GBDEX-DW   作:顔剥ぎの屠竜刀

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第七話/stereoman

I'm all alone thinking of the yesterday's blues

I don't like to do

But I ain't got nothing else to do

I've got a friend

He's here now

He lives in my head

When I'm all alone I talk to my stereoman

I just can't let go

It makes me sick

 

 

対訳

 

 

一人っきりで昨日の嫌なことを思い出してる

こんな風にしたいわけじゃないよ

だけど他にすることがないんだ

 

僕には友達がいる

今ここにいるよ

頭の中にね

僕は一人っきりの時はステレオマンと話をする

 

やり過ごせないんだよね

うんざりしちゃうよ

 

 

ーーーーー

 

 

閃光と衝撃に続くダメージアラート。

視認するよりも、レーダーに反応するよりも速く放たれたのは闇夜を切り裂く一筋の光だった。

 

(この距離で!?)

 

自機の被弾を告げる電子音に輝は驚きの表情を浮かべる。

直撃では無いものの被弾したと言う事実と、それを成したのが此方の索敵範囲外からの攻撃である事に驚きを隠せない。

 

湖畔に聳え立つ古城と湖上に煌めく雷光と紅炎を遠目に見れば、それは美しい光景だが、実際は激闘の印し。

見とれていた自分が間抜けだった。

 

自戒と後悔が胸を押すも、打ち拉がれる暇は無い。

輝は機体を左右に振りながら走らせ、敵機を索敵する。

 

レーダーや視界にも映らない程の遠距離から放たれる砲撃は、初撃以降の動きを見せない様子からして連射は出来ないのだろう。

両足端々のホイールが唸りを上げ、黒犬が煉瓦で舗装された通りを走破する。

 

たどり着いた先は、湖畔にその姿を映す古城の敷地内。

城門を飛び越え、着地と同時に再度の光条が闇を切り裂いた。

 

しかし、光は夜の闇を貫くが黒犬の真横を抜けていき、城門を貫いて宵闇に消えていく。

 

(発射間隔はおよそ5秒……次が来る前に、いや、多分向こうから来る!)

 

城門から立ち上る白煙をスリップストームに巻き込み、黒犬が疾走。

古城の中庭に躍り出ると同時に反転し、視線を上へ向ける。

 

ゲーム画面右上、レーダーに映る敵機との距離は急速に縮まっていき……

 

「来た!」

 

敵影が視界に映ると同時に、黒犬が右手に持つミサイルランチャーの引き金を絞った。

コンマ程のタイムラグの後に放たれる四つの弾頭は、吸い込まれる様に敵影へと向かい、着弾と同時に爆発。

 

闇夜を爆炎が照らし、爆風が周囲に吹き荒れるもレーダーの反応は消えず。

爆煙を突き破り姿を現したのは、月灯りに照らされ漆黒に輝く、大翼を広げる一頭の翼竜だった。

 

(ワイ、バーン!!)

 

HGサイズの範疇には収まっているがその巨躯は黒犬よりも大きく、鎧に包まれている為にベース機体が見えない。

ベース機が判別出来ないと言う事は、機体由来となるベースのEXアビリティが予想出来ないのだ。

 

また、二度あった遠距離攻撃の方法も分からない状態だ。

黒鎧を纏う翼竜の、おそらく口に当たる部分が明滅。

 

一拍の間を置いて、竜の口元から光弾が横殴りの雨となって黒犬へと放たれた。

 

「収束と拡散、2パターンあるよ」

 

優斗の声を耳に、輝は唇を噛んだ。

本当に自分の間抜けさや迂闊さが恨めしい。

 

ゲームと言えども、戦績は付かないローカルマッチと言えども……こうも負けへ負けへと進む様な、自らのミスに腹が立つ。

しかし、裏をかく事やフェイントと言った勝敗に関わる要因を読み、自ら使う事が出来るからこそのSランクプレイヤーなのだろう。

 

(だけど……負けない!!)

 

横殴りの雨が黒犬を叩く。

ナノラミネート装甲と言えど、光の散弾をノーダメージで受けきる事は出来ない。

 

だがしかし、一撃で戦闘不能になる事もなかった。

ミサイルランチャーを投げ捨てた黒犬が取り出したのは、主武装である大型ショットガン。

 

その射角は広く、狙い定める事なく発砲すると同時に再度の閃光。

実弾と光弾が互いを喰らい合う様にぶつかり、対消滅を起こす。

 

その後の停滞は一瞬、弾かれたかの様に両機共が推進機器を吹かして動き出した。

翼竜は続いて撃ち込まれる散弾をものともせずに突進し、予想以上の初速に避けきれないと踏んだ黒犬が右腕を掲げる。

 

衝撃と共に激突音。

あまりの威力に掲げた盾ごと黒犬の身体が吹き飛ぶが、輝は冷静に機体を操作する。

 

空中で姿勢を整え、黒犬が足元から着地したのは城の壁面。 

着地の衝撃で壁が砕けるが構わない。

 

急速回転するホイールで壁面の破片を弾き飛ばし、黒犬が壁面を疾走。

此方の銃撃は通らないのは予想通り、狙うはステータス差を無視して固定値を与えられるオブジェクトダメージだが……疾走する黒犬に、翼竜が急速接近。

 

瞬間、黒犬はホイールにフルブレーキを、急制動を掛けた。

音を立てて砕ける壁面、踏ん張る右足を軸にしその身体が地面とは直角に水平回転。

 

投げ捨てた銃器の代わりに握るのは、柄の長いブレードアックス。 

疾走のからのフルブレーキによる“タメ”と回転と遠心力を乗せた刃斧の一撃が眼前まで迫っていた翼竜の頭部に突き刺さる。

 

幾度目かの破砕音、頭上からの一撃をまともに喰らった翼竜は中庭へと叩き付けられ、地面を大きく抉ってその動きを停める。

 

舞い上がる土煙。

僅かに遅れて着地した黒犬はすかさず銃器を回収し、ノーロックでの牽制射撃。

発砲音に重なり響くは跳弾音、散弾を受けた翼竜がその翼を大きく広げた。

 

そして、咆哮の如く轟くブースターの起動音が続く。

全身の推進機器から炎を吐き出し、翼竜が再び羽ばたく。

 

月光を背に、飛ぶ姿は異形の竜から変化していく。

左右の肩口からマントの様に伸びる翼膜には二種三刃、左右の手には両刃の剣。

 

翼竜の顔は背部に回り、強靭な尻尾と変わる。

白をベースカラーとしつつも重厚感のある漆黒の鎧を身に纏い、浮かび上がるは戦神(いくさがみ)。

 

DXをベースに改造されたその機体は、名を戦神と言った。

蓮にはネーミングセンスを突っ込まれたが、優斗からすれば朱凰と名付けた向こうも向こうだ。

 

「追い掛けっこは面白くないだろ?」

 

言葉は後方へ置き去りに、戦神が剣を構えて黒犬へ強襲。 

夜気を斬り、繰り出されるのは勢いの乗った刺突。

 

剣先が大気を貫き、黒犬の掲げる盾を打ち据える。

そして更に一歩踏み込み、刺突により弾かれた盾へと袈裟懸けの斬撃を叩き込んだ。

 

装甲値と攻撃力に振られたステータス、機体重量も乗った連撃を受け、黒犬の盾が音を立てて砕け散る。

そして更に、砕け散る盾の向こうへと戦神は渾身の突きを繰り出すが……剣先が敵機を貫いた感触は無い。

 

破砕音に紛れて聞こえるのはEX-Dアビリティの発動音で、優斗は薄く笑った。

そうだ、そう来なくては。

 

AランクとSランク間にあるステータスの差、それを覆すにはEX-Dアビリティの発動は必要不可欠。

優斗の経験上、技量はその時の運と勢いで超える瞬間もある。

 

ローカルマッチ、遊びと言えども輝は本気だ。

 

(昔からそうだった。

拘りが強くて、それに関しての集中力は凄かったし……何より負けず嫌い)

 

ベース機体固有のEXアビリティ、アラヤシキシステムに掛け合わされるのは同じくアラヤシキ。

同アビリティセットによるボーナスが発生し、効果値は通常のEX-Dアビリティより20%上昇する。

 

残光が、疾る。

赤く輝く双眸が幾何学的な軌道を、蒼銀の閃きが円弧を描いて戦神へと襲い掛かった。

 

基礎ステータスの上昇、レイジ系と呼ばれるタイプのアビリティは単純に強く、使い易い。

銀弧の一撃を、左右の刃を重ねて受ける戦神を更なる衝撃が襲う。

 

ダメージアラートに次ぐオブジェクトダメージ。

黒犬の一撃はあまりに重く、受けきった筈の戦神の身体を吹き飛ばして壁面へ叩き付けたのだった。

 

戦神の羽ばたきと同時に、中庭の一角が崩壊。

瓦礫を撒き散らし、噴煙を剣の一薙ぎで吹き飛ばして戦神が飛翔。

 

追従しつつ散弾を撃ち込んでくる黒犬への刺突は牽制の意味を成さず、闇夜に躍り出る黒影が剣閃と共に戦神の鎧に傷を刻み込んでいく。

 

戦場はいつしか中庭から城内へ。

黒犬の猛攻を受け、流し、捌き、そして防ぎ切れずに戦神の装甲が、APが削られていくが未だ致命傷は受けていない。

 

「輝、中々やるじゃん!!」

 

渡り廊下を踏み破り、跳躍からの急降下。

黒犬が放つ勢いの乗った刃斧叩き付けを、重ねた翼で防御し、翼で切り払うかの様に戦神が羽撃く。

 

 

粉塵を吹き飛ばす烈風、開けた視界に黒犬の姿は無いが、赤い残光が行く先を示していた。

向かって左、柄による打突を半身になって避けた先。

続く回転斬りが吸い込まれる様に戦神の胸元へと向かっていき……

 

クリティカルヒット、APが大きく減るのを視界に収めながら優斗は、戦神は渾身の一撃を繰り出した。

 

(機動力は向こうが上、わざと“空けた”胸元は“餌”なんだよ……

肉を切らせて、骨を立つ!!)

 

右手に握る刃、プロミネンスブレイドが黒犬の胸元に突き刺さり、鍔元の宝玉が炎を灯した。

宝玉から燃え上がる炎は刀身を伝い、黒犬へと燃え移り断続的なエフェクトダメージとなってその身を灼き焦がす。

 

そして更に、衝撃に揺れる黒犬へと左の刃を振りかざし、一閃。

ブレードアックスを握る右腕を肘から切り落とし、戦神がフルブースト。

 

剣を突き刺したままの突進で黒犬を壁面へ叩き付け、そのまま前進、上昇。

炎と共に壁面が砕け、二機が姿を現したのは古城の頂点近く、尖塔へ続く廊下の外だった。

 

「やるからには全力だ、容赦無くやらせてもらう」

 

二つの機影わ包む一瞬の浮遊感。

それを振り切るのは大翼の羽ばたきだ。

 

全身の推進機器から炎を吹き出し、尖塔へと飛翔。

闇夜に躍り出る戦神は勢いそのままに黒犬の身体を塔の頂上へと叩き付けて、反転。

プロミネンスブレイドが鍔元まで突き刺さり、串刺しとなった敵機へと更に、左のブレイクニルブレイドを投擲。

 

刀槍の如く飛来するそれを黒犬が避ける事は叶わず、剣は右の大腿部を貫通

した。

 

串刺しとなった敵影を見据える戦神の、肩口から伸びる翼膜……三枚羽の外側にマウントされていた左右合わせて四本の刀と更に、尻尾となった竜顎の牙にあたる部分の刀が月光に煌めく。

 

見えざる手によって抜き放たれた刀を操るのは、月輪を背負って飛ぶ戦神。

AランクとSランクの差は単にステータスだけではない。

 

ソレはSクラス到達により解禁される、自作モーションパターンを使った所謂“必殺技”の有無だ。

掲げられた右腕が振り下ろされると同時に、六つの刃が解放される。

 

夜気を裂き、疾る刀が張り付けとなった黒犬へと殺到。

その身体を捧げられた贄と見なす様に、六刃が容赦無く切り刻んでいく。

 

「必殺……六道断罪」

 

そして。

鳥葬された死体のように見るも無惨な姿となった機体が、一拍の間を置いて爆散した。

 

ーーーーー

 

「必殺、技……」

 

両の掌に収まる画面の中、爆炎の後ろから浮かび上がる“YouLose”の文字に、輝は見開いていた目をゆっくりと閉じた。

EX-Dアビリティを発動したのにも関わらず、最後の一撃以外はまともに“通らなかった”

 

寧ろ最後の一撃すら“わざと”打たせたのであろう。

ステータスだけではなく、技量の差、そして必殺技……

 

「EX-Dアビリティ打った後の動きは良かった、輝は近接戦闘の方が得意かもね。

近接武器増やすと良いよ、流石に斧一本じゃ弱い

 

機体も俺みたいに近接戦寄りにすればもっと強気に攻めれるんじゃない?」

 

スマホを操作しながら、優斗が声を掛ける。

その声に頷き、輝は俯いていた顔を上げた。

 

悔しいが負けは負けだ。

昨日までCランクだった自分がSランクの相手と戦うには色々と足りないモノが多すぎる。

 

Aランクになったとは言え、燈真とデミ・ウィングの力ありきなのだ。

そう考えればより一層、悔しさが加速し、腹腔に重たいモノが沈む。

 

“ありがとう、楽しかった”

 

無意識的に紡がれたその言葉は、優斗へ届く前に……雷鳴に掻き消された。

 

 

 




少し間が開いたけれど七話目。
輝の挙動に関して追記や修正、後戦神の武装数と位置。
スマホアプリでガンダムブレイカーが配信されたけど、設定がこの小説と被りましたねぇ……ガンブレのプレイ画面を想像してもらえれば小説の方もイメージし易いかと。

良ければpixivの方も閲覧お願いします、ネタバレにもなりますがリメイクverとの差違も探して見て下さい。
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