黒猫の魔法使いと個性社会   作:オタクさん

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11話 平穏な一時 その2

子供達と共に飾りを付け、屋台で出す料理の下準備をする。途中、同じ看板が何故か二、三個あったり、つまみ食いが大量発生するが、無事に準備を終える。

 

 

「「「あけまして!おめでとう!!」」」

 

パッカーン!

 

子供達と職員達が歓喜を帯びた声で新年を祝う。

声を上げるのと同時にクラッカーを全員で鳴らす。一月一日、年の初めの日、去年は色々とあったが、無事に年を迎えることが出来たお祝いを兼ねて、お祭りを開催する。

 

 

祭りの用の音楽が施設中を控えめに流れ、飾られた電球がカラフルに照らす。

屋台は全て食べ物屋で、わたあめ、りんご飴、チョコバナナ、クレープ、お汁粉、たこ焼き、焼きそば、カレーライスだ。

 

冬だからか浴衣ではなく、普通の私服にマフラーや毛糸の帽子を着けている。一部の子供達は首に何か書いてある紙をぶら下げていた。

 

「わーい!おまつりだー!」

 

「さっそく、あっちに行こうよ!」

 

「わたあめ食べる!」

 

「りんごあめもいいよねぇ!」

 

「クレープつくるー!」

 

「カレーもいいぞう!」

 

「じゃあ!きょうそうだあ!!」

 

「こら!危ないから、走ってはいけません!人が多いから、ぶつかるよ」

 

「「「「はーーーい!!」」」」

 

子供達は高ぶる感情のままに走り出し、大人達に注意をされる。微笑ましい光景が目に入る。

どの子達も笑顔で祭りに参加しており、まるでアヤツグ達がいた世界で、開いてしまった盆げーとうぇいを問題を解決する為に行われた時の祭りと同じくらい賑わっていた。

 

キキは今は普通のお客として祭りに参加していたが、他の職員は子供と一緒に回ったり、屋台で料理を出していた。キキも後に交代する。

 

キキはわたあめ屋の列に並ぶ。

わたあめ屋では、大人と子供がそれぞれ別れて作っていたが...

 

「う~~ん...うまくできない...」

 

「ほら、がっかりしないで。初めての体験だから、仕方ないのよ。また列に並んで練習しましょ。...ねっ?」

 

「うん....わかった」

 

子供が上手く作れなくてぐすっていた。

しかし、このわたあめを作るのは大人でも難しく、本来大きく膨らむ筈が小さく萎んでしまっていた。

 

そんな少女や大人達の見ても、他の子供達は自分達なら、もっと上手く出来ると思っているらしく、我先にやりたいとせがむ。

自信ありげな子供達を見てキキは、楽しそうと思うのと同時に、綺麗に作り上げるのにはプロがやらないと無理なのでは?と感じていた。

 

他の人の番が来て、上手く出来なかった少女は泣いてしまっていた。キキは泣いている少女を慰める為屈んで話し掛ける。

 

「どうしたの?」

 

キキに話し掛けられた少女は泣くのを止めて、泣きじゃくりながら話し始める。

 

「...ヒック。..だって、ヒック..。上手くできなかっただもん」

 

「誰だって、はじめは上手くできないものだよ」

 

「...でも、ふわふわのを作りたい....」

 

キキが慰めても少女は泣き止まない。

 

「......そうやっていつまでも泣いていると、練習をする時間も、楽しむ時間も、なくなってしまうよ。それに..みんなを見てごらん」

 

少女はキキの意見に従ってわたあめ屋の方を見る。

上手く出来なくても、笑いながら、楽しそうに作っていた。失敗をして歪んだ形になっても、そのことを友達と笑い合って会話のネタにする。そんな子供達の姿を見て少女は...

 

「......うん...わかった...。なかないでれつにならんで作ってくる...」

 

涙を拭いて列にもう一度並ぶ。

キキはその姿を見届けてから、次の屋台に移動をするのであった。

 

 

少女のように真剣に作る子の中には、上手く出来なくて泣き出してしまう子がいる。だけども、それとは逆に面白がってふざけて作る子もいる。

どれだけわたあめを大きく作れるのか、生クリームなどの具を全てのせようとしたクレープ。

 

これだけではなく、まだ他にも...

 

「このクレープ、いっぱい作りすぎたから、あげるね」

 

中には食べたいのではなく、作りたいだけの子供達もたくさんいた。

もう食べられないと言われれば、職員や世話焼きであるお兄さんお姉さんが、代わりに食べるのであった。

 

わたあめ以外にも...

 

「チョコバナナ食べたいから、このりんごあめ食べて」

 

色んな物が食べたいけど食べれない少食の子は、友達と交換しあったり、職員の人に残りを食べてもらうのであった。

キキも失敗した、要らなくなった物を何度も食べて、お腹いっぱいになってくる。

 

一人でいても、誰かと回っていても、子供達の相手を次から次にしなければならなかったので忙しいものだった。

 

 

自由時間が終わり、他の職員と交代したキキはカレーライスをよそる。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとう」

 

少年はお礼を言って走り去って一人減ったが、列はまだまだ続いている。

寸胴鍋の中のカレーがすくなっていき、キキが心許なくなってきた頃、丁度良いタインミグで刃が寸胴鍋いっぱいに入ったカレールーを運んでくる。

お代わりとして刃が持ってきてくれたのだ。

 

「ありがとう」

 

キキはお礼を言う。

だけども刃は、忙しさから何も言わずに次の場所に向かう。

 

忙しく休む暇もないキキは、猫の手も借りたいと思った瞬間、ウィズのことが頭の中をよぎる。後で何か渡しに行こうと決める。

キキが考え込んでいる間にも、カレーの減りは早く、特に育ち盛りの少年が、あっという間に何周もしてしまう程勢いよく食べる。

 

「このカレーライス多めに入れて下さい」

 

「はい、どうぞ」

 

キキは少年のリクエスト通りに多めによそる。

 

「ありがとう」

 

笑顔で受け取り、その食べっぷりは誰が見ても見ていて気持ち良く、清々しかった。

 

 

 

落ち着いた頃合いを見計らって、ウィズに食べ物を渡しに行くキキ。

施設の裏手で誰もいないこの場所は、遠くから祭り囃子が聞こえるだけで、余計に寂しく感じさせるものだ。

 

「やっと食べられるにゃ!」

 

匂いに釣られて笑顔で奥から出てきたウィズ。

目を輝かせ尻尾を左右に大きく揺らす。

 

「はい、どうぞ」

 

持ってきた皿の中には、クレープの皮やたこ焼きのたこなどの祭で使われた食材が入っており、その皿をウィズの近くに置く。

 

「いただきますにゃ!」

 

がっつくウィズに苦笑いをするキキ。

 

「誰も取らないから大丈夫だよ」

 

「そうは言っても、お腹空いたにゃ」

 

ウィズは注意されてもがっつくのを止めなかった。

キキが食べているウィズを観察していると、刃が施設の裏手にやってくる。

 

「....ここに居たのか...まあ、いいや。レイラドルさん、これから片付けがあるのだけど...それを終えたら...ウィズさんを連れて医務室まで来てほしい」

 

片付けの手伝いはともかく、大事は話があることにキキは自然と気を引き締める。先程まで幸せそうな顔をしていたウィズでさえも真剣な表情になる。

 

「...どういうことにゃ?」

 

刃は少し目を閉じてから言い始める。

 

「...これからのことだ」

 

「これからのこと...ヒーロー活動のことですか?」

 

何となく分かったキキは刃に確認をする。

刃はゆっくりと頷いた。

 

「そうだ。...これ以上は誰かに気付かれるとまずい。だから、続きは医務室で話そう」

 

 

 

片付けをある程度終えたキキは、急いでウィズを連れて医務室に向かう。

息を乱しながらも部屋に辿り着き扉を乱暴に開ける。

 

バッン!!

 

静かな部屋に雷が落ちたかのように鳴り響く。

夜遅く皆に迷惑を掛けてしまう時間帯なのだか、誰もそれを咎める者はいなかった。部屋には刃、真太、響明、そして施設長である六十代後半の男性の竜田 創平【たつた そうへい】が神妙な顔付きでキキを待っていた。

 

キキとウィズが部屋に入ると創平は早速話を始める。

 

「...お待ちしておりました。では、お話を始めましょうか」

 

「...ヒーロー活動のせいで何か支障があったのですか?!」

 

キキは直ぐ様叫んで訊ねる。

キキがここまで急いで走ってきたのも、乱暴に扉を開けたのも、またこの施設に被害が出たと思ったからだ。

キキの発言、行動、考え方が何もかも気に食わなくて、施設にも被害が出てしまっていたのだが、更に酷くなってしまったのだ、とそう思ったキキはいても立ってもいられなくなったのだ。

 

キキが息を整えていると、創平が白いスマホを指で操作し始める。

三分もしないうちに操作を終えて、見せつけるようにキキの顔にスマホを近づける。

 

そこには─

 

 

『黒猫の魔法使いって誰から力を借りているんだ?』

 

ただの疑問を訊ねる文だが、キキは心臓をぎゅっと見えない手によって、締め付けられたような痛みを感じる。

 

キキは冷や汗をかき、ウィズも息を呑んでいる。

他人の力を借りる個性と表向きに言っていることであり、魔法を使えば精霊の姿が浮かび上がり、力を借りていることが誰にでも容易に分かってしまうのは当然だった。だからと言って、あからさまに検索をされては気分が悪くなるのは言わずもがな。

 

とは言え、力を借りている先の精霊はこの世界にいない為、どんなに頑張って調べても情報は出てくることはない。だから、気にする必要もない。

 

それでも...

 

かつて共に戦い、苦楽の日々を過ごした大事な仲間達が、好き勝手に言われるかもしれない現実に怒り震える。

 

キキは知らずの内に怒りで拳を作り、ウィズは険しい表情になっていた。

そんなキキ達の気持ちを同情しながら創平は話を続ける。

 

「幸い、貴女方の御友人はいくら調べても、見付かることはありません。ですが...それも大変なのです」

 

「それは..どういうこと?」

 

疑問に思ったキキは取り敢えず質問をする。

 

「恐らく...どんな手を使っても、調べる人が出てくるのでしょう。とはいえ、異世界の人物ですから見付かることは絶対に有り得ません。...ですが...そのことが余計に...不信感を与えます」

 

「不信感を与える?」

 

「はい。...実は...この世界で人が産まれると役所などで生年月日、国籍、今の住んでいる場所などの個人の情報を登録しなければなりません。そして人が亡くなれば、同様にその人が亡くなったことを、役所などに伝えなければいけません。この世界では生きることも、亡くなったことも、報告をし、常に人の情報は管理されております。...情報は作ろうと思えばいくらでも作れますが...情報を管理している施設が、もし敵(ヴィラン)にでも襲われたりして奪われてしまったら...」

 

「簡単にバレてしまうのにゃ」

 

「はい。ウィズさんの言う通り、嘘の情報だとバレてしまいます」

 

創平は長く話をした為お茶を飲んで喉を潤す。

お茶を飲んで一息ついたが、まだ重い話は続いており、創平の口から溜め息がこぼれる。

 

「.........実は...今度から...エンデヴァーさんと共に戦うことが決まりました...」

 

「もう一緒に戦うことになったのにゃ!?こんな状況で?!無理にゃ!!下手したら、足の引っ張り合いで死んでしまうにゃ!そもそも!今の状態で共同したら、勝てるものも、勝てなくなってしまうにゃ!!意味ないにゃ!それだったら!独りで戦う方がましにゃ!!」

 

ウィズが猫の体ではあり得ない程の音量で部屋中を響かせる。キキも何も言ってはいないが、表情で全てを語っていた。

分かっていた結果でも、創平の精神を酷く苛ませる。創平は鉛の様に重たくなった口をゆっくりと開く。

 

「ま、まあ!エンデヴァーさんには!事情を説明してあるから!大丈夫でしょう!!...けど......エンデヴァーさんには相棒(サイドキック)が居るからなあ......」

 

段々嫌になってくる現状に、ウィズは長い溜め息を吐くことしか出来なかった。

 

相棒(サイドキック)とは?

相棒(サイドキック)もヒーローであるが、読んで字の如く、相棒のようにサポートをする者。ヒーローにとっては見習い時代の様なものである。

 

相棒(サイドキック)は、どこの事務所にも例がいなくいる。ただ、オールマイトだけはいない。それでも、かつては一名程いたらしい。

 

相棒(サイドキック)の数は事務所によって違う。

エンデヴァーのところは三十人近くはいる。

 

キキの事情を三十人にも説明は出来ない。

必ず納得するとは限らないうえ、闇雲に話せば、どこかで敵(ヴィラン)に聞かれる可能性も出てくる。もし聞かれたりしまったら、キキとウィズは普通に生活することさえも出来なくなってしまう。

 

「ところで、杞奥さん」

 

あることに気が付いた真太は響明に話し掛ける。

いきなり呼ばれた響明は少し驚く。

 

「はい、何でしょう?」

 

「君は...レイラドルさんが、事情を知らない相棒(サイドキック)と上手くやっていけると思う?」

 

その質問に皆は一斉に響明の方を見る。

響明の"記憶を共有する個性"がキキの性格を把握し、この世界の住民として考え方を理解しているからこそ、白羽の矢が立たれてしまった響明。みんなの視線に驚いて一瞬目を見開いてが、深呼吸をして話す準備を整える。

 

皆が固唾を飲んで見守る中響明は口を開く。

 

 

「レイラドルさんが事情を知らない相棒(サイドキック)と上手くやっていけることですか?そんなの無理でございます」

 

響明はばっさりと切り捨てる。

本当は聞かなくても答えは分かっていた。だが、あまりにも辛辣に言い放すものだから、みんなは唖然として何も言えなくなる。

 

「大体、自分と違うものを認められない、受け入れられない人が多い...そのような馬鹿な人が多い世の中で!レイラドルさんが上手くやっていける確率は不可能にも等しいです!!」

 

機械のように単調に話をする印象の強い響明が、暗い感情に身を任せて吐き捨てる。

あまりの変わりようにウィズが驚く。

 

「にゃにゃ!?一体どうしたのにゃ!?」

 

「...私の"個性"、"記憶を共有する個性"で他人の記憶が見えます。その"個性"の力により、今まで人の汚いところを見てきました。記憶を覗くだけでも、身の毛がよだつ程恐ろしいものなのです...。あのような汚い考え方を持つ生き物が、自分と違う考え方を受け入れるどころか...話を聞くことすら出来ないのでしょう」

 

「......」

 

響明は単調に話そうとしても所々闇を感じさせる。

そのことに気が付いてもみんなは、黙るという選択肢しかなかった。

 

「...ねえ、このままずっとオールマイトと共に戦うのは駄目なのかね?...私は、ヒーローとして活動をしたことは無いから詳しくは分からないけど、戦うのならばやはり、仲良く戦える人と戦う方が良いと思うんだ。それでも駄目なのか?」

 

話を変える為真太が創平に尋ねるが...

 

「駄目ですね。やはり戦場ではどうなるか分かりませんので、色々な人と手を組んで練習をした方が良いですね。予め対処出来るのなら、していきたいところです。それに...レイラドルさんの立ち位置って、結構特殊なんです。基本は後方で味方のサポートすることですが、前線で戦うことがあります。そうですよね?レイラドルさん」

 

「うん。変わるよ。どんな状況でも戦えるよう、心掛けているからね」

 

刃が真太を説得しながらキキに話を振るう。

返事を聞いてから刃は更に話を続ける。

 

「ですので、オールマイトと共に戦う確率は低いのでしょう。オールマイトは必ず前線で戦いますが、レイラドルさんに限っては状況次第です。それに、総力戦となれば、必ず怪我人は出ます。回復系の"個性"は少ないので後衛に回ることになるのでしょう。なので、オールマイトと共に戦える確率は低い。....レイラドルさん、君には悪いのだけど、私も国と同じ考えだ」

 

「えっ!?」

 

キキに同情的だったのに刃は、説明の途中でなんと考えを変えてしまう。

 

「どうしてにゃ?!」

 

刃のその行動は、キキとウィズにとっては裏切るような行為であった。

驚いている二人を見て刃は悲しそうに笑う。

 

「だって....君が助ける為に治癒魔法を掛けても、守ってくれる人がいなければ意味が無いからね....」

 

刃に続くように創平も国からの伝言を伝える。

 

「これはオールマイトさんの事情なんだけど、オールマイトさんは、レイラドルさんの件の対応で忙しくなっているらしい。それで、オールマイトさんが市民を抑えている間、レイラドルさんには他のヒーローと仲良くなってほしいこと」

 

「にゃにゃ!?こんな状況で上手くやれとにゃ!?しかもちょっかい出してくる相手なのににゃ!?」

 

「国としては、今まで色んな人とも仲良く出来たから、大丈夫だろうと...」

 

「確かに色々な人と仲良くなったけど。だからって、会った人全員と仲良くできたわけではないのだけど....」

 

「それでも充分に素晴らしいと思います。自分とは違う姿。自分とは違う思想。自分よりも強く未知なる力。普通の人だったら、話をすることすら出来ません」

 

響明が優しく微笑んでキキとウィズを誉める。

本来は誉められて嬉しくなる筈なのに、キキとウィズは嫌な現実に頭が痛くなってそれどころではなかった。

 

キキもウィズも、いつか他のヒーローと共に戦うと言われた時から、考えていたが全く答えは出ていなかった。

最早、いつもの異世界渡りのように、ぶっつけ本番で乗り切るしかなかった。

 

 

これからのことが不安で眠れなくなったキキは見回りをする。事情は全くもって違うが、どうやら子供達も同じようで眠れないようだ。興奮が冷めきらない子供達は、同室にいる子供と話していた。

注意しようと思ったキキだが、まだ冬休みの最中だし、明日きちんと起きれれば良いかと思いスルーする。それでも、煩い部屋には注意にしに入る。

 

「煩くしたら駄目だよ」

 

「はーい!でも眠れないもんだもん」

 

「そうか...。だったらお話でもしようか?」

 

眠れない子供に絵本などを読んで、寝かせると言う習慣を思い出したキキは話を聞くことを提案をする。

少し大きめの子供もいたけれど、意外にも賛成してくれていくつかの異世界の話をした。

 

 

奇想天外な世界観、予測不能な展開、個性的な仲間達。異世界の話は好評だった。

楽しんでくれたことに満足したキキは、出来るだけ早く寝てねと告げてから部屋を後にする。

 

部屋を出てから数歩歩くと、誰かを待ち構えるかのように天意が立っていた。

ただ単に立っているだけかと思いきや、真剣な表情をしているものだからキキも背筋を伸ばして訊ねる。

 

「どうかしたの?」

 

「......話聞かせてもらった」

 

「話って...子供達に聞かせた話のこと?」

 

「そうだ...」

 

異世界の話が何が悪いのだろうか?と、原因が思い付かないキキは首を傾げる。

キキがもう一度訊ねる前に、ぽつりぽつりと辛そうに本音がこぼれ落ちた。

 

「止めてくれ......。いくら作り話でも...敵(ヴィラン)が受け入れられる、夢のような話は止めてくれ...。そんなあり得ない話は子供に聞かせるようなものではない...」

 

今にも大泣きしそうな彼の顔がキキの脳裏に焼き付いた。

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