書物の勇者?何だそれ   作:名無しし

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だいぶ間が空いてしまった…


レベリング

 

「ここか……」

 

しばらく裏路地を歩くとサーカステントのような小屋を見つけた。

 

「あの、セツナ様……」

 

「ん?どうした」

 

「自分は、少し外にいてもよろしいでしょうか?」

 

「私も…できれば外で待って、いたいです」

 

ただならぬ雰囲気を感じたのか二人はテントを見るなり嫌な顔をして後ろに下がった。

 

まあ確かに怪しい雰囲気がするしな。

 

「わかった。じゃ、表の通りで待ち合わせよう」

 

そう言って俺は一人でサーカステントの中へと入った。

 

「これはこれは、新たなお客様ですかな?ハイ」

 

シルクハットに似た帽子、燕尾服を着た怪しい格好をした原作で読んだ通りの奴隷商がいた。

 

「えっと……」

 

そういえばワイルド尚文といい優しい尚文といい、ここでやりとりしてたが同じことをしたところで俺にもできるとは思えん、それにコミュ障だし。

 

「フィーロたん」

 

「ハイ?」

 

手をワキワキとさせてハアハアしながらそう言った。下手なこと言ってぼったくられたらたまったもんじゃない。

原作尚文みたいに駆け引きなんてできないし、それなら元康のように変な客と思わせて引かせた方がいいと判断した。

 

「おっと間違えましたぞ。奴隷を売って欲しいのですぞ」

 

なんとなく口調も真似てみる。案の定、奴隷商は引いている。

 

「は、はぁ。ではこちらです。ハイ」

 

 

 

 

「やーやー、待たせたな」

 

「いえ、大丈夫です」

 

なんとかラフタリアとリファナを取り寄せてもらう話にこぎつけた俺は裏路地から出てクルト達と合流する。

 

「セツナ様、それは……?」

 

ローゼが俺の手に持っている孵化器を指差す。

ついでにフィロリアルも買ったのだ。卵と孵化器で銀貨130枚もしたが後悔はない、立派な幼女になるんだぞ。

 

「魔物商からフィロリアルの卵と孵化器を買ったのですぞ」

 

「ですぞ?」

 

おっと、ついですぞ口調になってしまった。奴隷商とやり取りする時、演技が見破られないかドキドキした。

まあ向こうはあまり関わりたがらないような感じだったし、何も問題はないだろう。

 

「いや、なんでない。宿を取ってから狩りに向かおう」

 

思えば宿取らずにウロウロしてたからな。危うく今夜は野宿とかになるところだった。

 

 

 

狩りをして自分の実力を確かめようと思い、俺たちは適当に城門を抜け草原へと出た。

 

確か今の時間だとまだ尚文がバルーンとやらを殴り続ける作業をしているはずだ。

 

「あ、おーい。尚文ー」

 

そしたら尚文がバルーンを一心不乱に殴り続けている姿を見つけた。その後ろに第一王女もといヴィッチが心にもない応援をしている。

 

「あ、刹那」

 

「偶然だな」

 

左腕にオレンジバルーンを噛みついたまま、尚文は振り返って返事をした。

 

「大丈夫なのか?それ」

 

「うん全然痛くもないし、むしろ噛みつかれてても気がつかないくらいだよ」

 

「流石は盾の勇者ってところだな」

 

バルーンが尚文の腕を噛み切ろうとガジガジしているのに、全く気にも留めずそう言った。

あ、また別のバルーンが尚文の頭に噛み付いた。

 

「勇者様、頭にバルーンが……」

 

「ん?あ、本当だ」

 

ヴィッチに指摘され尚文が頭に噛み付いたバルーンに気がつく。

これが盾の勇者の防御力か、直で見ても信じられないくらいだな。

 

「そんじゃ、俺たちは森ん中入って狩りをしてくる」

 

「頑張ってね」

 

「ああ、お互いにな」

 

俺たちは尚文と別れて森の奥へと進んで行く。

 

「あの、セツナ様……」

 

「そ、そろそろいいんじゃないですか……?」

 

「そうだな、この辺までくれば聖武器の反発現象は起こらないだろう」

 

ある程度まで進むとクルト達が不安な声を出した。

 

「さて、魔物はどこかな?」

 

「き、来ましたっ!」

 

すると茂みの中から丸いウサギみたいな魔物が飛び出してきた。ウサピルだったかな?

血が出るからとラフタリアが拒否していた場面を思い出す。

 

「そんじゃ、試しに一発撃ってみますか」

 

ファスト系統が全部使えるなら、魔法玉や魔法書を読んでいなくても大丈夫なはずだ。

 

『力の根源たる我が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を燃やせ』

「ファスト・ファイア」

 

「ギィ!?」

 

ウサピルが一瞬にして炎に包まれ、黒焦げになった。

目の前にEXP3という数字が現れ経験値が入ったのを確認する。

 

「ふむ、この辺の魔物ならこの程度なのか。そんじゃ、次はお前らの実力を測らせてくれ」

 

「「は、はいっ」」

 

するとまた茂みから新たなウサピルが二匹も現れた。

 

「はぁぁああ!」

 

ズバァ!

クルトが片方に向けて剣を振り下ろし、ウサピルを一刀両断した。

 

「ファスト・アクアショット!」

 

ドドォ

ローゼが水の弾丸を打ち出しウサピルを貫く。

 

あ、同行者設定してなかったか。

二人が魔物を倒したのに俺にも経験値が入らなかったので気づいたが、どうせ明日にはコイツらは仲間じゃなくなるんだ。別にどうでもいいか。

 

「この調子なら、もう少し奥に行っても大丈夫だな」

 

「「えっ」」

 

外伝を読んで、一度やりたかったことがある。

 

「ファスト・ファイア!ファスト・アクアショット!ファスト・アイス!ファスト・ウインド!」

 

ハハハハ!弱い!弱すぎる!

つってもまだ森の入り口付近だし、弱いのは当然だ。

 

そのまま森の中を駆け抜けて夕方になるまでその作業を続けた。

 

「こんなもんかな」

 

日が暮れて来たので作業をやめ、ステータスを見るとレベルは10から18に上がっていた。

一日でこのペースは早いのだろうか?ま、とりあえず宿に戻るとするか。

 

振り返るとクルトとローゼが疲労困憊で倒れていた。

 

「うぅ」

 

「うーん」

 

「……なんか、すまん」

 

 

 

 

 


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