いくつもの生き方が
無限に広がる中で
僕が手にしたのは
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“ロストフリーダム”デミ・ウイング、直訳すれば自由を失った片翼、もしくは片翼となって自由を失った者……だろうか。
どちらだろうかは分からないが、その名前には何かしらの理由と由来があるのだろう。
昼休みが終わり、燈真と輝が教室に戻ったのは三限目の予鈴が鳴る頃だった。
急いで階段を下った為か前の席に座る輝は授業が始まってからも暫くの間、荒い息をしていた。
(多分運動音痴なんだろうな……)
眼前の小柄な肩に目をやり、燈真は思う。
階段を急いで下り、廊下を走るのは久々だったのだが、そんな燈真よりも輝の方が大分と遅かったのだ。
走るのが速ければ、大体のスポーツは出来る。
そして、逆もまた然り。
中学校の三年間、サッカー部に所属していた燈真は前者で、どんなスポーツでもある程度の活躍は出来た。
しかし、輝は恐らく後者だ。
小柄でメガネでキノコカット、気弱そうな容姿は自分と真逆か。
そんな輝が何故、自分に声を掛けてくれたのか疑問が浮かぶ。
転校生で物珍しかったからか、偶々席が後ろだったからか。
はたまた、単にとてもフレンドリーで心優しい少年だからか。
昼休みを一緒に過ごしただけでは分からないが、少なくとも悪い奴では無いだろう。
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三限四限と退屈な授業を落書きと居眠りで乗り越え、ホームルームを余所見で過ごす。
鐘が鳴り、終礼が終わると同時に瞬間的に広がったざわめきに紛れ、燈真はあくびを一つ。
白と青のツートンカラーのスポーツバッグに教科書とノート、革製のペンケースを放り込んだ。
丁度その時だった、前の席のキノコカットが此方を振り向いたのは。
「逆神君、良ければ一緒に帰らないかな……?」
またもや声を掛けて来たキノコカット……もとい、輝。
三限と四限の間の休み時間中はトイレに籠もっていた為に、話し掛けられる事は無かったものの、やはり、と言った所か。
その声は昼休みの時よりも大きく、明瞭に聞こえる。
どうするか、燈真は一瞬迷うが首を縦に振って頷いた。
「良いよ。
ただ俺は電車で帰るけど、七星君は?」
別段断る理由も無い、帰る方向が同じならば一緒に帰っても良いだろう。
「あ、そうか。
僕はと言うか大体の子が自転車や徒歩で来てるから、逆神君もてっきりそうかと……」
「……ごめん、まぁ校門までは一緒だしさ」
一連の受け答えの結果、輝は落胆した様子で肩を落とした。
そんな輝へ“行こう”と声を掛けつつ、燈真は席を立つ。
他のクラスメート達も此方が気になるのか、チラチラと名前を口にするものの、誰一人として話し掛けては来ない。
(転校して来て初日だし、別に無理して話とかしなくてもいいだろ)
一番後ろの席の為、出て行くのは必然的に教室の後ろ側の戸口となる。
聞こえてくる好奇の会話を適当に流し、燈真は教室を後にした。
廊下を抜け、階段を下る。
玄関口の下駄箱に辿り着くまでの間に
“あれ誰?”
“転校生らしいよ”
“えっ、ヤンキーやん。キノコ君カツアゲされてんの?”
そんな様々な声を聴くも、全てを無視して靴を履き替える。
後ろを着いて来ていた輝は意外にも他のクラスの同級生達に手を振ったりと律儀に挨拶をしていた。
「ちょっと待っててね、自転車取ってくる」
そう言い残し駐輪場へ走る輝の後ろ姿を見送り、燈真はポケットからスマホを取り出した。
ロック画面には二人の男女、ロックを解除せず画面だけを横にスライドさせて行く。
画面が切り替わる度に映るのは同じ人物。
遠くに聞こえる早蝉の声と、不意に聞こえた自転車のベルの音に、燈真は顔を上げた。
「お待たせ!」
まだ夕暮れの橙には遠い、6月の日差しを受けて輝く明るい茶髪、電動式の自転車を押す輝がそこに居た。
自転車の前籠には赤色のリュックサック、車体の色も同じだった。
返事代わりに軽く手を上げ、燈真は校門へと歩き出す。
距離としはそう長くもなく、特に会話する事もなく二人は校門をくぐって歩道へ出た。
「ねぇ、逆神君」
無言のまま歩を進める燈真に、おずおずと言った様子で輝が声を掛ける。
既に燈真は駅への道を辿っており、輝はどこまで着いて来るのか……しばらく方向は一緒なのかと考えていた所だった。
「……何?」
足を止める事無く、駅へと歩を進めながら燈真は答える。
「良ければ、今日このまま家に来ないかな?
GBDEX……デュアルウォリアー、一緒にやらない?」
隣を歩く輝は燈真より頭一つ、頭半分程背が低い。
フレームレスの眼鏡の奥、此方を見上げているであろう瞳に、燈真は迷った。
何故こうもまで付いて来るのか、理由は分かった。
簡単に言えば同じゲームをした事があり、言葉通り一緒にゲームをやりたかったのだろう。
昼休みに起こしてくれたのは親切心か、この出会いは運が良いのか悪いのか。
初対面ながら距離感と言うものを時たま飛び越えてくる輝に少しだけ、怖さを覚える。
「……良いよ、帰っても別にやる事ねーし。
ただ、先に言ってくれたら無駄に歩かなくて良かったのに。」
しかし、フレンドリーと言えばフレンドリーなのだ。
自身の返事通り帰った所でやる事はない、無為に過ごすだけだ。
無為に時間を潰すよりは有意義だろうか。
燈真の返事に輝は“やった!”と喜びの声を上げた。
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結局の所、輝の家は駅方面で向かう先は同じ方向だった。
踏切を渡り、駅前のちょっとした広場を抜ける。
繁華街から伸びるアーケードを進み、少し離れた住宅街の手前。
“ナナホシデンキ”と看板の上がる一軒家が輝の家であった。
「電気屋なんだ、個人経営?」
「うん、一応販売もするけど大手メーカーの工事を下請けするのが主な仕事かな」
店舗部分とは別にある玄関のドアを開く輝に燈真も続く。
階段を上がった先の引き戸に手を掛け、開いた先には10畳程の広い部屋が。
壁際にはベッドとポールハンガー。
使い込まれた学習机の隣にパソコンラックと、更にその隣に大画面テレビ。
「うわ、テレビでっか……」
子供部屋にしては広く、更にその広さな合わせたのであろうテレビの大きさに燈真は思わず驚きの声を上げた。
「店頭販売のモデル品、型落ちしたから貰ったんだよ」
座布団に座る様に促しながら輝は答える。
途中で寄ったコンビニで買った菓子や飲み物をちゃぶ台に置き、テレビとソレに繋がるゲームを起動。
“プラモデルの写真を画像データとして取り込み、各種ステータスを入力。
カテゴライズされた武装から当てはまる物を選択し、設定。
君の手で創り出された機体を動かすのは君自身、エクシードアビリティで勝利を掴め!!
デュアルウォリアーver1.02絶賛稼動中!!”
数秒の間を置き、流れ出すナレーションとBGM。
聞き覚えの有るような、無いような音と画面に意識を向け、燈真は問うた。
「ゲーム機、最新の機種じゃん。
コレも型落ち……な訳無いか」
「最新とは言わないよ、去年のモデルだしね。
逆神君、GBDEXのアプリを開いてスマホをケーブルでゲーム機に繋いで貰えるかな?」
燈真の問いに答えながら輝はコントローラーを操作し、彼に促されるまま燈真はゲーム機から伸びるケーブルにスマホを繋ぐ。
「パスワードを打ってログインしても良いんだけど、アプリ起動したままゲーム機に繋ぐと自動でログイン出来るんだ。
あ、ログイン出来たから抜いてもらって大丈夫」
ログインの完了を知らせるアナウンスと共に、画面に映る“ロストフリーダム”デミ・ウィング
スマホを置き、燈真は手渡されたコントローラーを握る。
「こんな画面だったっけ、派手になってる」
久々に見る画面、所謂マイホーム、マイページ画面に呟きを漏らした。
「前作のAB、アッセンブルバトラーに
比べたらユーザーインターフェース……UIも大分変わってるからね」
兄が作り、兄に言われるがままに触っていたゲームとその機体。
燈真は適当にカーソルを動かし、ボタンを押した。
「デミ・ウィング……ウイングガンダム炎をベースにしてるみたいだけど、って逆神君!?
今押したのオンラインバトルモードだよ!?」
ボタンを押し、ロード画面に切り替わる様を見て輝が声を上げる。
「あ、ごめん。
ついついボタン押してしまった」
マッチング待機中から対戦相手が決まったとの電子音、自分と対戦相手の情報が画面に表示された。
「あちゃあ……カジュアルフリーマッチだから戦績はつかないけれど、相手の人はAランクだね……
逆神君は……Fランク?名前もtest2になってるんだけど……大丈夫?」
輝の声が疑問を孕んだモノに変わり、それと同時に対戦が始まる。
「あー……多分大丈夫、動かし方何となく憶えてるし」
多分大丈夫だろう。
久々に触るゲームだが、何故かやれそうな気はするのだ。
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市街地に銃声が響く。
止むこと事を知らないそれは、轟音となって街中を揺らしていた。
音の先にはベースカラーのメタルブラックに赤と金色が映える片翼の機体。
片翼と言えど、二対四枚の翼で構成される大翼である。
LFDW、デミ・ウィングと呼ばれる機体は弾丸の雨に身を晒していた。
着弾と共に減るアーマーポイント、所謂APが緩やかに減っていく。
(いくか、全然痛くないし)
紅瞳に光を宿し、デミ・ウィングは敵機を見据える。
視線の先、サブマシンガンの引き金を絞り続けるのは濃緑色の機影。
此方と違って棒立ちではなく、銃撃しながらも常に移動している。
建物の影から影へ、遮蔽物に身を隠しながらの銃撃。
敵機の頭部、ピンク色のバイザーが日に反射し、光が瞬いた。
その瞬間、デミ・ウィングは大きく跳んだ。
助走も無しのただの跳躍だが、垂直に上昇したその高度はかなりのモノ。
眼下に広がる市街地を一瞥し、デミ・ウィングがメインウェポンを構える。
エネルギーチューブにより機体と直結されている大型の銃器。
銃器と言うよりは巨砲に近いその名は、ハウリングブラストと言った。
砲身を包むのは龍の顎を模した外装であり、カラーリングは機体と同じ。
僅かに開いた顎、牙の隙間から光が漏れ出す。
右手で取っ手を、左手で砲身を抱え、デミ・ウィングは狙いを定めた。
その間も敵機は銃撃を続けており、サブマシンガンから吐き出される弾丸が黒金の装甲を削っていく。
しかし、デミ・ウィングが怯む事はなかった。
ブースター類を一切吹かしていない為に秒刻みで落下していくも、着地までの滞空時間は長い。
動力炉から莫大なエネルギーが、エメラルドグリーンのチューブを通り巨砲へと充填される。
「いくぞ」
コントローラーを握る燈真は、小さく呟きながらボタンを押した。
瞬間、龍の顎から破壊の吐息が吐き出された。
砲口から放たれるのは、最大出力を示す極太の極光。
赤と金に彩られた漆黒の光条は大気を切り裂き、敵機である濃緑色の機体、ジムスナイパーのカスタム機へと吸い込まれる様に伸びていくも……機影を貫く事は叶わず、地表へ、市街地のアスファルトへと着弾。
衝撃と轟音が周囲を揺らし、一拍の間を置いた後、着弾点を中心に大爆発が起きた。
爆発に継ぐ爆発、火球が臨界点を超えて黒炎を撒き散らす。
黒炎はアスファルトを融解させ、雑居ビルを、マンションを、スーパーマーケットを次々と飲み込んで行った。
僅か数秒、されど数秒。
たったの数秒で市街地を文字通り火の海に変えたデミ・ウィングが、溶け出したアスファルトの沼……燃え盛るクレーターの中心に降り立った。
火炎と熔岩と化したアスファルトに触れ、継続的にダメージが入っていくも気にする素振りは見せない。
炎に照らされ、更なる紅に輝く双眸が見つめるのは、装甲の殆どが焼け、溶けたジムスナイパー。
直撃を避けたとは言え、規格外の威力を持った砲撃は余波だけで敵機をほぼ戦闘不能な状態へと追い込んでいた。
『EX-Dアビリティ、スタンバイ』
不意に鳴り響く電子音声。
聞き慣れないソレはエクシードアビリティの発動を知らせる物で、“GO”と言う合図と共に濃緑の狙撃手がその姿を紅輝に染める。
そして、紅に染まった機影が次々と増殖……質量を持った分身と化し、その全てがビームスナイパーライフルを構え、引き金に指を掛けた。
しかし、それよりも速く。
デミ・ウィングが片翼を羽ばたかせ、突進。
先程の跳躍とは違い、全身の推進機器から緑炎を噴き出しての超高速移動は初速から既に最高速度を出している。
僅かな残像とスリップストームを引き連れ、相対距離を一瞬にして零へ。
デミ・ウィングは右手に握る巨砲で打突を繰り出した。
龍顎が敵影の胸部を砕き、咆哮と言う名の砲撃を放つ。
超至近距離、所謂零距離射撃による一撃は、奥の手であり必殺技であるEX-Dを発動させた機体をも貫き通す。
砕け、舞い散る破片が両機を叩く。
そして、数刻の間を置いて敵機……紅に輝いていた筈の、狙撃手が爆散した。
pixiv掲載時には固まったいなかった設定を元に改稿しています、時系列も練り直さないと……