書物の勇者?何だそれ   作:名無しし

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弱くなんかない

来客用の部屋に案内された俺たち五人は各々ステータスや武器を確認しながらニヤけたりしてこれからの日々にワクワクしていた。

 

「なあ、これってゲームみたいだな」

 

尚文が口を開き、周りに問いかける。確か尚文の世界には似たようなゲームがないんだったな、まあ俺もだけど。

 

「っていうかゲームじゃね?俺はこんな感じのゲームを知ってるぞ」

 

元康が自慢げにそう答え、錬も似たようなことを言う。

それぞれ別々の日本から召喚されているからな、知らないのも無理はない。

VRのゲームはあるっちゃあるけどネットにダイブするようなものは流石にない。

 

「なあお前は何か知ってるか?」

 

尚文が俺にそう問いかける。

俺も知らない、と答えてもいいがこの後の展開を考えると嘘を言っておいた方がいいか。

 

「ああ、スマホゲームだろ?」

 

不幸にもあまりオンラインゲームには触れていないものでね、やったことのあるものと言ったらせいぜいこの辺だ。

 

「あの……皆さん、この世界はそれぞれなんて名前のゲームだと思っているのですか?」

 

樹が軽く手を上げて尋ねる。

さて、何と答えようか。

 

「ブレイブスターオンライン」

 

「エメラルドオンライン」

 

「…カタストロフストーリー」

 

「知らないな、ていうかゲームの世界?」

 

「あ、ちなみに僕はディメンションウェーブというコンシューマーゲームの世界だと思ってます」

 

俺と尚文を除く三人がそれぞれ自分が思っているゲームの名前を告げた。危ない危ない、こんな短い時間でタイトルを考えて言わなきゃならないなんてな。

まあぶっちゃけゲームタイトルとか皆気にはしないだろう。

 

「待て、一回情報を整理しよう」

 

元康は額に手を当てて一同を宥め、錬にVRMMOの確認を取り、そのあと首相の名前を一斉に言った。もちろん、俺は存在しない名前を言って合わせた。

 

「どうやら僕たちは、別々の世界から召喚されたみたいですね」

 

「間違っても同じ日本ではないな」

 

「ということは異世界の地球も存在するわけか」

 

VRMMOの存在する世界、異能力のある世界、ギャルゲと思われる世界、そして料理漫画とか言われる世界からそれぞれ来ているわけだしな。ということは俺はこの世界が小説として存在する世界、または本の外の世界とでもいうべきか、そこから来ているわけかな。

 

「このパターンだと、みんな別々の理由で転移した気がするのだがな」

 

錬を始めとして各々がこの世界に来る直前の話をする。

 

「じゃあ刹那は?どんな理由で来たんだ?」

 

流れ的にここは本当のことを言ってもいいだろう。

 

「俺はコンビニに行こうとして歩きながらスマホ弄ってたら、いつのまにか車道に出てて迫ってくるトラックに気がつかなくてな……目が覚めたらここにいた」

 

痛みなんて感じる暇もなかったし即死というのは実際こんな感じなんだろう。

そして皆の視線が尚文へ向いた。

 

「なぁ、この世界に来た時の話って絶対話さなきゃダメか?」

 

「そりゃ、皆話してるし」

 

「そうだよな、悪い。俺は図書館で不意に見覚えの無い本を読んでて気付いたらって感じだ」

 

元康、樹、錬は尚文に冷たい視線を向けた。

この中じゃ一番理由が弱いし、何より一人だけ死んでないなど不公平な感じがするだろうな。

よし、尚文の味方をするという意味も込めて、やり直しで元康が言っていたことを代弁しよう。

 

「別に不幸自慢してるわけでもないし、人それぞれじゃねえか?」

 

「いや、けどよ」

 

「ええ、理由が少し弱い気がしますよ」

 

「転移するのにそこまで理由が必要か?ただ理由を話しただけだろ?」

 

「ま、まあそうなんですけど、少し納得が……」

 

確かに樹の言う通り、尚文だけ死んで転移してきたわけじゃないし、不幸そうじゃなくて羨ましいというのもあるだろう。

 

「仮に全員死んでいたとすると、尚文がいた図書館に何かあったんじゃないか?」

 

「なるほどテロや災害などですね。それなら気付く前に死んだというのも考えられますね」

 

「うわ…みんなの話を聞いてるとあり得るから恐いな…」

 

まあ、そんなことはないけどな。実際、無事に帰還してたわけだし。

 

「じゃあみんな、この世界のルールというかシステムは割と熟知してるのか?」

 

「ああ」

 

「やりこんでたな」

 

「それなりにですけど」

 

「まあな」

 

尚文が微妙な表情で笑ってるな、一番この中で知識に疎いしこのことについて明日クズから突っ込まれるだろうしな。

というか今の会話は全部聞かれているだろう、どこからだ?ドアの前にでもいるのか?

 

不意にキョロキョロと辺りを見渡しドアを見るとその行動に不審に思ったのか尚文が声をかけた。

 

「どうかしたのか?」

 

「いや、別に」

 

特に害があるわけじゃないし、どうでもいいか。

 

「なあ、これからこの世界で戦うために色々教えてくれないか?俺の世界には似たゲームは無かったんだよ」

 

ここで元康が手をあげ盾は弱職と嘲笑う前に、俺が尚文に説明をしよう。

 

「それじゃ、俺が説明しよう」

 

「う、うん」

 

「俺の知るゲームでは、盾職は僧侶にあたる中々優秀な職業で仲間の回復や援護、もちろん防御に関しては最強の一角だ」

 

ゲーム知識ではないが、嘘は言っていない。実際原作じゃ尚文は防御や援護に関しては右に出る者はいなかった。

俺がそう言うと元康ら三人は疑問を顔に浮かべた。

 

「そうなのか?俺の知るブレイブスターオンラインでは死に職だが…」

 

「ああ、エメラルドオンラインでも高Lvは全然いない負け組の職業だったぞ」

 

「ゲーム毎の違いでは無いですか?僕の知るディメンションウェーブだと弱職でしたけど、盾自体が役に立たない訳ではないです」

 

「どっちなんだろうな?」

 

「できれば防御だけでも最強の一角の方でお願いしたい!」

 

尚文が祈るように盾に手を当てている。

嘘ではないから安心しろ、攻撃力はないけど。

 

「地形とかどうよ?」

 

「名前こそ違うが殆ど変わらない。これなら効率の良い魔物の分布も同じである可能性が高いな」

 

「武器ごとの狩場が多少異なるので、同じ場所には行かないようにしましょう」

 

「そうだな、尚文もそう思うだろう?」

 

「う、うん」

 

流れがやり直しみたいになってきているけど現時点でコイツらを説得したところで無駄だろう。冤罪をかけられた時に暴露したら兵士らが皆殺しにしようとしてくるから返り討ちにしようにもレベルがない。

 

それに錬と樹はまだしも、この時点の元康が信じるとは思えない。アレコレ理由をつけてヴィッチの味方をする可能性が高い。

 

「勇者様、お食事の用意が出来ました」

 

タイミングがいいのか悪いのか、尚文に有益な情報を渡すまいという策略なのか城の連中が遮ってきたな。

そういえば夜食買いに外出したんだったな、腹ペッコペコだ。




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