書物の勇者?何だそれ   作:名無しし

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厄災の波

波へと飛ばされた俺たち一行は、まず周囲を確認する。

ふむ、アニメで観たことのある光景だな。てことはあっちの方向にリユート村があるだろう。

 

空は大きな亀裂が生まれたかのようにヒビが入り、不気味なワインレッドで染まっている。

 

「せつな様!」

 

「ご主人……」

 

「おう、二人とも」

 

俺はリファナたちと合流し、その近くに尚文たちもいた。

 

「ここは……」

 

尚文が何処に飛ばされたのか辺りを確認しているとダッと飛び出す影が3つ。そしてそれを追う13人の影が見えた。

 

三馬鹿と愉快な仲間たちですな。真っ直ぐに波の根源である亀裂へと向かって行く。

 

「リユート村付近です!」

 

ラフタリアが焦るようにそう叫ぶ。うむ、やはりそうだったか。

 

「アイツらに構っている余裕はない!さっさと村の防衛に行くぞ!」

 

俺はいの一番に村の方向へと駆け出し、尚文たちもそれに続く。

 

 

 

 

 

「ツヴァイト・ファイアースコールV!ツヴァイト・アクアショットV!」

 

村に着くと波から溢れ出した魔物が、まさに暴れだす瞬間だった。駐在していた騎士や冒険者が辛うじて戦っているのを見て、俺は魔物らに向けて攻撃を叩き込む。

 

「ラフタリアは村民の避難誘導をしろ」

 

「え、ナオフミ様は……?」

 

「俺は敵を惹きつける!」

 

尚文はそう言って防衛線へ駆け出し、イナゴの群のような魔物は尚文へと群がっていく。

 

「リファナ、ローゼ、アイラ。お前たちも避難誘導及び魔物を片っ端から倒せ。コハクは俺と来い!」

 

「はい!」

 

「は、はい!」

 

「わかったのですー!」

 

「ん、ご主人」

 

コハクはボフンとフィロリアル形態へ変身し、俺はそれに飛び乗って尚文同様に防衛線へと駆け出した。

 

ふむ、やはり余裕だな。強化スキル、魔法を使うまでもなくレベル差と資質向上で強化されているおかげか、コハクがただ突っ走るだけで魔物たちは一撃で粉砕されていく。

 

「ゆ、勇者様?」

 

「ああ、お前ら、俺と尚ふーー盾の勇者が惹きつけている間に体制を立て直せ!」

 

リユート村には来たことはないが、アニメで描写されていた連中に多少の見覚えはある。

 

「は、はい!」

 

これ幸いにと深手を負ってない奴まで下がり、防衛線は俺とコハク、尚文だけとなった。

 

全くここらも変わんねーな。ま、そんなこと気にしてる暇はないしどうでもいいか。

 

「エアストシールド!」

 

そんなことを考えていると尚文が魔物に襲われそうになっていた村人を守る盾を出した。

 

ほう、あれがエアストシールドか。

 

「早く逃げろ!」

 

「……あ、ありがとう」

 

腰が抜けていた村人は尚文に礼を言うと、家族と共にその場を去った。

 

「刹那!何ボサッとしてるんだ!お前も戦え!」

 

「言われなくとも!ツヴァイト・サンダーボルト!」

 

「グギャアアア!」

 

無数の雷が周囲にいた魔物を一掃する。強化して魔法を放つ必要はなさそうだな、あまり強い技を放って三勇教とかに目をつけられたくないし。

 

「シールドプリズン!」

 

後方で尚文が逃げ遅れた女性へ向けて盾の檻を出現させる。アニメとコミックで描写が違ってたが、この世界だとアニメよりのシールドプリズンだな。

 

尚文へとターゲットを変えた魔物はこちらへと群をなしてやってくる。すかさず俺はシールドプリズンの効果が切れる前に魔法を放った。

 

「ツヴァイト・ウイングカッター!」

 

風の刃が魔物たちを切り裂き、それにより魔物は全部死に絶えた。

 

「ここらに人はもういない、俺たちはあっちへ行くぞコハク!」

 

「ん、わかった」

 

「尚文も気を付けろよ!」

 

「ああ!」

 

俺たちは一旦その場から離脱してまだ魔物が群がっているところへ駆け出す。

すると防衛線へと向かう騎士団の姿が見え、途中ですれちがう。

 

さて、そろそろ時間だ。

 

「コハク、俺は一度向こうに戻るが、一人で大丈夫か?」

 

「え……ご主人……コハク、一人……?」

 

「大丈夫だ。この近くにはアイラたちもいるし、すぐに戻ってくる」

 

建物の向こうからアイラやリファナの戦闘音や、避難誘導する声が聞こえている。

 

「……ん、わかった。ご主人、気をつけてね」

 

「ああ、コハクもな!」

 

俺はスキルを使って姿を隠し、騎士団の向かった方へと駆け出した。

 

 

 

尚文視点

 

「はぁ、はぁ!」

 

刹那と別れたあと、俺は村の防衛線にまで戻り魔物を惹きつけていた。

 

「ラフタリア!」

 

「はい!」

 

俺が魔物を惹きつけて、その隙にラフタリアが魔物を倒す。これまでやってきたことと何も変わらない。

 

「グギ!」

 

「はぁああああ!」

 

ラフタリアがグールのような魔物を切り裂く。

だが魔物は一向に数が減る様子はなく、無数に俺たちへと向かってくる。

 

すると魔物の群れの中から外を見ると騎士団が到着するのが見え、魔法が使える連中が火の雨をこちらに向けて放つのが見えた。

 

「ラフタリア!こっちへ来い!」

 

「は、はい!」

 

俺はラフタリアを抱き寄せマントの中へと隠し、騎士団の放った火の雨から守る。

 

あっという間に引火して燃え盛る魔物たち。

どうやら俺は物理だけでなく、魔法の防御力も高い様だな。

 

「おい!こっちには味方もいるんだぞ!」

 

「ふん、盾の勇者か。頑丈な奴だな」

 

騎士団の隊長らしき奴が俺を見るなり吐き捨てた。

真紅に燃え盛る防衛線の中、明らかに俺たちがいると知りながら魔法を放ったことに腹が立ちながら、俺は騎士団を睨みつけながら近づき、マントをなびかせて炎を散らす。

 

そこに飛び出すように剣を振りかぶる影。

ガキンと音を立てて吐き捨てた奴は剣を抜いて鍔迫り合いになる。

 

「ナオフミ様に何をなさるのですか!返答次第では許しませんよ!」

 

殺意を込めて、ラフタリアが言い放つ。

 

「盾の勇者の仲間か?」

 

「ええ、私はナオフミ様の剣!無礼は許しません!」

 

「亜人風情が騎士団に逆らうとでも言うつもりか?」

 

「守るべき民を蔑ろにして、味方であるはずのナオフミ様もろとも魔法で焼き払うような輩は、騎士であろうと許しません!」

 

「五体満足なのだから良いじゃなーー」

 

隊長らしき奴がそう言いかけたとき、騎士団どもに向かって先ほどのような火の雨が降り注ぐのが見えた。

 

「ラフタリア!」

 

「はい!」

 

ラフタリアもそれに気が付きすぐさま剣を収めて俺の方へと駆け戻る。

 

「「「ぐはぁあああああ!!」」」

 

騎士団どもに火の雨が降り注ぎ、隊長もろとも無様な悲鳴をあげた。

 

「お?わりーわりー、うっかり当たっちまったよ」

 

悪びれもない謝罪をしながら現れたのは刹那だった。

 

 

 

刹那視点

 

 

「貴様!何をする!?」

 

騎士団の一人が俺に向かって激昂したように叫ぶ。

 

「何って、勇者に向かって攻撃をしてたから波の魔物かと思って攻撃したんだよ。なぁに、五体満足なのだからいいじゃないか!」

 

騎士団長が先ほど言いかけたことを、小馬鹿にするように俺は騎士団に向かって言う。

わざとに決まってんだろバーカ。ざまあみやがれってんだ。

 

「ふざけるな!犯罪者の分際でーー」

 

「敵は波から這いずる化け物だろう。履き違えるな!」

 

原作での尚文の言葉を代弁して俺は騎士団どもへ叱責する。

 

「犯罪者の勇者共が何をほざく!」

 

「なら、残りはお前達だけで相手をするか?尚文、俺たちはさっさとあっちへ行こうぜー」

 

「そうだな、お前らが魔物のエサになるのを見てるのも悪くはないな」

 

尚文がそう言うと騎士団の背後から2メートルほどのゾンビのようなのが斧を振り下ろすのが見えた。

 

「うわぁああああ!」

 

「ファスト・ウインドブロウV!」

 

俺はすぐさま魔物を魔法で吹き飛ばした。

 

「これ以上無駄な問答を続けるようなら、本当にお前らをエサにして置いていくからな?」

 

「ぐ、くそ!犯罪者の勇者風情が!」

 

騎士団は渋々といった様子で、ようやく魔物へ向けて剣を振り下ろす。ここはもういいだろう。

 

俺は再び姿を消してその場を去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数分後、俺はまた尚文たちの方へともどってきていた。リファナたちに任せたところはほとんど避難も完了し、リファナたちも強化済みなので魔物を余裕で殲滅させていた。

ローゼは資質向上などはしていないが、錬のところでレベリングはしていたようで善戦していた。

 

 

 

「……犯罪者の勇者どもめぇ」

 

ブツクサと文句を垂れ流しながら魔物と戦う騎士団長。

全く態度が変わらんなコイツ。ま、そのおかげで躊躇する必要がなくて助かる。

 

俺は今、姿を消した状態で騎士団長が戦っている場所の10メートルほど後方にいる。

 

なぜ俺がこんなところにいるのかというと、それはあの騎士団長を暗殺するためである。

 

あんなクズはいない方が世のためだ。そういえば騎士団長は原作でシルトヴェルトに殺されたとかあったような気がする。まあ、時計の針を進めてやるだけだ。何も問題はない。

 

「はぁ、はぁ……」

 

騎士団長が剣を地面に刺し、息切れする。

チャンスだ。兵士が他に数名いるが気にしない。全員殺してやるのDEATH ZO

 

下手に弱い魔法を放って助けを呼ばれたら大変だから、一撃で殺す。

 

俺が今使える魔法の中で一番強く、ポイントを最大にまで振る。よし、いくぞ。

 

「ツヴァイト・ヘルファイアX!」

 

「なっーー」

 

巨大な炎が騎士団長らを目掛けて飛んでいく。奴らはいきなり現れた炎を見て呆気にとられたまま、悲鳴を上げることなく消炭となる。

 

「ミッションコンプーーお?」

 

「う……ぐ、誰だぁ……」

 

なんと今の一撃を喰らって生きているとは、声からして騎士団長だな。楽に死ねなかったとはなんとも運の悪い奴だ。

 

「さっさと死ね。ツヴァイト・ヘルファイアX!」

 

俺はもう一発、死に損ないに向けて炎を飛ばす。

そして今度こそ、悲鳴を上げることなく騎士団長だったものは消炭となった。

 

さて、今度こそミッションコンプリートだな。あとは俺が殺したことがバレないようとっととこの場からおさらばするか。

 

俺は全力でその場から離脱してリファナたちのところへ駆け戻った。

 

「わっ、せつな様!?」

 

「どうした?」

 

「今、どこからきたのですか?」

 

「気にするな。それより魔物を掃討を終わらせるぞ」

 

「は、はい!」

 

俺はそのまましらばっくれて、波が終わるのを戦いながら待った。

 

数時間後、空が元に戻り亀裂も収まって最初の波が終わった。

 

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