黒猫の魔法使いと個性社会   作:オタクさん

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15話 振り回され中

「君は誰だね?」

 

(もう...このやり取り...七回目だよ...)

 

老人とのやり取りで魔法使いは内心呆れ果てていた。

 

 

事の始まりは、魔法使いが一人でパトロールをしていた時だった。

背の低い男性のご老人が、「探したい人がおる、一緒に探してはくれんかね?」と訊ねてきたので、魔法使いは二つ返事でオッケーしたのだが、当の本人が探したいその人のことを覚えていなかった。それどころか、魔法使いのこともすぐ忘れてしまう。

 

魔法使いのことを忘れる度に、「君は誰だね?」と初めて会ったように訊ねる老人の姿は、探している人が本当にいるのか?と何度も魔法使いを疑わせる。それでも、相手が探すのを止めない限り探さなければならない。

 

あと魔法使いには、あまり人探しに付き合ってられない理由がある。それは敵(ヴィラン)の数が増えてきており、しかも自分狙いの場合が結構あり、老人が襲われる危険性があるからだ。

どうして、その様な現状になったのか警察に聞きに行ったりもしたが、理由は結局分からなかった。捕まった敵(ヴィラン)は大概、麻薬などの違法薬物をやっていたことにより薬による暴走と判断された。とはいえ、それ以外の状態の敵(ヴィラン)はいたので、調査は今も続いている。

 

理由はこれだけではない。

魔法使いが嫌われすぎて、一緒に歩いている老人も危害を加えられるかもしれないのだ。オアシスの子供達や職員達に被害が遭ってしまった様に。もうそういう姿を見たくない魔法使いの内心はヒヤヒヤしていた。今だって周りをキョロキョロして気が気でなかった。

 

老人はそんな魔法使いの気持ちを露知らず、好き勝手に前を歩き続ける。

 

「お前さんの仕事姿を見せてくれんかね?」

 

またこうやって、自由気ままに老人は振る舞うのであった。

 

 

「私達の仕事姿を見ていてもつまらないと思うにゃ。と言うか、人を探さなくても良いのにゃ?相手も待っていると思うのだけどにゃ」

 

魔法使いが歩きながらごみ拾いをしている最中、ウィズが老人の話し相手になっていた。

 

「相手...そんな人いたっけ?」

 

「もう...君は帰った方が良いにゃ...」

 

すっとぼける様に言う老人にウィズはげんなりする。

 

「テキパキと慣れているもんだな」

 

老人はウィズの話を気にせずに魔法使いに話を振る。魔法使いはそんな老人に呆れたが、取り敢えず質問にはちゃんと応える。

 

「まあ...仕事だからね」

 

「オ~イ、黒猫の魔法使い!こんなところでごみ拾いかぁ?ダッセエなぁ!」

 

「仕事クビになったよな?なったよな!」

 

「じゃあ!これも捨てておけ!」

 

カンッ

 

魔法使いの足元に缶が投げられた。

犯人はガラの悪い高校生だった。ガラの悪い高校生達は魔法使いに暴言を吐き、言うだけ言うと、ギャハハハと下品な声で笑いながら去っていった。

 

魔法使いは特に何も言わずにごみ拾いを続ける。けどその背中は悲しみに溢れていた。

 

「...そうじゃ。折角だから、そこの鯛焼き屋で奢ってやろう。あそこの鯛焼き屋は旨いぞ」

 

老人は店に指を指して言う。

老人は魔法使いのことを気にかけている様に微笑んでいた。

 

 

「ほれ、鯛焼き食って元気だせ」

 

「ありがとうございます」

 

「ありがとにゃ」

 

公園のベンチで鯛焼きを食べることになったのだが、何だか不思議な気分になる魔法使いとウィズ。

こうして気にかけてくれる人はあまりいないからだ。...あと、仕事中に座って食べることに、魔法使いはサボっている様に感じて少し罪悪感が芽生える。

 

「そんな堅苦しい顔はすんな。鯛焼き食って機嫌治せ。ほら、中が熱くて旨いぞう」

 

老人はそう言って美味しそうに頬張る。

魔法使いもそれを見習って一口噛りつく。

 

(本当だ。美味しい。冬で冷え込んだ体を温めてくれるし、優しい甘さが疲れを癒してくれる)

 

「で、お前さんは何でヒーローをやっているんだ?」

 

「ぐっ!?」

 

魔法使いが夢中で食べている時に、老人は躊躇なく質問をしてきた。そのせいで鯛焼きが喉に詰まりかける。そしてその質問はとても答えにくい質問であった。

だって、理由は無いからだ。国から頼まれてヒーロー活動を行っているのであって、自分からやりたいと立候補した訳ではない。自分がこの世界で生きる為に働いているだけである。

 

続けいている理由はあるのだが、その理由は、被害者を見世物にしたり、敵(ヴィラン)やそのご家族を必要以上に責めたり、"個性"の相性で逃げたりするなどの駄目なものを駄目だと言って止める為だ。

けど...この世界では、それが当たり前で、異議を唱える方がおかしい世界だ。この理由をそのまま言ってしまえば嫌われるだけだ。

 

魔法使いが黙っていると老人が先に話し出した。

 

「...もしかしてお前さんは、両親に言われてやっておるのか?」

 

老人の出した答えに魔法使いは急いで首を縦に振る。

両親ではなく国だが、ある程度あっているので同意する。老人はその様子に苦笑いだ。

 

「そうか...。それは大変じゃったな...。"個性"が強いとヒーローに強要されやすいもんな。...両親の意見に文句を言うことは出来んのかね?」

 

「出来ないですね」

 

「それはまた大変じゃな。...正直に言って、ヒーローを辞めたいと思ったことはあるか?」

 

「う~ん...それは...」

 

質問に答えられない魔法使い。

老人はその様子をじっと長く見詰めてから、口を開いた。

 

「じゃあ、何でお主は、そんなに敵(ヴィラン)を庇うのかのう?何でそんなに見られたくないのじゃ?見てもらわないと、お前さんの食いぶちが無くなるじゃろ」

 

老人の質問に魔法使いの息が止まる。

絶対に聞かれたくない内容で、説明出来ない内容であるからだ。気持ちに嘘はつきたくないし、間違っていることは間違っていると伝えたい。けど、今は、一般市民と仲良くしなければならない。もし本心を言えば、絶対にこの老人に嫌われるのであろう。国からの命令を守って嘘をつくのか、それとも自分が決めた決意のままに行動するのか、自分の決意と国からの命令。更に老人の優しさが加わって気持ちがさ迷う魔法使い。自分が噛った鯛焼きを見詰めることしか出来なかった。

 

 

「君!あの時の気持ちを思い出すにゃ!」

 

ずっと黙っていたウィズが叫ぶ。

その叫び声に魔法使いと老人は驚く。ウィズは二人の様子を気にせず、ただ魔法使いに向かって叫び続ける。

 

「私達が言わなければ誰が言うのにゃ!私達だけが、知っているのにゃ!!全員が全員、好きで悪の道に行った訳ではないことを!部外者な私達だからこそ、困っている人を見世物にする異常さを!...私達だけが知っているのに...それを言わないとはどういうことにゃ!...それに...」

 

 

「君が!!君自身で決めたことなのに!それを...簡単にやめるのは駄目にゃ!!確かにあの時は、屈指かけてしまったけど......だからって、屈しては駄目にゃ!...今の私達は一般市民と仲良くしなければいけないけど、それとこれは別にゃ!私達は何も悪いことはしていないにゃ!堂々とするにゃ!」

 

ウィズの意見はあまりよろしくなかった。

国からの命令を聞かなければいけない立場であるのにも関わらず、自分の意見を声高々と言えば嫌われることとなり、無視する結果になってしまう。それでも...

 

ウィズは嫌だったのだ。キキが意見を曲げることを。

キキと一緒に旅をしているからこそ、ウィズもキキと同じ意見だったのだ。いや、キキ以上に痛感していたのだ。ウィズの本来の姿は人間で、キキ以上に強い魔道士である。

だからこそ、ウィズは自分が戦えれば、キキだけが戦った以上により良い結果が生まれていたのでは?と悔やんでいた。見ていることしか出来なかったから、何も出来ない自分に心を痛めて歯痒かったのだ。

 

ウィズの魂の叫び声でもう一度決意を決める魔法使い。

魔法使いは胸の前で拳を作ると老人と向かい合う。

 

「お爺さん...。大体はウィズの言った通りです。ですが、ボクの口からもう一度言わせてください」

 

老人の顔はボケーとしていた。その顔は呆れているのか、怒っているのか、真意を読み取ることは出来なかった。

それでも魔法使いは話を続ける。

 

「ボクは...どうして...敵が生まれた理由を知っています。理由は一概とは言えないが、苦しみから逃げ出したいのか、想いを叶えたいのか、自分の欲望のままに生きていただけなのか。人によって理由はそれぞれです。敵(ヴィラン)は悪人だ。だけど、だからって、本当の悪人と追い込まれた人を一緒にしたくはないんだ!」

 

「やり方は悪い。そのせいで他の人が傷付いていることは確かだ。だから然るべき罰は受けるべきだ。......だけど...その想いまでは否定をしたくないんだ!」

 

「大切な誰かを守る為に殺そうとするのは悪なのか?想いを叶える為に最終手段を取ってしまうのは悪なのか?」

 

感情的に話し続ける魔法使い。

次第にエスカレートしてぶっ飛んだ内容を話してしまい、老人を脅かせるどころか、とても良い雰囲気を自ら壊してしまう。

 

「いや!人殺しは駄目じゃろ!」

 

「にゃにゃ!?あの時のことを思い出したのかにゃ!?確かに印象は強いけど、今は言っちゃいけないにゃ!!」

 

「そうだとしてもその気持ちは否定したくない!」

 

ウィズに止められても止まらない魔法使い。

もう自分でも止まれなくなってしまった様だ。ウィズは後悔し始める。

 

「お主はそのせいで殺されても、文句は言わんのか?!」

 

「殺されたくないから全力で抵抗はするけど、恨まないよ」

 

「じゃあ...もしも...お前さんの友達が、お前さんか他の人を選べって言われ、他の人が選ばれて、お前さんを殺そうとしてきたら、どうすんのじゃ?」

 

老人の問いに魔法使いは不謹慎だが少し笑ってしまう。前にも同じな状況があったからだ。

 

「気持ちは尊重するけど、殺されたくないので全力で戦うよ」

 

「...友達相手に殺す気で戦えるのか?」

 

「うん、戦える」

 

老人はその答えに信じられないと思い切り顔に出ていた。

普通ならもっと疑うが、魔法使いは速答したので信じるしかなかった。

 

「じゃ、じゃあ!なぜ見られるのは嫌なんだ?」

 

「見られるのが嫌と言うよりも、泣いている人がいるのに笑って見ているとか嫌だ」

 

「でも、ヒーローは戦っている姿を見てもらわんと。あと...被害者に対しては誰も笑っておらんぞ」

 

「けど、その場でヒーローの戦いを楽しんでいることは、被害者を笑っていることと同然だ。ヒーローは困っている人がいるから戦う。それを...お遊びで見ること自体許せない!泣いている人、困っている人を笑ってみるな!ヒーローも!それで稼ぐな!」

 

「お前さん...。ヒーローに...向いていないな...」

 

「困っている誰かで生活をするヒーローなら、そんなもんには成りたくない」

 

魔法使いは異世界を旅をしているから知ってる。他の世界でヒーローが職業になっていても、ヒーローvs敵(ヴィラン)の戦いによる見物で稼いでいないことを。魔法使いとウィズは常に思う、戦いを見物させて稼ぐ方法以外で稼げ。その他の方法で稼ぐ方法を考えろと。

呆然と呟く老人に魔法使いははっきりと答えた。

 

「じゃあ...何で、やっておるのじゃ...」

 

「それは...命令されたから。...でも続けたい理由はある」

 

「続けたい理由?それは...何じゃ?」

 

「駄目なことを駄目って止めるヒーロー」

 

「常識から外れてもか?お前さんの生き方だと、ヒーローは飢え死にしちまうぞ!」

 

「困っている誰かを笑い者にするなら、その方が何百倍もましだ!それが常識なら...そんな常識壊してみせる!」

 

「成る程...お主は...あれか、ステインみたいな考えの持ち主なのか....。全く!俊典の奴め!どうして、こんな奴を選びおって!」

 

「選んだ?何を?...俊典って確か...オール」

 

「わしは失礼する!」

 

老人は早口で言うだけ言ってこの場を離れた。

残された魔法使いは座っていたままだったが、ウィズが魔法使いの前に移動する。

 

「キキ」

 

「な、何?」

 

ウィズの声には怒りが含まれていた。魔法使いはウィズの怒りに戸惑った。

愛らしい猫の姿なのに、死神の様な恐ろしさを感じさせる。魔法使いの背中に冷や汗が流れた。

 

「えっと...何でしょう...?」

 

「正座」

 

「えっ?」

 

「正座」

 

「ここベンチだけど...」

 

「じゃあ、地面で正座にゃ。...何度も同じことを言わせないで欲しいにゃ!」

 

「は、はい!」

 

ウィズの言われるがままに正座をする魔法使い。

魔法使いが正座をすると、ウィズはお説教モードに入った。

 

「私は意見を貫けって言ったけど!あそこまで言うことないにゃ!大体、この世界は戦争をしていないのだから、殺しはご法度にゃ!...まあ、前に、ノクスとか、バビーナファミリーとかで、味方同士で戦うことがあったから想うことは色々あるとけど...時と場合を考えるのにゃ!キキが暴走した時、私...。乗り気にさせたことに、後悔したにゃ!...私だって...思うことはいっぱいあるにゃ...でも、何か伝えたいことがある時は、相手に伝わるように考えなければいけないにゃ。それが出来なければ、やる意味はないにゃ!」

 

「ごめんなさい....」

 

「もう...次からは気を付けるにゃ...。さて、これからのことを考えないといけないにゃ。あのお爺さんがもしかして、何かネットとかで何かしてくるかもしれないにゃ。それに、ステインという、とんでもない奴と同じ扱いをされてしまっているにゃ。もし...このことが他の誰かにバレてしまったら大変にゃ」

 

「ステイン?」

 

「キキ!説明されたのに覚えていないのかにゃ!?大事なことはちゃんと覚えるのにゃ!」

 

「ご、ごめんなさい」

 

ウィズの驚き様に魔法使いは圧倒される。

色々なことが有りすぎて、魔法使いはすっかり忘れてしまっていたのだ。ウィズはそんな魔法使いに呆れたが、説明はちゃんとするのだった。

 

「ステインはヒーロー殺しのことにゃ」

 

「ヒーロー殺し?ヒーローだけを殺す敵(ヴィラン)のこと?」

 

「そうにゃ。ステインには信条があるのだけど、それを満たしていないヒーローを殺すから、ヒーロー殺しにゃ」

 

「信条って?」

 

「ヒーローは無償で働けって感じにゃ。詳しくは...覚えていないけどにゃ」

 

「無償かあ...。それは流石に無理だね...。話は変わるけど、何でみんな、見物で稼ぐ方法を否定すると、稼ぐことを全否定されたと思うのだろうか?他の方法なら特に気にしないのに」

 

「それは...私にも分からないにゃ。...考えても分からないことは後回しにゃ。今はステインのことに集中するのにゃ!何でかよく分からないけど私達もステインの対象になっているにゃ。それと...彼と因縁が出来てしまったみたいだにゃ」

 

「何で!?」

 

魔法使いはかなり驚いた。

だってステインとは、一度も会ったことがないからだ。それなのに因縁があるとか、言い掛かりをずっとつけられているもんであった。ウィズも魔法使いと同じく納得していなかった。

 

「ステインは...オールマイトの信者らしく...私達の肩を持ったことで、何かしらの行動を取ると予想されているにゃ」

 

「そんなのあり?」

 

「そんなこと私にも分からないにゃ。だから気を付けないといけないのにゃ。...さあ、仕事に戻るのにゃ!長居しているとサボったと思われるにゃ。どんな些細なことでも、騒ぎを作りたがる人がいるからその前に仕事を再開するにゃ!」

 

「そうだねウィズ。早く仕事に....」

 

 

ドッカーーン!!

 

魔法使いが言い終わる前に爆発音が鳴り響く。

魔法使いとウィズが急いで振り返ると、ビルから煙が立ち上っていた。少し離れた場所にある他のビルにも煙が立ち上ぼっていたり、炎に包まれたビルがちらほらとあった。

 

更に空には黒い巨体が空を飛んでいた。遠くからでも分かる程異常な存在が堂々と我が物顔で空を飛ぶ。

頭は歪に歪み、筋骨隆々の巨大な体。体と同じ色の蝙蝠の様な大きな翼が生えていた。

 

奇声を上げながら、騒ぎの中心である街へと降りて行く。

十秒も経たないうちに、何かを壊す破壊音が流れ耳にこびりつく。

 

「早く助けに行くにゃ!」

 

魔法使いは返事を走り出す。

 

 

魔法使い達が目指す街は謎の人物によって、地獄絵図へと成り果ててしまっていた。




早く原作キャラと仲良くなるよう、頑張りたいです...。本当に価値観が違う者同士を納得させるのは難しい。

あと....。自分の文章力に自信がないので、もう一度書きますが、別に主人公は人殺しを推奨していないです。ただ守りたい人の為に戦うのなら、その気持ちを否定したくないだけです。人殺し自体には怒ります。何て言うか、とある戦争系のMAD動画で、戦争を否定しても、戦死者を否定するなというコメントが、主人公に合うと思って書いてみました。
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