食事を終えて、俺たちは草原へと向かった。
多分、尚文とラフタリアがいるかもしれないから森の奥へと進んでレベルを上げようか。
「ほら、怯えなくていい。魔物からは守ってやる、絶対に」
首を傾げるリファナをマントの下へと入れ、足早に森の奥へと向かった。
「尚文は、どこかですれ違ったのかな?」
草原から森へ、奥へと進む途中で尚文やラフタリアの姿を見なかった。
てことはラフタリアのお腹が鳴って定食屋でも探しにでも戻ったかな?
「この辺りでいいかな」
俺は昨日来たところより、さらに奥へと進んだ。
「さて、リファナ。今日はお前に戦い方を教えるのとレベル上げを行うぞ」
武器屋で買ったナイフをリファナに渡す。
「ひ、ひぃ……」
改めて顔面蒼白になるリファナ。
何だろうな、尚文がラフタリアにやっていることを、ただなぞっているだけな気がしてきた。
とりあえず、手頃な魔物を倒させたいが……お、何か良さそうなスキルを見つけたぞ。
ウェポンコピーした書物の一つに内蔵されていたスキル、ヘイトリアクションというものを見つけた。確か尚文の盾にもあったやつだな、これを使って魔物を呼び寄せよう。
「ヘイトリアクション!」
すると無数の魔物が一斉に茂みから飛び出して俺らを取り囲み、襲いかかってきた。
「うお!?数が多い!」
「きゃあああ!」
「くっ!ファスト・ファイア!ファスト・アクアショット!ファスト・サンダー!」
俺は魔法を唱え続け魔物を殲滅していった。
◇
「ぜい、ぜい……」
MPが枯渇寸前まで魔法を打ち続け、何とかその場を凌ぎきった。
リファナの戦闘訓練を行うはずが、とんだことになった。ヘイトリアクションを使用した際、偶々この周辺に魔物が集中していたのだろう。
「まぁでも何とか、バルーンを二匹ほど捕まえられたからいいか」
現在、俺の両足にはレッドバルーンが二匹噛み付いている。尚文と違って防御力は高くないので割と痛い、けれど魔物を倒しまくったおかげかレベルもそこそこ上がり、防御力も多少は上がっていた。
俺の現在のレベルは24、同行者設定しているリファナは11、アイラとコハクは10にまで上がっていた。
結構上がったな。とりあえず、このバルーンを原作通りに割らせるとしようか。
「改めてリファナ。このバルーンをそのナイフで刺して割ってみろ」
「ひぃ!?や……い……いや」
「……命令だ。逆らうとお前が苦しくなるだけだぞ?」
そう言うとリファナは胸を押さえて苦しみ出す。奴隷紋が発動したのだ。
「ぐ、ううう……」
うーーーむ、これマトモな精神状態だと、ものすごい良心が痛む。罪悪感がパネェな。
「ぐうう……!」
リファナは震える手に力を込めてナイフを持ち、バルーンに向かってナイフを突き刺した。
バアン!バアン!
レベルが上がっていたおかげか、一突きでバルーンが割れた。
「よしよし、よくやった」
原作に則りリファナの頭を撫でる。
リファナは不思議そうな顔を俺に向ける。
えーっと、もっと探索というかレベリングをさせたいところだけどMPが枯渇してるからなぁ。これ以上強い魔物が現れたら守れないし、今日は一旦これで戻るか。
「それじゃあ今日はーー」
「コホコホッ」
そろそろ戻ろうと提案しようとした時、リファナが咳をして気がついた。
いけないいけない、忘れていた。風邪だっけな?それに効く薬を飲ませてやらないとな。
書物を魔法屋でコピーした時に手に入れた薬草の本に変化させ開いてみるも、字が読めないので何がどういう効果があるのかさっぱりだった。
いや、装備ボーナスの欄に簡易調合レシピがある。それを元に自分で調合するか。その前に薬草を探さないとな。
……思ったが金もあるし市販の薬を買って飲ませた方が早かったのでは?まぁ、今さら気がついたところで今から戻ろうにも日が暮れるだろうし、明日でも大丈夫だろ。
「ご主人様は……何者なんですか?」
リファナが目を丸くさせて書物を見ていた。
ああ、目の前で変化させたからな。それに不思議がっているのか。
「俺は……勇者だよ、書物の」
「???」
リファナは不思議そうに首を傾げ、訳がわからないという顔をした。
当然の反応だ。尚文なら盾の勇者だと名乗れば、あの伝説の!となるけど四聖でも七星でもない俺が勇者を名乗っても訳がわからないとなる。
もう慣れたが、俺も訳がわからない。何なんだろうか書物の勇者って。
「まぁ、そういうことだ。少し周辺を探索するぞ」
尚文視点ーーー
このクソみたいな世界に召喚されて三日目、俺は仲間を強姦したというやってもいない罪を被せられ、挙句その仲間だったクソ女に装備や財産を盗まれ無一文で放り出された。そう思っていた。
唯一、俺を信じてくれた刹那が前日にあのクソ女が怪しいと睨み財産だけは守ってくれていた。人の寝ているところにこっそりとなんて気持ち悪いとも思ったが、アイツが信じてくれたおかげで俺はこうして奴隷というものを買えて、人手不足にならずに活動することができている。
「ほら、これを飲め」
「……ぐっ、に、苦……」
どうもラフタリアの病状が風邪っぽいので、盾のスキルにあったレシピを呼び出して薬を調合する。その中に風邪薬があったのでそれを飲ませようとした。
「良薬口に苦しだ。飲め」
震えながらラフタリアは俺が渡した薬を思いっきり飲み込んだ。
「はぁ……はぁ……」
「よしよし、良く飲んだな」
頭を撫でてやると、ラフタリアは不思議な表情で俺をぼんやりと見つめる。
「ほら、晩御飯ーー」
俺が焼きあがった魚をラフタリアに渡そうとした瞬間だった。
ガサガサガサ!
突然、目の前の茂みが激しく揺れ何かの気配を感じた。
魔物か!?
「ラフタリア!下がれ!」
俺はとっさにラフタリアを後ろへと下がらせて、飛び出してきたものを迎え撃とうした。
「うおおおおお!」
「きゃああああ!」
「なっ!?」
飛び出してきたのは、全身をバルーンやルーマッシュに噛みつかれた刹那とリファナだった。それだけじゃない、奴らの背後からも無数の魔物が飛び出してきた。トレイン状態と言わんばかりに魔物を引き連れている。
「な、尚文か!助けてくれ!」
「一体何をしたらそうなるんだよ!ラフタリア!」
「は、はい!」
「片っ端から魔物を倒せ!」
ラフタリアに刹那たちに群がる魔物を倒すように命じ、俺は背後から飛び出してくる魔物からラフタリアを守る。