黒猫の魔法使いと個性社会   作:オタクさん

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黒猫の魔法使いがヒロアカ世界にやってくる前の話です。

この話を先に読むと、誰が暗躍していたのかとある程度ネタバレとなりますが、本編が始まる前の話なので一番前に載させたいと思います。この話を掘り下げた話を書く際には、他の話を進めながら書いていきたいと思います。


0話 止めたい、止められなかった現実

これは黒猫の魔法使いがこの世界に来る前のお話。

 

 

 

体から光を発し、火を吹き、周囲を凍らせ、物を浮かせたり、人の身では有り得ない程の怪力やスピードを持たせたりなどと力の種類は数多にも及び、人々に超人的な力を得ることが出来た"個性"。"個性"は恩恵を与えていたのと同時に、悪い面もあった。

強大な力を手に入れた者の中には欲望のままに動き、そのせいで社会に大きな混乱を招いた。一時期は街中で戦争が起きたのかと思われる程街は荒れていた時期があり、後に"超常黎明期"と呼ばれ語り継がれることになった。

 

様々人達の頑張りにより、"超常黎明期"は次第に収束し、時間をかけてゆっくりと平穏な日々を取り戻していった。だがしかし、それは───

 

 

束の間の平和にしかすぎなかった。

 

 

平穏な日々を取り戻せても、"個性"による犯罪は後を絶たなかった。そこで"個性"による犯罪を取り締まる為にヒーローが誕生した。

ヒーローは"個性"が発生する前から人気ある架空の存在で、特にアメリカではヒーローものが盛んであり、日本でも顔がパンのヒーローには誰もが通る道と言われる程小さい子供中心に大人気だった。

 

架空の人気ある存在が現実に、現実でも困っている人達を助ける故に、あっという間に架空の存在の時の人気を越えて神格化される。

神格化されるだけならまだましだった。危険を顧みずに人を助ける者は職業として行う者であってもちやほやされたり、良い待遇を受けても当然だ。それだけ大事で大変な仕事をしているのだから。一部の職業ヒーロー達、助けられる民衆達も次第に調子に乗っていく。

 

人気になった職業ヒーロー達の数は多くなり、"個性"による犯罪に対応がしやすくなってきた頃、"個性"の有利不利による対応の差が激しくなってしまった。

ヒーローの数が多いから誰かがやってくれるだろうと甘い考えから、現場にいたヒーローにとって不利な"個性"の敵(ヴィラン)が暴れていても対応しなくなる問題が発生してしまう。この問題にヒーロー達はあまり動きはなかった。名誉狙いのヒーロー達にとっては不利な状態で挑んで危険な目に遭いたくない上、取り零した敵(ヴィラン)を他のヒーローが倒すことによって、そのヒーローが名誉や人気を手に入れることが出来る。ある意味互いに利益がある為に対応する気がなかった。

 

どのような"個性"ならヒーローに成りやすいのか、逆に敵(ヴィラン)に陥りやすい"個性"は何なのか。目に見えるようになった結果、ヒーローに成りやすい"個性"持ちは持て囃されるようになり、敵(ヴィラン)と呼ばれる人達と同じ"個性"を持つと犯罪をしていないのにも関わらず敵(ヴィラン)扱いをされるようになってしまい、"個性"による差別が加速する切っ掛けとなった。

 

ヒーローがみんな守ってくれる安心感からか、いつの間にかヒーローと敵(ヴィラン)との戦いは作り物の娯楽のような扱いとなり、泣いている被害者が居ようが関係なく面白可笑しく見物しようと人が集まるようになる。

好きなヒーローの戦いを間近にみたい民衆だけではなく、自分の活躍を見せて人気を得たいヒーロー、人気ヒーローの活躍した姿をカメラに収めたいマスコミなどと現場で見たい人が多く、正論を言って止めようとした者を逆に迷惑な人扱いをして聞く耳を持たなかった。

 

人気職となったヒーローの中で、一番人気なヒーローは誰なのか?と、誰が最初に気になったのは今となっては不明だが、どのヒーローはどのくらい人気なのか?と調べ始め、ランキング形式で格付けされるようになっていった。

自分が成れなかったヒーローに、自分よりも人気になれるように、親が叶えることが出来なかった夢を子供に押し付ける為、ヒーローに成る為にも必要な"個性"を強くさせることが出来る"個性"婚が流行るようになってしまう。承認欲求の成れの果て、相手のことを考えないで己の都合をぶつける人達が増えていった。

 

色々と問題はまだまだあるが、"個性"の有利不利で逃げるヒーロー、"個性"の有無などによる差別、目の前で起きている事件を軽んじての見学、自分の利益の為に行う"個性"婚。この四つの問題が特に大きかった。

その問題に気が付いた人達が立ち上がったが──結果は言わなくても惨敗だった。

 

結果は惨敗だったといえども、彼らが問題に気が付いた理由を、問題に立ち向かった方法を、語り継いでまた同じような問題が起きた時に対処出来るように知らないといけない大事なことである。

 

先ず、気が付いた理由について。

気が付いた理由は何となく違和感を感じた者、被害に遭ってから気が付いた者、気が付いた人達の話を素直に聞けて異常に感じた者。この三パターンの人達が異常になってしまったヒーロー社会に異を唱えた人達だ。

 

話を聞いてくれた人達が味方になったことから、話を広めれれば今の世の中は異常だと気が付いて、味方になってくれる人が増えるかもしれないと問題を広めることから始めた。

問題を知って貰う為の方法として家族や友人に話すのは勿論のこと、見ず知らずの人に伝える為にネットに書き込んだり、分かりやすくヒーロー社会の問題点を語った動画を出したり、ネットを利用しない人向けにチラシを作ってポスティングしたり、印象が悪くなるとしてもデモに参加して公共の場で今のヒーロー社会は問題だらけだと訴えた。

 

味方は少しずつ増えた。だけど、良い結果はそれだけだった。

家族や友人に言えば考えすぎだと言われ、中には離婚など縁を切られる。ネットや動画では陰謀論者、頭可笑しい人、反ヒーロー、低学歴、ありもしない危険性に脅える人、危険思想の持ち主、知的障害者だと罵られ、一生懸命に作ったチラシは誰にも受け取ってもらえず、デモに参加すれば通行人に嗤われ、無断で撮影されて晒し者にされたり、酷い時には勇気を出して参加してくれた人に危害を加えた者がいた。

 

彼らがどれだけ動いても現実は変わらず、彼らに返ってきたのは冷たい言葉と態度。

それでも、世の中を良くしようと、彼は動き続けた。ストレスのあまりに夜眠れなくなろうが、縁を切られて孤独への道を進んだとしても、諦めずに今の世の中は問題だらけだ!と訴え続けた。諦めない彼らの姿勢に、とある人物─AFOが厄介だと感じ始めて動き出す。厄介だと感じた理由については彼の目的にある。

 

AFOの目的は悪の魔王となり、この世の中を支掌握すること。

世の中を掌握するのには民衆は仲悪くならなければならない。民衆同士で勝手に喧嘩をしていれば、その間に見向きもされていないAFOが侵略しやすいからだ。しかしながら、彼らは、ヒーロー社会の問題を通じて世の中を良くしようと手を組んで動き出す。

AFOからすれば民衆は蟻のように雑魚ではあるが、邪魔をされては鬱陶しいし、過去の出来事からも、手を取り合った民衆が王族などの上の存在を倒すこともある。それ故に対策するのも必要なことだった。また──

 

 

AFOにとって、いがみ合う民衆を見ることは愉しいものであるから、純粋に自分の娯楽の為にずっと愚かに喧嘩をしていて欲しかった。

 

 

最初は悪の魔王らしく、気に食わない異を唱えていた人達を見せしめとして殺そうとも思った。だけれど、もし彼らの中で結婚をして子供を産んで、その子供が優秀な"個性"を持っていたら?そうなったら勿体無いし、一々格下相手に手を出すのは彼のプライドの高さから殺すのは止めた。その代わり、自分の手駒である"弱き者"達を動かした。

 

ヒーロー社会の問題点を語った動画やコメントは直ぐに消し、乗っ取ったテレビ局でヒーローを批判する者は愚かな者だと印象を付けた。それだけでは飽き足らず、距離や用事などの問題で現実では会いにくい彼らはネットの掲示板とかでよく交流をするのだが、その掲示板にまで入り込んで罵倒をして傷付けたり、味方の振りをして嘘を吹き込んだり、別の場所で彼らの振りをして変なコメントを書いたりと徹底的に印象を悪くした。ネットでも酷いが、特に被害を受けたのはデモの時だ。

日本のデモは海外のデモとは違い許可制だ。許可を下りなくしてデモを出来なくしたり、許可をしてもデモ参加者の中に紛れ込んでわざと大暴れをしたり、ゴミを撒き散らしたり、救急車の邪魔をしたりとデモに参加する人は頭を可笑しい人、ヤバい人、敵(ヴィラン)扱いされたりとデモの時でも印象を悪くさせた。デモは許可制だが、使用する場所の許可が必要なだけであって、気軽に参加できるように、人が参加する際には身分証書とかは要らない。だから紛れ込みやすかった。

また、紛れ込むだけではなく、差別反対と訴えておきながら、自分の考えしか認めませんという変な団体や、差別問題でお金を稼ごうとする団体が現れてきてしまった。これにより、真面目に世の中を良くしようとする為にデモを行っていた人達にも更に悪い印象が付きやすくなっていった。

 

"弱き者"達が紛れ込みやすいのであれば、デモを行う際には身分証証明書を必要にして厳重にし、一度問題を起こした人は入れないようにするなど、対策をすれば良いかと思うかもしれないが出来なかった。

何の準備もなく気楽に参加出来るようにして人手を増やしたいのもそうだが、彼らはある勘違いをしていて自分達の身分がバレるようなやり方を嫌がった。彼らが勘違いをしてしまうのも仕方がない部分があった。

あまりにも民衆が話を聞かないものだから、国に官邸メールや署名などで今のヒーロー社会を改善して貰おうと訴えた。だけど、国も動かなかった。とはいえ、"個性"婚や"個性"の有無などによる差別はどうにしかしたいとは思ってはいたが、自分達が苦労しなくないから放置をしていた。面倒だから敵(ヴィラン)が増える元凶を断とうともせずに、ヒーローが倒して終わりにする、今のヒーロー社会を望んでいた。公平に、正しく、放送をしないといけないテレビ局が問題を指摘する人達をやけに印象を悪くしていたところから、AFOを知らない彼らには国が犯人だと思われていた。テレビ局を動かそうとするのには権力やお金が必要になるからであり、第二次世界大戦の時には新聞などのメディアを使って、国民を戦争に乗り気にさせていた過去の事件から国を疑っていた。

 

彼らが相手が国だと勘違いをしている間に、AFOが予測もしていなかった援軍が舞い込む。

ヒーローに救われた人、ヒーローのことが大好きな人、ヒーローを神格化している人達がヒーロー社会を改善したい彼らの邪魔をするようになってしまった。"個性"の有利不利で戦うヒーロー、ヒーローと敵(ヴィラン)が戦っている危ない場所での見物などの問題だけに抗議をしていたのにも関わらず、ヒーローを神格化している人達にとっては全て否定をする最低な言葉として聞き取られてしまっていた。彼らだって真面目に働くヒーローは嫌いではなかった。寧ろ好きだった。問題を起こすヒーローなら辞めて欲しいが、全てのヒーローに消えろ!と願っている訳ではなかった。そのことをどれだけ言葉で説明をしても全く聞いては貰えず、とんちんかんな方向で話が変わっていたり、お前らは敵(ヴィラン)だからヒーローを否定しているんだな!と決め付けの罵倒が返ってくるだけだった。

この喧嘩のせいで、ヒーロー社会を改善したい人達は更に世間と仲違いするようになり、大きな亀裂が入る。

 

社会を良くしようと動く者達の言葉、ヒーローを信じている人達の言葉、どちらも同じ国の言語を使っている筈なのに言葉が通じないで言い争う。AFOからすれば物凄く愉快な出来事であり、このまま一生続けて貰う為にも裏工作に力を入れ続けていた。

AFO、"弱き者"、ヒーローを神格化している者達が彼らを追い詰める。直接言葉で馬鹿にしない人達も態度で彼らを悪人扱いをしていた。

 

周囲の人達には理解して貰えない悩みを共有をし、興味があるだけで危ない人扱いされる話題で議論が出来る。居心地だけが良かった彼らの居場所は"弱き者"達によって荒らされて失くなってしまう。

主な交流場所である掲示板が消されたり、用事などで会う時間が無くなって、次第にヒーロー社会を良くしようとしていた人達が集まらなくなっていた。

 

表立って行動しなくなる彼らに、娯楽の一つを失ってしまったAFOは内心残念がっていたが、邪魔をする者がいなくなって清々していた。だがしかし───

 

 

それから暫くして、黒猫の魔法使いがこの世界に現れ、この世界は間違っている!と思い切り噛み付く。

久し振りにこの世界に文句を言うだけではなく、真っ正直から堂々と民衆に噛み付く存在が現れたことに驚愕をしたAFO。どれ程妨害をしても、自分の野望を邪魔する存在が現れるものだと実感をしながら、彼女の心をへし折る方法を考えるのであった。

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