書物の勇者?何だそれ   作:名無しし

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駆け出しの冒険者

「尚文尚文」

 

「なんだ?刹那」

 

俺は謁見の間を出ようとする尚文に声をかけた。

 

「良かったな。お互い仲間に女がいるわけだし、ついに俺らにも春がきたな、そういう関係になれると良いな」

 

「ちょっ!た、確かにそれは嬉しいけど……」

 

赤面しながら声が小さくなっていく、この時点では童貞だしな。俺もだけど。

 

 

「勇者様ー!早く行きましょー!」

 

「あ、マインさんが呼んでるしもう行くね!」

 

「ああ、お互い頑張ろうぜ!」

 

俺は尚文に手を振り別れると自称仲間の下へと行く。

 

「そんじゃ、俺たちも行こうか」

 

「「はい!」」

 

元気よく二人は返事をする。

どうせお前らも明日には俺の仲間でなくなるんだろ?尚文の味方をしたら離れるんだろ?

そう決めつけ俺はさっさと謁見の間を退出する。

 

さて、まずは武器屋の親父のところへ行って防具を買ってウェポンコピーをして行こう。

……なんか泥棒して行こうと言い換えられるからなんとも言えない気持ちになるな、というか俺は書物だし本屋とか魔法屋で本を触るべきか?

 

「いらっしゃい」

 

店に入ると筋骨隆々の絵に書いたような武器屋の店主の親父に元気よく話しかけられる。確かエルハルトだったか?

 

「ここが武器屋……」

 

現実で見るとこんな感じなんだと感動を覚えながら俺は店内を見渡す。

 

うん、本なんて売ってるわけないか。

 

「おや?その格好、もしかしてアンタも勇者か?」

 

「ああそうだ。なんか、書物の勇者というらしい」

 

「書物の勇者ぁ?そんなもんあったか?」

 

やはり四聖勇者で五人目がいるなんて話はないよな、唯一考えられるなら七星の勇者だがこの世界の方に本や書物の眷属器はなかったはずだ。

 

「俺もわからん、だがステータスにそう書かれているし現に異世界から召喚された身だ」

 

俺は近くに置いてある鉄の剣に手を伸ばして柄に手を触れる。

 

バチッ

 

「っ!」

 

すると手に強い電撃のようなものが走り武器から手が弾かれ、視界に『伝説武器の規則事項、専用武器以外の所持に触れました』と浮かび上がる。

これが伝説武器の制約のというやつか。

 

「ふむ、その様子からしてアンタが勇者であるのは間違いないみたいだな」

 

この様子を見ていた武器屋の親父は俺が勇者だということを信じたようだ。恐らく尚文が先に来て同じようなことがあったのだろう。順番的に俺が最後に訪れたことになるかな?まあそんなのことはどうでもいい。

 

「紹介が遅れたな、俺は星守刹那だ。今後も厄介になるかもしれん、よろしく」

 

「セツナねぇ。まぁお得意様になってくれるなら良い話だ。よろしく!」

 

「とりあえず魔法使い向けの防具をくれ」

 

「予算はどのくらいだ?」

 

尚文と違って銀貨600枚だからな、確か尚文はここで銀貨120枚でくさりかたびら買ったんだよな。

 

「銀貨…150枚の範囲だな」

 

「フルプレートは動きが鈍くなるから冒険者向きじゃあない。精々くさりかたびらが入門者向けだろ」

 

そう言って親父は原作の尚文のものと全く同じくさりかたびらを指差す。

 

取って見ると視界に『くさりかたびら 防御力アップ 斬撃耐性(小)』と浮かんだ。

 

まあ最初はこんなもんだろ、というかこれだけ着たら今の尚文と格好が被るな。

 

「そうだ、あと魔法使い向けのケープのついた衣装は置いてないか?」

 

「あいよ、ちょっと待ってろ」

 

少しして店の奥から紫がかった黒いローブのようなものを持ってきた。それにはケープ、マントが付けられており如何にも魔法使いって感じの衣装だ。

 

「おお、これは…」

 

普通に格好いい、これを着て『ハァッ!』とかやって敵を殲滅するのか。中二心が躍る。

 

「気に入った、それもくれ」

 

「まいど!ついでに中着もおまけしとくぜ」

 

俺は銀貨130枚を支払った。

 

「そういえばこの辺に本屋か魔法書を売ってる店はないか?」

 

「そうだな、表通りの大きな店がある。そこが魔法書を売ってる魔法屋だ」

 

「ありがとう、また来る」

 

そう言って俺達は武器屋を出て魔法屋へと向かった。

 

「セツナ様、今日は他の勇者様のように狩りはなされないのですか?」

 

「確かにそうしてもいいが、俺はこの世界に来て間もないし情報を集めたい」

 

「それでしたら魔法屋に行く前に、あちらのカフェでお話をしませんか?」

 

魔法使いの女が通りの先にあるオシャレなカフェを指差す。

へえ、あんなのがあるとはな。せっかくだしお茶して行くか、別に急ぎの用でもないからな。

 

俺は魔法使いの提案を受け入れ魔法屋へと向かう足を止めカフェへと向かった。

 

「う、読めん…」

 

カフェに入り適当に席に着いて注文しようとしたら、文字が読めなかった。

 

「……悪いが代わりに注文してくれないか?あの客が食べてるトーストみたいなやつ」

 

俺は近くの席で食べている客のハニートーストみたいなものを指差した。

 

「わかりました」

 

剣士の男がそう言うと店員を呼びそれぞれ注文をした。

 

注文を待つ間、何も喋らないで気まずい雰囲気を過ごすのも嫌なので何かしら会話をすることにした。

 

「そういや、お前らの名前を聞いてなかったな」

 

「あ、これは失礼しました!自分、駆け出し冒険者のクルトと申します!」

 

丁寧な口調でクルトと名乗った剣士は、最近冒険者になったばかりの新人らしい。

茶色の短髪に革の鎧、あとは鉄の剣を装備していて如何にも初心者って感じの装備だ。

 

「えと、わたっ、わたひはっ!」

 

魔法使いの格好をした女は緊張しているのかセリフを噛みまくっていた。

 

「落ち着いて、ゆっくりで大丈夫だから」

 

「うぅっ、すみません!」

 

深呼吸をして改めて彼女は自己紹介をする。

 

「わ、私はローゼといいますっ!私も、最近冒険者になったばかりでレベルが全然ないです!すみません!」

 

……なんか似たようなキャラがいたよな、まあいいや。

あたふたとローゼと名乗った魔法使いもクルト同様に初心者って感じの装備をしている。白いロングヘアーに黒の三角コーンみたいな帽子をした、物語によく出てくる魔法使いといった格好だ。

 

「クルトにローゼか、二人は何で俺についてこようと思ったんだ?」

 

「王が四聖勇者に同行する仲間を募っていると聞きまして参加させていただいたのはいいのですが、自分とローゼ以外手練の冒険者ばかりでして……『お前らみたいな駆け出しは足を引っ張らないように書物のところへ行け』と、言われまして…」

 

「尚文ーー盾の勇者の所へ行こうとは思わなかったのか?さっきも1人もいなかったんだし行こうと思えば行けたんじゃないのか?」

 

そう言うと二人はあからさまに動揺して目をそらした。

なるほど、コイツらも何か言われているな。『盾のところへ行け』とも言われてない以上、グルだと思っていいだろう。

 

さて、ここであまり深く突っ込むと王や三勇教に何て伝わるかわかったもんじゃない、話題をそらそう。

 

「すまん、何か言いにくいことみたいだな」

 

「あ、いえ!その…」

 

「ローゼも同じような理由か?」

 

「は、はい!そんな、ところです!」

 

 

その時ちょうど店員が注文したものを持ってきたので会話はここで中断した。

 

 

「さて、次はどうするかな」

 

なかなか美味かった。ハニートーストもどきかな思ったが味はまんまそれだった。

 

「結局、お話できませんでしたね…」

 

「あ」

 

そういえばこの世界について色々と教えてもらおうとしてたんだった、これじゃあカフェでただ食事しただけだな。

 

「あー、まあいいや。とりあえず魔法屋に向かおう」

 

どのみちある程度なら原作知識があるしな。まあ、頼りすぎて痛い目に遭うなんて三馬鹿勇者じゃないんだし、差異があると思っておこう。

あくまで参考にする程度にしておくのがベストだろうな。




リアル事情により次回の更新は8月になります
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