書物の勇者?何だそれ   作:名無しし

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物理攻撃

 

「ーーで、薬草を探していたのはいいが、その際に魔物に遭遇してしまって倒していたら、その騒ぎで他の魔物も呼び寄せてしまいああなったと」

 

「そうそう、いやー全く参ったよ」

 

俺は現在、尚文たちと一緒に焚き火を囲んでさっきまでの出来事について説明していた。

 

アイラとコハクはお互いに寄り添うように眠っており、リファナはラフタリアに看病されていた。

 

「リファナちゃん……」

 

「うーん……コホコホ」

 

武器の反応具合を見て素材を入れたり、集めたりしていたのはいいものの魚群ならぬ魔物群に遭遇するなんてな。

 

「……まぁ、質は悪いが俺の作った薬でよければいくつか余ってはいるが、それでもいいか?」

 

「お、いいのか?」

 

「何だかんだでお前には助けられてばかりだからな」

 

そう言って尚文が葉っぱのコップに入っている薬を俺に手渡してきた。

 

「おお、ありがとう尚文」

 

「礼を言うのはこっちの方だ。色々とありがとな」

 

何だかんだで尚文の優しさはやさぐれても変わらないんだな。ここも原作と変わらないのか。

 

俺は尚文から薬を受け取るとリファナの方へと向き、薬を飲ませる。

 

「リファナ、薬だ。飲め」

 

「ん、ぐっ……」

 

「苦いだろうけど我慢して飲め、じゃないと治らないぞ」

 

薬が苦くて吐き出そうとするリファナの口を押さえ、強引に飲み込ませる。

 

……良心が痛む、こんな幼い子供に対して俺は何をしているのだろう。

 

「よしよし、よく飲んだな」

 

頭をポンと撫でてやると不思議そうな表情でこちらを見つめる。

 

ん?なんだこの既視感は?まあいいか。

 

「それでーー」

 

尚文に話しかけようとした途端、俺とリファナは盛大に腹の音がグゥーとなった。

 

「うぅ……腹が減った……」

 

よく考えたら魔物を倒したり薬草を探すのに夢中になって、食料を全く探していなかった。すっかり日も暮れてるし、城門も閉まってるだろうから飯屋に行くこともできない。

 

「食うか?」

 

尚文が焼き上がった魚を俺たちに手渡してきた。

 

「え、いいのか?でもそれ、数が……」

 

「別にまた釣ればいい話だ。お前には助けてもらってばかりだからな、困った時はお互い様だ」

 

「何か、悪いな」

 

俺は尚文から焼き魚を受け取り、リファナと自分の手元へ持ってきて食べる。

 

う、美味い!ただ焼いただけなのに何だこの美味さは!?これが、飯の勇者の料理……!

 

焼き魚の味に感動していると尚文は調合作業を始めており、いつのまにかラフタリアも眠り始めていた。

 

さて、明日は何をしようか。どのみち金銭を稼がなきゃいけないし、三勇者みたいにギルドの仕事をしようにも斡旋してくれるわけがないだろうし尚文みたいに行商とかするべきなのかなぁ?

 

これからの生活についてどうするか思考していると、突如、耳をつんざくような悲鳴が辺りに響いた。

 

「いやぁああああああああああああああ!」

 

見るとラフタリアがうなされているのが目に入った。

 

忘れていた。この頃は目の前で両親が殺されたトラウマで夜泣きをするんだった。というかヤバイ、この悲鳴につられてバルーンとかが寄ってくる!

 

尚文は急いでラフタリアの元へ行き口を塞いだが、それでも漏れる声が大きかった。

 

「んーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

「落ち着け、落ち着くんだ」

 

「ラフタリアちゃん、落ち着いて」

 

尚文とリファナが夜泣きするラフタリアをあやす。

 

「ガァ!」

 

すると声を聞きつけたバルーンが現れた。

 

「く、ここは俺が食い止める!」

 

俺はバルーンに向かって走った。

もうMPは残ってない、となれば物理攻撃しか倒す方法はない。魔法を連発して狩りをしていたから試してもないが、とりあえず殴るしかない。

 

「オラオラオラオラ!」

 

一心不乱になりながらバルーンを殴り続け、5分くらいしてようやくパァンと音を立ててバルーンが割れた。

 

クソ、尚文同様に物理攻撃が絶望的にないぞ。

 

「痛ててて!こんにゃろ、噛むな!」

 

殴り続けている間に新たなバルーンが何体も現れ俺の体に噛み付いていた。

 

「この、風船もどきが!」

 

 

 

 

 

 

 

「ゼイ……ゼイ……」

 

どうにか一通りバルーンを割り終えて、尚文たちの所へと戻り、俺は倒れ込んだ。

 

いくら物理攻撃が通るといっても殴り続けて疲労困憊だ。元々はタダのオタクで引きこもってたし、体力なんてない。

 

「つ、疲れた……」

 

「大丈夫か?」

 

「なんとかな」

 

尚文がラフタリアを抱き抱えたままそう言う。リファナはいつのまにか眠っていた。

 

その寝顔を見ているとこちらも段々と眠くなってきて、いつのまにか俺も意識が落ちた。

 


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