると」
まあ、俺のことは信用しているみたいだし問題はないということで。
「とりあえず武器屋に行って、防具を買いに行こう」
「ああ、そうだな。でも金も奴らに盗られちまったし…」
いけね、尚文の金は俺が盗…預かってたんだ。早く返さないと。
「…すまん尚文、お前の金はここにある」
俺は懐から銀貨の入った袋を尚文に手渡した。
「これって、俺の…」
「本当にすまん、あの女に盗られないように俺があらかじめ……預かってたんだ」
「どういうことだ?」
尚文は俺を鋭く睨んだ。違うんだ、俺はお前を助けるために『預かってただけ』なんだ。
さてどう説明しよう。『ヴィッチが金と装備を盗むから』と言っても、何故知っているのかとなるし、それで『この世界は俺にとってラノベの世界だから』と伝えても訳がわからないだろう。
「…実はな、あの女は最初に見た時から少し怪しかったんだよ。なんていうか、何か隠してるような、そんな雰囲気を感じたんだ」
「隠してる?」
「ああ、なんて言い表せばいいかわからないが、騙そうとしてるというか、とにかく悪巧みをしてるように見えたんだ。だからお前が寝静まった後、こっそりお前の部屋に入って金を持って行ったんだ。くさりかたびらは、ヴィ——アイツがすぐに来ちまったから守れなかった、すまない」
そう言うと尚文は目を細めた。
やり直しで天井からこっそり覗いていたのを話したら引いてたしな。
よく考えなくても寝ているところにこっそりとなんて、気持ち悪いことだ。
「ま、まあ結果的にあそこで俺を庇ってくれたわけだしな……ありがとう」
「そんじゃ、改めてお前の防具を買いに行こう」
そうして俺たちは武器屋へと向かった。
◇
「アンちゃん達、これから大変だろうな」
「ああ、そうだな。全くこの国の連中は……!」
途中、エルハルトが尚文を殴ろうとするイベントもあったがそこはやり直しみたいな感じで通過した。
「俺は盾以外の武器は持てない、攻撃力もない、だから仲間がいなけりゃロクに戦えもしない、けどこうも噂になってりゃ仲間になりたい奴などいないだろうな!」
尚文はそう吐き捨てた。
ああそうだ、昨日注文した奴隷の二人は届いているかな?キールは翌日には届いていたし、ラフタリア達は今の居場所も分かっているからすぐに届いていてもおかしくはないだろう。
ん?奴隷商ーー
「あ!」
「どうした刹那?」
「宿に忘れ物してきた。ちょっと取ってくる」
俺は武器屋を出て昨晩泊まった宿へと急ぐ。
大事なものを忘れていた、昨日買ったフィロリアルの卵を!
立派な幼女に育て上げるんだ!なぜ俺は忘れてしまったのか。
「元康もこんな気持ちになってたのかなあ」
愛しのフィーロたーーん!ですぞーー!
フィロリアルの成長した姿を想像して、俺は妄想が止まらずニヤニヤしながら宿へと走っていた。
すると背後から俺を呼び止める声が聞こえた。
「書物の勇者!」
「ん?誰ーー」
振り返るとそこにはクルトとローゼが怒りの表情で俺を睨みつけていた。
「何だお前らか」
様子からして城での出来事は伝わっているのだろう。俺が強姦魔(冤罪だが)を援護した、ということが。
そんなことを考えているとクルトが口を開いた。
「見損ないました。貴方は、いやお前は犯罪者である盾を援護するとは!」
「……サイテー」
ローゼに関してはゴミを見るような目つきで俺を見ている。女性の立場からしたら俺は最低男に見えるだろうな。
「お前なんかに仕えようとした我々がバカだった!今後一切近づくな!」
まあコイツらは国の息がかかったクソみたいな連中だ、そんな奴らにどうこう言われようと痛くもかゆくもない。
てかコイツらって原作で見たことないしな、他の三馬鹿勇者の仲間と違って急遽集められたみたいだし、あまり詳しいことは聞かされてないかも。上手いことこちらに引き込んで利用できないだろうか。
何か引き込む手段はないかと考えていると、ふと思い出した。
「ふーん、つまり俺と敵対すると?」
「当たり前だ!」
「…まあ、別にそれで構わないけど俺は、いや俺たちは今後色々と動くがくれぐれも邪魔をするなよ?俺は、この世界の人間のことなんか心底どうでもいいんだからな」
俺は二人に対してハッタリをかます。
「生きようが死のうが、俺にはどうだっていいんだ。けど勇者として召喚された以上、世界を守るという使命は果たすがその過程で『敵対』するというのなら、一切容赦はしないからな?」
敵対という単語を強調し、わざとらしくニヤリと笑ってみせる。
「それこそ、
ビシッとクルト達に向けて指をさしてそう宣言し、俺は再び宿に向けて足を運ぶ。
一瞬、振り返る時に奴らの顔を見ると二人とも表情が青くなっているのが見えた。
『俺たちの味方をしなければ家族がどうなっても知らないぞ』と奴らには聞こえただろう。
ぶっちゃけ住んでいるところも知らなければ顔すら知らない奴らの家族なんぞ、正直どうだっていい。
これで奴らが俺ら側につけば今後としてはやりやすくなるからいいんだがな。
「さて、そんなことよりフィロリアル〜」
陽気な足取りで俺は宿へと向かった。
今後の展開としてフィーロを登場させようと思っているため、尚文にはやさぐれてもらいました。
尚文は刹那に対して初日に味方でいると言われて、その通りに冤罪で助けてもらったので信頼のできる相手として認識しています。