書物の勇者?何だそれ   作:名無しし

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やーっとテストが終わって自分にも夏休み到来しましたよ。


ウェポン?コピー

「初めてのお客さんねえ」

 

店内に入ると奥に小太りの魔女みたいな格好をした女性が座っていた。

 

「どうも初めまして、書物の勇者の星守刹那だ」

 

そう言うと魔法屋の婆さんは少し困惑したような表情をした。

どこでも似たような反応をされるよな、突然ちゃ当然だろう。

 

「まあ、そういうことだ。魔法の適性と魔法書が欲しくてな」

 

「じゃあ書物の勇者様、水晶玉を覗いてみてくれるかしら」

 

俺は魔法屋の手元にある水晶玉を覗き込んだ。

さて、俺は何魔法の適性があるのかな?

 

「あら?これは…」

 

「どうしたんだ?」

 

「うーん、赤色が見えたり青色が見えたり、チラチラと色が変わるわねぇ、もしかすると全属性に適正があるのかもしれないわねぇ」

 

ふむ、やはりステータスといい魔法に特化した勇者という感じで召喚されたのか、けど尚文も似たような感じだよな?

まあ援護と回復なら魔法使いというより僧侶って感じだが。

 

「魔法書ならそこの本棚、初級は一番上の棚にあるわ」

 

「少し、取ってみてもいいか?」

 

「ええ、構わないわよ」

 

そう言われ魔法屋の指差した本棚から一冊本を取って開いてみる。

 

「……」

 

うん、わかってたけど全く読めない。とりあえずウェポンコピーができるか試してみよう。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

初級の魔法書 0/10 C

能力未開放……装備ボーナス スキル「ファスト・アップ」

熟練度 0

 

ーーーーーーーーー

 

 

なるほどな、ファスト・アップというのが何かわからんがファスト系統の能力が強化されるとかそういうところか?

 

「その本は回復と援護について書かれたものよ」

 

「そうなのか」

 

それなら予想は当たってるかな?とりあえずコピーはできたし次々コピーしていこう。

バレたら絶対に面倒なことになるからな、発言にも気をつけて絶対に変化させないようにしよう。

 

「中級や上級の魔法書はこの棚か?」

 

「ええ、上から初級、中級、上級の順番で置いてあるわ」

 

「とりあえず見せてくれ。クルト、ローゼ、俺は文字が読めないからどんな本なのか教えてくれると助かる」

 

「は、はい!」

 

「わかりました」

 

クルト達にそう言うと、俺は片っ端から本を取ってコピーを済ませる。

 

「こちらは、上級の攻撃系統の魔法書ですね」

 

「なるほど」

 

「それで、どれを買うつもりなのかしら?」

 

む、そうか。魔法書が欲しいと言って入ってきたのだし何も買わずに出るというのも気が引けるな。

とりあえず今後のことを考えると……

 

「最初に見た、この回復と援護の魔法書をくれ」

 

「はいはい」

 

尚文には魔法の玉は支給されない、そして回復と援護の適正のあることを考えるとこれが一番いいだろう。

 

「そんじゃ、次にーー」

 

次に行こうとした所でふと思った。

 

「そういやあっちの棚には何の本があるんだ?」

 

魔法書のあった棚とは別の棚を指差す。

 

「ああそっちは物語とか子供向けの絵本が置いているわ」

 

へー、一応本屋みたいな外観してるしな。

 

「少し見てもいいか?」

 

「ええ、どうぞ」

 

これらは武器じゃないけど(そもそも本も武器なのかは不明だが)コピーとかできるのか……できた。

 

 

ーーーーーーーーー

 

ウェポンコピーが発動しました。

 

四聖物語の条件が解放されました。

四聖勇者の伝説の条件が解放されました。

ゆうしゃのおはなしの条件が解放されました。

四人の英雄の条件が解放されました。

メルロマルクの歴史の条件が解放されました。

モンスターブックの条件が解放されました。

四聖武器書の条件が解放されました。

四聖英雄譚の条件が解放されました。

ワールドマップの条件が解放されました。

etc…

 

 

ーーーーーーーーー

 

四聖勇者に関する話が多いな、というかこれらを装備してどう戦えと。

とりあえず効果は……本のタイトル通りモンスターの種類、過去の勇者について、国の歴史がわかるなど特に戦闘に役立つ効果のあるものはなかった。

暇つぶしなどの娯楽にはなるだろうな。文字は読めないけど。

 

「さて、とりあえず次に行こうか。邪魔したな」

 

俺は立ち上がってクルト達に声をかけ、魔法屋を後にする。

 

「いつでも来てねぇ」

 

 

「装備もある程度整えたし、今日は狩りをしないと思ってたが少し行ってみようと思うがどうだ?」

 

「自分はいいと思います」

 

「そ、そうですねっ」

 

とりあえず、自分の実力を、ファスト系統は全部使えるみたいだし試してみたい。

そう思っていたらふと思い出した。

そういえば奴隷のことを忘れていた。明日には尚文が冤罪被さって、二週間は一人で戦うことになる。

 

俺が味方をするとコイツらもいなくなるし、狩りをするにしても勇者が近くにいると経験値が入らなくなる。

 

なら今のうちに奴隷商の所へ行ってラフタリアを取り寄せてもらおうか、今ならリファナだって生きているだろうし。

 

そうと決まればさっそく奴隷商のいるサーカステントを探そう。場所はどこだろう?裏路地にあったはずだから適当に探すか。

 

「と思ったが一つ寄らなきゃいけない場所があった」

 

「それはどこです?」

 

「この辺りで、魔物を斡旋してくれる店はないか?」

 

二人に尋ねると揃って首をかしげた。

 

「えっと、自分はわからないです……すみません」

 

「ご、ごめんなさいっ。私もわかりません」

 

裏の店みたいだし知らなくても仕方ないか。

原作でも行き方は裏路地を歩いたくらいしか載ってなかったしな。

 

あ、ウェポンコピーした時にワールドマップがあったな、それに載ってたりしないか?

試しに書物を地図に変え、メルロマルクの地図を見てみる。

 

「これか?」

 

文字は読めないが、メルロマルクと思しき地図を見るとある裏路地の真ん中にポツンと建物ようなものが載っていた。

場所はここからそんなに離れてないし、他に裏路地にそんなものは載ってないからここであっているだろう。

 

「この場所だと思う、とりあえず行ってみる」

 

「え、あのセツナ様……その本は……」

 

「さっき、買っていませんでしたよね?」

 

「ん?ああこれは勇者の武器の特性でウェポンコピーというやつだ。同じ系統の武器を手に取るだけでコピーできる。俺の場合は書物だから本や地図と言ったものなら何でもコピーして使える」

 

コイツらは駆け出しだし何より一般人が勇者の武器について知っているわけがないだろう。

俺がウェポンコピーについて説明すると二人は微妙な顔をした。

 

「それって……」

 

わかってる。俺もできるだけ意識しないようにしていた、いい人のところから盗むような真似をするのは流石に良心が痛む。

 

「気にするな、俺だって心苦しいんだ。とりあえず行くぞ」

 

そう言って二人を引き連れて奴隷商と思わしき場所へと向かった。


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